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第18話
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「上のレストランに予約は入れてあるんですが、少しお互いについて知ってから食事しませんか?」
「あっあの、俺。二条さんに謝らなきゃいけないんです。」
椅子からおりて立ち上がる。
「謝らなきゃいけないこと…ですか。」
「俺…俺、番を解消されたΩなんです。嘘をついてごめんなさい。」
地面にぶつける勢いで頭を下げる。
「だから…お付き合いできません。本当にごめんなさい。」
「頭を上げてください。…杏君が番を解消されたΩだってことは知っていました。」
「え…?だって両親は…。」
「まずは座ってください杏君。」
落ち着いた声で座るように促す二条さん。
その言葉に従って椅子に座る。
「さて、自己紹介をやり直そうかな。改めて初めまして。私の名前は二条紫苑。帝華大学4年生の21歳で、将来は二条グループの跡取りとして働くことになっています。二条グループは知っていますよね?」
「ごめんなさい…わからないです。」
「んー会社もまだまだってことかな?二条グループは、いろんな事業を手掛けてる会社なんだ。建築、装飾品、雑貨からスーパー。手広くやるけどどれも一流って言われることもあります。でも、杏君が知らないんだからまだまだですね。」
「そんなすごい企業を知らなかったなんて…ごめんなさい。」
「杏君は謝るのが癖なのかな?…じゃあ、次は杏君の自己紹介をしてもらってもいいですか?」
「えっと…水野杏、16歳、高校一年生です。それで…あの…去年その…番だった人に…解消されて…。」
「うん。どうして知っていたのか詳しくお伝えすることは今はできませんが、杏君が解消されてしまったΩだということを知っている上で今回、お見合いのお願いをさせてもらっています。」
「そう…だったんですか。」
「もし、杏君が良ければそれでもこれからも食事会をさせていただきたいと思っていますよ。」
「嬉しいんですけど…俺…その…もう一回誰かと番う気がないんです。だからご期待に添えないというか…。」
「私はαだから、杏君と番うことはできるけれど、αだからΩの杏君とあっているわけじゃない。人として好みだったからだ。番にならなくてもいいし、友人のままでもいい。それでもダメですか?」
「嬉しいです。その…今までお友達とかいなかったので…。」
「よかった。それじゃあ、交流も兼ねてご飯を食べに行きませんか?」
「あ…俺…実は、箸が使えなくて…。それにマナーも分からないし、綺麗にご飯を食べられないし、いっぱい食べられないんです…。」
言葉が続かずに黙って俯いてしまった。
嫌われただろうか?
今時子供でも使える箸が使えなくて、こんな高いホテルのレストランなのにマナーも知らない。お昼ご飯を食べる習慣がないから全然お腹は空いていない。フルコースを食べれる自信がない。
「大丈夫、フレンチだからフォークとナイフとスプーンだし、特別綺麗に食べるよりも美味しく食べる方が大切だよ。それに、マナーがわからなくても私がその場で軽く教えてあげる。一口ずつでも食べてみようよ。…それともまだ、食べたくないかい?きっと、上ですっごく美味しいご飯がまってるよ。」
「美味しいご飯…二条さん…食べたいです。」
「呼び方、紫苑でいいよ。」
「えっあっ…じゃあ、俺とお昼ご飯一緒に食べてくれませんか…紫苑さん。」
「うん、喜んで。杏君、行きましょうか。」
上の階にあるレストランはとても景色が綺麗だった。夜になったらもっと綺麗になるそうだ。
料理は人生で一番美味しかったし、全部は食べられなかったけどいつもよりいっぱい食べることができた。
紫苑さんは終始会話を振ってくれたりマナーを教えてくれたりしてくれたお陰で緊張したけど楽しく食事をすることができた。
本当に大人でカッコいい男性だった。
別れる頃にまた食事をしようと言われて食い気味に返事してしまったのは子供っぽく見えてしまったかもしれない。
今日会ったばかりで信用しているわけじゃないしこの人が俺を救ってくれるなんて期待しているわけじゃないけど、一緒にいてとても楽しかったからまた会いたいと思った。
「あっあの、俺。二条さんに謝らなきゃいけないんです。」
椅子からおりて立ち上がる。
「謝らなきゃいけないこと…ですか。」
「俺…俺、番を解消されたΩなんです。嘘をついてごめんなさい。」
地面にぶつける勢いで頭を下げる。
「だから…お付き合いできません。本当にごめんなさい。」
「頭を上げてください。…杏君が番を解消されたΩだってことは知っていました。」
「え…?だって両親は…。」
「まずは座ってください杏君。」
落ち着いた声で座るように促す二条さん。
その言葉に従って椅子に座る。
「さて、自己紹介をやり直そうかな。改めて初めまして。私の名前は二条紫苑。帝華大学4年生の21歳で、将来は二条グループの跡取りとして働くことになっています。二条グループは知っていますよね?」
「ごめんなさい…わからないです。」
「んー会社もまだまだってことかな?二条グループは、いろんな事業を手掛けてる会社なんだ。建築、装飾品、雑貨からスーパー。手広くやるけどどれも一流って言われることもあります。でも、杏君が知らないんだからまだまだですね。」
「そんなすごい企業を知らなかったなんて…ごめんなさい。」
「杏君は謝るのが癖なのかな?…じゃあ、次は杏君の自己紹介をしてもらってもいいですか?」
「えっと…水野杏、16歳、高校一年生です。それで…あの…去年その…番だった人に…解消されて…。」
「うん。どうして知っていたのか詳しくお伝えすることは今はできませんが、杏君が解消されてしまったΩだということを知っている上で今回、お見合いのお願いをさせてもらっています。」
「そう…だったんですか。」
「もし、杏君が良ければそれでもこれからも食事会をさせていただきたいと思っていますよ。」
「嬉しいんですけど…俺…その…もう一回誰かと番う気がないんです。だからご期待に添えないというか…。」
「私はαだから、杏君と番うことはできるけれど、αだからΩの杏君とあっているわけじゃない。人として好みだったからだ。番にならなくてもいいし、友人のままでもいい。それでもダメですか?」
「嬉しいです。その…今までお友達とかいなかったので…。」
「よかった。それじゃあ、交流も兼ねてご飯を食べに行きませんか?」
「あ…俺…実は、箸が使えなくて…。それにマナーも分からないし、綺麗にご飯を食べられないし、いっぱい食べられないんです…。」
言葉が続かずに黙って俯いてしまった。
嫌われただろうか?
今時子供でも使える箸が使えなくて、こんな高いホテルのレストランなのにマナーも知らない。お昼ご飯を食べる習慣がないから全然お腹は空いていない。フルコースを食べれる自信がない。
「大丈夫、フレンチだからフォークとナイフとスプーンだし、特別綺麗に食べるよりも美味しく食べる方が大切だよ。それに、マナーがわからなくても私がその場で軽く教えてあげる。一口ずつでも食べてみようよ。…それともまだ、食べたくないかい?きっと、上ですっごく美味しいご飯がまってるよ。」
「美味しいご飯…二条さん…食べたいです。」
「呼び方、紫苑でいいよ。」
「えっあっ…じゃあ、俺とお昼ご飯一緒に食べてくれませんか…紫苑さん。」
「うん、喜んで。杏君、行きましょうか。」
上の階にあるレストランはとても景色が綺麗だった。夜になったらもっと綺麗になるそうだ。
料理は人生で一番美味しかったし、全部は食べられなかったけどいつもよりいっぱい食べることができた。
紫苑さんは終始会話を振ってくれたりマナーを教えてくれたりしてくれたお陰で緊張したけど楽しく食事をすることができた。
本当に大人でカッコいい男性だった。
別れる頃にまた食事をしようと言われて食い気味に返事してしまったのは子供っぽく見えてしまったかもしれない。
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