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第43話
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「心と体が一致しないことはどんな人でも起きる事だし、それを知るだけでいいんだ。無理して笑顔を作ろうとしたり、一致しないとこに思い詰めすぎないで。自然に笑えるようになるからね。じゃ。また来週~。」
そう言って帰って行った渡辺先生。
気にするなは難しい。
「俺…ずっとあの顔で紫苑さんと話していたのかなぁ。いつからだったんだろう。」
鏡の前で顔を揉みながらそう口に出してみた。
笑えない。
いろんな意味で笑えない。
紫苑さんも徹さんも、聖君も夏井先生も宮さんも篠宮さんも、みんな思っていたけど言わないでいてくれたんだろうな。
俺、もしかして伝わってなかったんじゃないか。本当に嬉しかったことも楽しかったことも何も伝わってなくて、紫苑さんたちは義務感でここに俺をいさせてくれてるんじゃないのか?
帰ってきた紫苑さんと夕食を一緒に食べる。
ちなみに、箸も使えるようになった。
食後お茶を飲みながら紫苑さんと話す時間。
「あの、紫苑さん。」
「何があった?」
「俺、俺いつも死んだ顔してて、笑ってないんですけど…本当に本当にここでの生活は楽しいし、いろんな嬉しいことがあって最近は体調もすごく良くてあの…。」
「ゆっくりでいい。」
「それで、もし…もし紫苑さんがもう義務感で俺をここにいさせてくれるなら俺、家に帰ります。」
「渡辺に何言われた。」
「先生は何も言ってません。」
「帰りたいのか?」
帰りたくない。ここにいたい。
「俺は…。」
「お前に初めてあった時、その目の輝きのなさに驚いた。一般人がする目じゃなかったからな。…食事会で会うたびに心が苦しかった。嬉しいって言っても美味しいって言っても動かない表情。」
「おれ…本当に!」
「あぁ。わかっていた。心から嬉しがっているのも楽しんでいるのも。だから、俺がその目に輝きを取り戻させて俺に笑ってほしいからお前をここに連れてきたんだ。」
「…。」
「俺は、人より少し愛が重い。それが好きなやつで番にしたいやつなら尚更な。」
「紫苑さん…?」
「杏。俺はお前が手に入ったら束縛するだろう。GPSは持たせるし、どこに行こうとも俺に言わせるし着いていく。お前が自由にいられるのは俺の側だけで他人の隣じゃない。どうだ?怖いか?嫌だろ?」
狂おしいほどの愛ってどんなのだろう。
俺が今までずっと欲しかったものはそれで満足できるのだろうか。
「足りなかったら…どうしますか?」
「ふっ。足りないなら増やすだけだ。なんだ?怖くないのか?」
「俺は…怖くないです。帰りたくないし、紫苑さんと居たいです。」
「義務感で他人を住ませるような性格じゃない。俺は俺の好きなやつと大切なやつしかここに入れない。分かるか?杏。義務感じゃないんだ。」
ハグしながら耳元でそう言う紫苑さん。
あぁ、この人は本気でそう思ってるんだって不思議と思えた。
義務感じゃない。この人はあの家の人たちと違って俺を大切にしてくれるんだ。
いつか、俺も紫苑さんのことを好きになれるのかな?
そう言って帰って行った渡辺先生。
気にするなは難しい。
「俺…ずっとあの顔で紫苑さんと話していたのかなぁ。いつからだったんだろう。」
鏡の前で顔を揉みながらそう口に出してみた。
笑えない。
いろんな意味で笑えない。
紫苑さんも徹さんも、聖君も夏井先生も宮さんも篠宮さんも、みんな思っていたけど言わないでいてくれたんだろうな。
俺、もしかして伝わってなかったんじゃないか。本当に嬉しかったことも楽しかったことも何も伝わってなくて、紫苑さんたちは義務感でここに俺をいさせてくれてるんじゃないのか?
帰ってきた紫苑さんと夕食を一緒に食べる。
ちなみに、箸も使えるようになった。
食後お茶を飲みながら紫苑さんと話す時間。
「あの、紫苑さん。」
「何があった?」
「俺、俺いつも死んだ顔してて、笑ってないんですけど…本当に本当にここでの生活は楽しいし、いろんな嬉しいことがあって最近は体調もすごく良くてあの…。」
「ゆっくりでいい。」
「それで、もし…もし紫苑さんがもう義務感で俺をここにいさせてくれるなら俺、家に帰ります。」
「渡辺に何言われた。」
「先生は何も言ってません。」
「帰りたいのか?」
帰りたくない。ここにいたい。
「俺は…。」
「お前に初めてあった時、その目の輝きのなさに驚いた。一般人がする目じゃなかったからな。…食事会で会うたびに心が苦しかった。嬉しいって言っても美味しいって言っても動かない表情。」
「おれ…本当に!」
「あぁ。わかっていた。心から嬉しがっているのも楽しんでいるのも。だから、俺がその目に輝きを取り戻させて俺に笑ってほしいからお前をここに連れてきたんだ。」
「…。」
「俺は、人より少し愛が重い。それが好きなやつで番にしたいやつなら尚更な。」
「紫苑さん…?」
「杏。俺はお前が手に入ったら束縛するだろう。GPSは持たせるし、どこに行こうとも俺に言わせるし着いていく。お前が自由にいられるのは俺の側だけで他人の隣じゃない。どうだ?怖いか?嫌だろ?」
狂おしいほどの愛ってどんなのだろう。
俺が今までずっと欲しかったものはそれで満足できるのだろうか。
「足りなかったら…どうしますか?」
「ふっ。足りないなら増やすだけだ。なんだ?怖くないのか?」
「俺は…怖くないです。帰りたくないし、紫苑さんと居たいです。」
「義務感で他人を住ませるような性格じゃない。俺は俺の好きなやつと大切なやつしかここに入れない。分かるか?杏。義務感じゃないんだ。」
ハグしながら耳元でそう言う紫苑さん。
あぁ、この人は本気でそう思ってるんだって不思議と思えた。
義務感じゃない。この人はあの家の人たちと違って俺を大切にしてくれるんだ。
いつか、俺も紫苑さんのことを好きになれるのかな?
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(『ride』は2021年3月28日に追加します)
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