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「王妃が宰相宅に邪魔しているようだな」
儂は長椅子に腰掛け、ひじ掛けに頬杖をついて宰相の報告を聞く。
「ええ、ここ最近は毎日の様にグレーゲルを見舞いに来られているようですね。逆に俺はここ最近全く居館には帰ってませんけど」
溜め息混じりに言った宰相に指摘してやる。
「仕方あるまい? 此度の事はお前と軍師の管理の甘さが招いた事であろうが。しかもお前の判断で王妃が連れ去られる所であった」
宰相は再び溜め息を吐く。
「いや、ほんとそうなんです。内通者があの場にいるとは想像出来ませんでした。心底自分の甘さに嫌気が差しますよ」
「今回は相手に協力者が多すぎましたからね~」
法相が宰相を庇う様に言った。
「そもそも、今回の黒幕、陛下の見立てではプトレドの王子なんでしょう? あの癖の強そうな王子」
外相が儂に確認する様に訊ねた。
「ああ、あの王子で間違いない」
「プトレドに潜入させてる暗部に調べさせたけど、オレステ・ジロラモ・マイナルディって外交官、やっぱりその王子の派閥の人間ではあるみたいね。直接話をしたりする様な関係ではなさそうだけど、多分、何人も介して汚れ仕事をさせられたのね、マイナルディ」
「まあ、そんな所だろう。あの王子は決して尻尾は掴ませんだろうな」
儂は足を組み直して外相を見た。
「ここから先は、お前の仕事だ、外相」
外相は良い笑顔で儂に答えた。
「任せて? このまま舐められたままで終わらせるなんて絶対に有り得ないから。私達の可愛い王妃を連れて行こうなんてふざけた真似、二度と考えられない様にするわ」
この面子で怒らせると最も歯止めが効かないのが、この外相だ。
「ねえ陛下? これってもう、プトレド王は通さなくていいって事でいいのよね?」
「ああ。今回はどんな手段も許す。好きにしろ。それから法相」
法相はいつもの作った笑顔を儂に向けた。
「何です? 陛下」
「お前もだ。王妃に離縁されては敵わんからな。お前に任せたが、全ての者に酌量は要らん」
「ええ、仰せの通り、法に則って最も重い裁きを下していますよ?」
グリムヒルトは今回の事で舐められてはならない。
叛乱軍を城内にむざむざ侵入させ、妾妃は儂を裏切り、王妃が連れ去られそうになったというのは国としては相当な恥だ。
凌遅刑とは言わずとも、厳しい裁きを下さなければ国の体裁は保てないだろう。
「軍師、宰相。お前達もこれを機に綱紀を改めよ。宰相、人員の整理も徹底しろ。塩漬けにしていた案件も含め全て改めて良い。軍師。城内の警備の恒常的な強化案を叩き台でいい、早急に出せ」
「「御意」」
二人は頭を下げ、返事をした。
「正直な所、まさか陛下を信奉する者達が、こんな形で煽動されるとは思ってもみませんでした」
宰相はこれにもまた溜め息を吐いた。
「全く予期出来なかった、という訳ではない分、我らの見込みの甘さを痛感させられました」
軍師もまた、珍しく反省の意を示した。
「それで? ラルセン様は予定通り廃妃になってお嫁に行くの?」
「特に予定を変更する理由もないからな。王妃は支えが無くなって寂しいと言っておったが、本人のたっての希望もあって変更は無しだ」
「まあ、王妃は心細いでしょうね。今まで支えてくれてた人達二人ともいなくなるんだから。……ヴィカンデル様はまだ認めてないんでしょ?」
今度は法相が溜め息を吐く。
「ヴィカンデル様の侍女達ももう供述してますし、逃げ道全部塞いでるんですけどね~~……。認めてくれる気はなさそうです」
儂の持つあの女の印象通りだ。
頑なで頭の固い女。故に自分の罪は決して認めないだろう。
あの女の中ではきっと、周りの何かが悪い事になっていて、自分は唆されてしまっただけ、と思い込んでいる……と言った所か。
この件でヴィカンデルの父親は要職を失う。
ヴィカンデルの父親がどこまでこの話に絡んできているかはわからんが、要職につけていて良い立場ではなくなったのは事実だ。
アルバニウス商会が絡んできている以上、何も知らなかったという事は考えにくい。
つまりヴィカンデル家はこのまま没落するだろう。
アルバニウス商会もレイティアの捕縛依頼の件、大量の武器の搬入、この辺りの繋がりが全て詳らかになり取り潰しが決まっている。
そういう結果を受け止める事の出来る様な女ではない。
レイティアはヴィカンデルに会わせて欲しいと儂に願ったが、これは許さなかった。
きっと何の建設的な話し合いも出来ない。レイティアが傷つくだけなのは明白だ。
「しかし、財務官の後任もこれまた困りましたね~~……」
宰相が頭を掻きながら困り果てた様に言う。
「現補佐官はどういう者だ?」
「それが思いっきりヴィカンデル家の所縁の者でして、これもまた更迭する事になってしまいました」
「お前達の部下に適当な者はおらんのか?」
法相が貼り付けた笑顔でそれに答えた。
「陛下、さすがに軍人で財務に明るい奴は少ないですよ。予算管理の事務職になるでしょうけど、そんな役職の奴は貴重なので財務官には回せません」
「そうか。それで宰相も頭を悩ませておるのか」
「ええ、そうなんです。幾人かは補佐役などから候補は出せるのですけど、各々色々と問題を抱えているような者が多数で、誰を据えたものか、悩ましい所です」
「一度、その者達を王妃に引き合わせてみろ」
儂の提案に皆の顔に疑問が浮かんだ。その面々に答える。
「王妃はあれでなかなか登用の才がある。あれが懐くのであればまあ問題ない」
そう言った所で王の間の扉を叩く音がした。
侍女から声がかかる。
「王妃陛下がお見えです」
「良いか、わかっておるだろうがここで話した事は王妃には内密にな」
「「「「御意」」」」
儂は長椅子に腰掛け、ひじ掛けに頬杖をついて宰相の報告を聞く。
「ええ、ここ最近は毎日の様にグレーゲルを見舞いに来られているようですね。逆に俺はここ最近全く居館には帰ってませんけど」
溜め息混じりに言った宰相に指摘してやる。
「仕方あるまい? 此度の事はお前と軍師の管理の甘さが招いた事であろうが。しかもお前の判断で王妃が連れ去られる所であった」
宰相は再び溜め息を吐く。
「いや、ほんとそうなんです。内通者があの場にいるとは想像出来ませんでした。心底自分の甘さに嫌気が差しますよ」
「今回は相手に協力者が多すぎましたからね~」
法相が宰相を庇う様に言った。
「そもそも、今回の黒幕、陛下の見立てではプトレドの王子なんでしょう? あの癖の強そうな王子」
外相が儂に確認する様に訊ねた。
「ああ、あの王子で間違いない」
「プトレドに潜入させてる暗部に調べさせたけど、オレステ・ジロラモ・マイナルディって外交官、やっぱりその王子の派閥の人間ではあるみたいね。直接話をしたりする様な関係ではなさそうだけど、多分、何人も介して汚れ仕事をさせられたのね、マイナルディ」
「まあ、そんな所だろう。あの王子は決して尻尾は掴ませんだろうな」
儂は足を組み直して外相を見た。
「ここから先は、お前の仕事だ、外相」
外相は良い笑顔で儂に答えた。
「任せて? このまま舐められたままで終わらせるなんて絶対に有り得ないから。私達の可愛い王妃を連れて行こうなんてふざけた真似、二度と考えられない様にするわ」
この面子で怒らせると最も歯止めが効かないのが、この外相だ。
「ねえ陛下? これってもう、プトレド王は通さなくていいって事でいいのよね?」
「ああ。今回はどんな手段も許す。好きにしろ。それから法相」
法相はいつもの作った笑顔を儂に向けた。
「何です? 陛下」
「お前もだ。王妃に離縁されては敵わんからな。お前に任せたが、全ての者に酌量は要らん」
「ええ、仰せの通り、法に則って最も重い裁きを下していますよ?」
グリムヒルトは今回の事で舐められてはならない。
叛乱軍を城内にむざむざ侵入させ、妾妃は儂を裏切り、王妃が連れ去られそうになったというのは国としては相当な恥だ。
凌遅刑とは言わずとも、厳しい裁きを下さなければ国の体裁は保てないだろう。
「軍師、宰相。お前達もこれを機に綱紀を改めよ。宰相、人員の整理も徹底しろ。塩漬けにしていた案件も含め全て改めて良い。軍師。城内の警備の恒常的な強化案を叩き台でいい、早急に出せ」
「「御意」」
二人は頭を下げ、返事をした。
「正直な所、まさか陛下を信奉する者達が、こんな形で煽動されるとは思ってもみませんでした」
宰相はこれにもまた溜め息を吐いた。
「全く予期出来なかった、という訳ではない分、我らの見込みの甘さを痛感させられました」
軍師もまた、珍しく反省の意を示した。
「それで? ラルセン様は予定通り廃妃になってお嫁に行くの?」
「特に予定を変更する理由もないからな。王妃は支えが無くなって寂しいと言っておったが、本人のたっての希望もあって変更は無しだ」
「まあ、王妃は心細いでしょうね。今まで支えてくれてた人達二人ともいなくなるんだから。……ヴィカンデル様はまだ認めてないんでしょ?」
今度は法相が溜め息を吐く。
「ヴィカンデル様の侍女達ももう供述してますし、逃げ道全部塞いでるんですけどね~~……。認めてくれる気はなさそうです」
儂の持つあの女の印象通りだ。
頑なで頭の固い女。故に自分の罪は決して認めないだろう。
あの女の中ではきっと、周りの何かが悪い事になっていて、自分は唆されてしまっただけ、と思い込んでいる……と言った所か。
この件でヴィカンデルの父親は要職を失う。
ヴィカンデルの父親がどこまでこの話に絡んできているかはわからんが、要職につけていて良い立場ではなくなったのは事実だ。
アルバニウス商会が絡んできている以上、何も知らなかったという事は考えにくい。
つまりヴィカンデル家はこのまま没落するだろう。
アルバニウス商会もレイティアの捕縛依頼の件、大量の武器の搬入、この辺りの繋がりが全て詳らかになり取り潰しが決まっている。
そういう結果を受け止める事の出来る様な女ではない。
レイティアはヴィカンデルに会わせて欲しいと儂に願ったが、これは許さなかった。
きっと何の建設的な話し合いも出来ない。レイティアが傷つくだけなのは明白だ。
「しかし、財務官の後任もこれまた困りましたね~~……」
宰相が頭を掻きながら困り果てた様に言う。
「現補佐官はどういう者だ?」
「それが思いっきりヴィカンデル家の所縁の者でして、これもまた更迭する事になってしまいました」
「お前達の部下に適当な者はおらんのか?」
法相が貼り付けた笑顔でそれに答えた。
「陛下、さすがに軍人で財務に明るい奴は少ないですよ。予算管理の事務職になるでしょうけど、そんな役職の奴は貴重なので財務官には回せません」
「そうか。それで宰相も頭を悩ませておるのか」
「ええ、そうなんです。幾人かは補佐役などから候補は出せるのですけど、各々色々と問題を抱えているような者が多数で、誰を据えたものか、悩ましい所です」
「一度、その者達を王妃に引き合わせてみろ」
儂の提案に皆の顔に疑問が浮かんだ。その面々に答える。
「王妃はあれでなかなか登用の才がある。あれが懐くのであればまあ問題ない」
そう言った所で王の間の扉を叩く音がした。
侍女から声がかかる。
「王妃陛下がお見えです」
「良いか、わかっておるだろうがここで話した事は王妃には内密にな」
「「「「御意」」」」
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