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第30話
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紫苑さんとの生活を始めて早三週間。生活は初めてのことだらけだった。
初めてのベッドから初めての朝ご飯。
土日にお買い物に出たり…。
最近のハマりは料理。
「今日もありがとうございました。また明日もよろしくお願いします。」
「はい、姐さんお気をつけて。」
「篠宮さんこそ気をつけて下さい。」
車から降りてビルに入る。
いつも通りの手順で紫苑さんの部屋に行き、着替えたら部屋を出る。
向かう先は10階。
食に興味がないというか、食パン以外思いつかない俺は、「今日何食べたい」に答えられないことが多かった。
答えられないことが悲しいっていうことを紫苑さんに話したら料理してくれてる人のところで一緒にすれば分かるようになると料理の人たちに話を通してくれた。
調理実習を小学校以降一回も出席したことがなかった俺は包丁の握り方すら怪しい。
「こんにちは。」
「杏さん、おかえりなさいっす。」
「ただいまです。今日は何を作るんですか?
」
「今日は和風ハンバーグです。」
「宮さん。」
料理係のリーダーの宮さん。
宮さんって呼ばれてるから宮さんって呼んでくれだそうで、宮さんって俺も呼んでる。
吊り目でツンツンした黒い髪の毛を調理服の帽子に隠し、職人さんっていう言葉が合いそうなお兄さん。なんでも紫苑さんの三つ上で紫苑さんと仲がいいんだとか。
箸の練習も最近ちゃんと初めて少しずつだけど掴めるようになった。
「…和風ハンバーグってどんなやつなんですか?」
「和風ハンバーグはハンバーグの上にケチャップからつくるソースではなくきのこや出汁を使ったソースをかけます。」
「そこが和風なんですね。」
「今日も手伝っていただけますか?」
「はい!」
「じゃあ、龍と一緒にタネを作ってきて下さい!」
「わかりました。」
龍さんはさっき入ってきた時に挨拶をしてくれたお兄さん。元気で明るくて気さくだ。
「龍さん、俺もタネ?を作りにきました。」
「おっ!じゃあ、こねこねするっす!」
ボウルに入ったお肉を手でこねるらしい。
それなら俺でもできそう。
少しずつできることを増やしてくれるこの時間が俺は好きでみんなの分のご飯ができた時はすごい達成感があるし、宮さんと一緒に上に行って紫苑さんの帰りを勉強しながら待つのも苦じゃない。
紫苑さんは意外と帰ってくるのが遅い日が多くて大学生ってこんなに大変なんだ!ってびっくりしている。
世の中の大学生はすごいっていう話をしたら普段笑わない宮さんが笑って、「それは若だけですよ」って言ってた。
このビルの人はみんな紫苑さんのことを「若」ってよぶ。それについて紫苑さんから話されたのは次の週末だった。
初めてのベッドから初めての朝ご飯。
土日にお買い物に出たり…。
最近のハマりは料理。
「今日もありがとうございました。また明日もよろしくお願いします。」
「はい、姐さんお気をつけて。」
「篠宮さんこそ気をつけて下さい。」
車から降りてビルに入る。
いつも通りの手順で紫苑さんの部屋に行き、着替えたら部屋を出る。
向かう先は10階。
食に興味がないというか、食パン以外思いつかない俺は、「今日何食べたい」に答えられないことが多かった。
答えられないことが悲しいっていうことを紫苑さんに話したら料理してくれてる人のところで一緒にすれば分かるようになると料理の人たちに話を通してくれた。
調理実習を小学校以降一回も出席したことがなかった俺は包丁の握り方すら怪しい。
「こんにちは。」
「杏さん、おかえりなさいっす。」
「ただいまです。今日は何を作るんですか?
」
「今日は和風ハンバーグです。」
「宮さん。」
料理係のリーダーの宮さん。
宮さんって呼ばれてるから宮さんって呼んでくれだそうで、宮さんって俺も呼んでる。
吊り目でツンツンした黒い髪の毛を調理服の帽子に隠し、職人さんっていう言葉が合いそうなお兄さん。なんでも紫苑さんの三つ上で紫苑さんと仲がいいんだとか。
箸の練習も最近ちゃんと初めて少しずつだけど掴めるようになった。
「…和風ハンバーグってどんなやつなんですか?」
「和風ハンバーグはハンバーグの上にケチャップからつくるソースではなくきのこや出汁を使ったソースをかけます。」
「そこが和風なんですね。」
「今日も手伝っていただけますか?」
「はい!」
「じゃあ、龍と一緒にタネを作ってきて下さい!」
「わかりました。」
龍さんはさっき入ってきた時に挨拶をしてくれたお兄さん。元気で明るくて気さくだ。
「龍さん、俺もタネ?を作りにきました。」
「おっ!じゃあ、こねこねするっす!」
ボウルに入ったお肉を手でこねるらしい。
それなら俺でもできそう。
少しずつできることを増やしてくれるこの時間が俺は好きでみんなの分のご飯ができた時はすごい達成感があるし、宮さんと一緒に上に行って紫苑さんの帰りを勉強しながら待つのも苦じゃない。
紫苑さんは意外と帰ってくるのが遅い日が多くて大学生ってこんなに大変なんだ!ってびっくりしている。
世の中の大学生はすごいっていう話をしたら普段笑わない宮さんが笑って、「それは若だけですよ」って言ってた。
このビルの人はみんな紫苑さんのことを「若」ってよぶ。それについて紫苑さんから話されたのは次の週末だった。
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(『ride』は2021年3月28日に追加します)
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