【本編完結】白紙の未来

Popo

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第4話

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目が覚めたら、そこは知らないところだった。
 
「ここっ…どこっ!!」

オーナーに会って飲み物を飲んだ後からの記憶がない…。

重い体に鞭を打って立ち上がろうとすると、じゃらじゃらと金属の鎖がぶつかった音がした。
音がする方を見ると、鎖が首と両手足に付いていた。まるで奴隷のように。
それに…裸になっていた。着てきた服はどこにも見当たらない。
白を基調とした部屋は窓もなくベッドと机といすだけ。
扉は2つあるけど1つは鎖の長さ的に届かなさそうだった。

「目が覚めたんだね、蓮きゅん。」

バンっと目の前にあった扉が勢いよく開き、オーナーが入ってくる。

蓮は僕じゃない。僕は杏だ。
そもそもなんで連の名前を知ってる…??
今日?昨日?…出会ったばっかりのオーナーが知っているのはおかしい。

「僕は蓮じゃ…ないです。」

「うん?知ってるよ。僕は昔から蓮きゅんが大好きだったんだ。君は…イラナイ方だよね。でも、ボクちん頭いいからひらめいちゃったわけ。君は蓮きゅんと顔だけは似てるよね。しかも、Ωでちょうど売られてきた…。ボクちんの蓮きゅんになるため…ってことだよね?神様はボクちんが、いかにがんばりものなのかちゃんと見てるからプレゼントをくれたんだよね。うんうん。」

兄さんのストーカーだったってこと…!?
僕は身代わりの人形?お母さんはこのことを知っていてここに僕を売ったの?僕がオーナーに売れるってわかっていたから?

分からないことだらけ。全部僕のおバカな頭じゃ解決できないこと。

考えている間もオーナーは後ろを向いてずっと準備らしきことをしている。
静かな空間に響くわずかにこすれる物音が怖い。

「ってことでまぁずはボクちんの番になってもらうためにお薬を飲んでもらいましょーね。」

振り返りながらオーナーはそういった。

薬……!?!?こわ…い…。 ガチガチと音を鳴らして震える歯がオーナーの指をかんでしまった。

「いったいなぁ。抵抗するわるいこにはお仕置きしないと。」

そういってオーナーは僕の口の中に無理やり指を突っ込んできた。
鼻をつまれて息がうまくできなくなり口もふさがれ薬を飲みこむ。

「いいかい?君は今日から蓮君でボクちんのことはきょうさんとよぶんだよ。君がイイコでいてさえくれればボクちんは君をたぁんと可愛がってあげるからね。」

あぁ、これは頭が悪い僕でもわかる。


悪夢の始まりだ。














薬が効いた僕は体がまるで溶けてしまったかのような感覚で四つん這いに必死になりながら叫ぶように声を出していた。

「ごめん…なざい。もう…もう、ゆるじでぐだざい。」

涙なのか鼻水なのかよだれなのかわからないくらい混ざった体液が顔から流れる。
初めての発情期とセックスは痛くはないもののわからないことだらけで謝ることしかできなかった。
僕の後ろで腰を振り快楽を得ているこの男こそが涙と鼻水とよだれの原因である。

「蓮きゅん、もうわかったよね?誰が君の番なのか。」

「ぎょう…ぎょうざんでず。」

「少しでも反抗したら、今度はもっとひどいことちゃうかもしれないからきおつけるんだよ?」

「はい…わかり…まじだ。」

先ほど番うために外された首輪をまた付けられる。
重い鎖とこの首輪は僕の体力も奪う。
腰を振られるたびにガチャガチャとなりたまに鞭を打つようにあたる鎖は怖かった。

(僕…死ぬのかなぁ…。)

僕の命は恭さんが握っている。
オーナーだからとかじゃなくて番として本能的に感じている。きっと僕はこの人に捨てられた命を捨てるのだろう。僕自身はこんな行為したくないのに体は…本能は、そうじゃない。
番との行為がしたくてたまらなくなってしまう。
Ωが家畜と同等にみられることが多いのはきっとこういうところからなのだろう。

僕はそんな風に消えたかったわけじゃないのに、神様はとことん僕のことが嫌いみたいだ。

「じゃぁ…今日からよろしくねボクちんの蓮きゅん。」

そういって恭さんは電気の部屋を消し扉の奥に消えていった。
窓がないこの部屋は真っ暗になる。

扉の一つは出入口で一つはシャワー室だった。鎖の距離的に出入り口だけは絶対に届かないようになってる設計の部屋は明らかに監禁用の部屋だった。

薬によって強制的に発情させられ、薬が切れたことで発情が終わったばかりの体はまだ火照っているからか、何も着ていないけれど寒さは感じなかった。エアコンの風が出るところもあるので部屋の中は裸でも快適に過ごせる温度になってるようだった。

これ以上動けないほど重い体にタオルケットをかけてまるまって考える。

もし、恭さんが好きな兄さんになり切れたら彼は愛してくれるのだろうか。
もし、恭さんが望むような兄さんになったら僕は幸せになれるのだろうか。

…僕が恭さんを愛せればきっと彼は「蓮」を愛してくれる。

でもそれで僕は本当にいいのかわからないまま、落ちてくる瞼に逆らえず眠りについた。
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