【本編完結】白紙の未来

Popo

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第38話

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「へぇ。若に運命のねぇ…。」

鼻で笑いながら楽しんでる男。
一見好青年に見えるこいつは全く持って好青年なんかじゃない。むしろキズに塩を笑顔で刷り込んでくるタイプの男だ。

二条組のお抱え医者渡辺貴弘わたなべたかひろ。医師免許を持ち個人営業の病院もあるお抱えなのだ。

「で、どうすればいい。」

「んーα欠乏症ねぇ。若はどこまでこの病気について知ってるの?」

「番を解消されたΩがかかるってことしかしらねぇ。」

「番を解消されたΩが100%かかる病気。致死率も高いのに治療法もない。発病に至るプロセスすら解明されていない。恐ろしい病気だよ。」

「治らないなら、助からないということか?」

「五年生存率が50%それも全員自殺という形で亡くなる。でも、過去に助かった人というか治った人はいる。」

「なんだと。」

「新しく番を契約した人。番の契約ってさ、うなじや喉元を噛むだけなのにΩの身体に影響を与えるよね。それってフェロモンが関係しているらしいんだけど番を新しく契約するには前の番より何倍も相性がいい必要があるんだ。それこそ運命の番ってやつみたいにね。」

「…じゃあ、俺が杏の番になれば助かるかもしれないんだな?」

「絶対とは言い切れないし、何より杏君の心の問題だってある。徹から話は聞いたけど発情期にあんなに取り乱したり発語できなくなるほど幼児退行したりするのは普通じゃない。α欠乏症で発情期に変化があったとしてもね。」

「何から始めればいいんだ。」

「フェロモンがかげなくなっていても体はαのフェロモンを求めていることには変わらないから日頃から紫苑のフェロモンがついた毛布とか服とかそーゆーのを杏君のそばに置いておくこと。それから、精神科系のお薬も出したいから俺が杏君の往診をする。こう見えてもその免許持ってるし。最後に、発情期中の杏君に絶対に手を出したりそれっぽい雰囲気とかに持ち込まないこと。甘やかしてくれるお兄さんのスタンスでいないと体が拒否して進行が進むこともありうるからね。」


「わかった。往診の件はあとで徹に伝えておく。助かった。」

「え…紫苑ってお礼言えるんだ。」

「殺すぞ。」

「あーこわいこわい。まじもんが言うと怖いなぁ。……本当に助かるかどうかはわからないんだ。いくら勉強しても助けられないかもしれない。」

「そうなってもお前を責めることはない。それに、俺はあいつを番にするし、あいつは俺を求める。」

「そうなるといいね。」

おちゃらけているようで真面目だからこそお抱えにもなる医者なんだよなと貴弘を見直した。

大学時代のあいつほど下半身が緩いやつはいなかったからな。


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