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謹慎を申し渡された私は、そのまま王の間で謹慎するように申し渡された。
そして私付きの侍女達も私の謹慎が解けるまで、私の世話をしない様にとの仰せだった。
なので、私の世話も陛下付きの侍女達にお願いする事になる。
陛下付きの侍女の皆さんはしっかり者な無口な人が多い。
陛下がお喋りな人を嫌うからだろう。
陛下は私とはたくさんお喋りしてくれるけれど、他の人とはお喋りするのは煩わしい様で、陛下の側仕えの人達は大抵、無口な人だった。
陛下付きの侍女長のフローラさんもとても無口な人だけど、言うべき事をキッパリ言う人だ。
陛下が御政務に出かけられた王の間で、陛下付きの侍女達に囲まれる。
「王妃陛下、とても疲れたお顔をしておられます。それでは陛下のお召しにお応えしてもガッカリなさるでしょう。しっかりお休みになって、ケアを致しましょう」
「はい」
私はフローラさんにベッドに押し込められる。
私はそれに大人しく従って薄めの羽布団を被った。
「お起きになられましたら、全身のケアを致します。陛下に少しでも喜んで頂かなくてはいけませんから」
「わかりました。お願いします」
本当なら今日も後宮の会計の書類に目を通して、お店の打ち合わせに出かけて、招かれていたお茶会に出かけて、地理の勉強をしなければいけなかったけど、正直に言うと限界だった。
連日の睡眠不足で、私は泥の様に眠ってしまった。
昼過ぎになってフローラさんに起こされる。
「王妃陛下、お起きになって下さいませ」
私は眠たい目を擦りながら言った。
「…おはようございます。陛下がお戻りになったのですか?」
フローラさんは他の侍女達に湯浴みの準備を指示しながら私に答えた。
「いいえ。陛下のお戻りまでに王妃陛下には身支度を整えて頂かなくてはいけませんから。お食事を用意しております。軽食も用意しておりますが」
「そうですか。ありがとうございます。…軽めの食事にして下さい」
「畏まりました」
手早く食事をベッドに運び、紅茶を淹れてくれる。
一事が万事、手際が良い。流石は陛下が傍付きにされるだけの事はある。
そして私の傍付きの侍女達とは違って、何もかも陛下優先なのが私には心地よかったりした。
この人達の主はあくまでも陛下なんだろう。
私と同じ想いを共有する人達だ。
そういう意味では私付きの侍女達よりも親近感があったりする。
気心が知れているのはもちろん、私付きの侍女達だけど。
軽い食事を済ませると、若い侍女二人がかりで全身を香油で揉み解されて、連日の疲労が嘘みたいに軽くなった。
そして薬湯に満たされた王の間の湯殿で湯浴みをする。
王の間のお風呂はバスタブじゃなくて、造り付けの大きな湯殿だ。
ふんだんにお湯が使われている。
お風呂の準備だけできっと大変な労力だろう。
私だけの為に準備させてしまって申し訳ない。
でもそのお陰と薬湯の効果でお肌が艶々になった。
湯浴みを終わらせて全身を拭き上げられる。いつもは自分でやるからと侍女達には下がってもらうけど、フローラさんには何とも言えない圧があって、私はそれを言い出せずにされるがままになる。
こんなに丹念にお世話される事は初めてで凄く気恥ずかしい。
「あの、髪は自分で乾かすので大丈夫です!」
これだけはなんとか言い出せて、風魔法を使う。
私が陛下の御髪を整えてる事を皆知っている様で控えてくれた。
魔法を初見の人もいただろうけど、皆特に反応は無い。
私付きの侍女達は初めて魔法を見た時、皆驚いたり興奮したりしてたのに、ここにも凄く違いがある。
ドレスを着せて貰い、髪を結われる。
髪飾りまで着けて何処かに出かける時の様だ。
「…あの、どうして着飾るんでしょう?陛下のお召しですか?」
フローラさんは私の髪を結いながら、鏡越しに答えた。
「いいえ。謹慎中ですのでせめて心持ちだけでも気を引き締めて頂かないと」
なるほど。外に出ないからこそ緊張感を持てという事ね。
着飾り終えた頃にはそろそろ陛下が御政務を終えるだろうという時間だった。
「流石はフローラさんです。陛下の事を全て把握しているのですね」
私は微笑んでそう褒め称える。
陛下はとても気難しい方だ。
その意図を汲むのは本当に理解してないと難しい。
陛下の行動パターンを全て把握して、欲する物を先回りして用意している。
こうしてる間も、他の侍女達はベッドを整えて湯殿を清掃している。
同時に私とのティータイムを想定して、お菓子と紅茶の準備も整えている。
「…差し出がましいのですが、王妃陛下に申し上げたき儀が」
「…なんでしょうか?」
フローラさんは一呼吸置いて私に目を合わせて言った。
「侍女達の中には、王妃陛下と御付きの侍女達との近しい関係に不満を持つ者もおります。どうぞお気をつけ下さいませ」
確かに私は侍女達に気安い関係を求めて、そういう風に望んで構築していった。
ここでお世話をされて、陛下付きの侍女達との距離感の違いをまざまざと見せつけられた。
どちらが、と言うと多分陛下と陛下付きの侍女達との関係の方が主従としては正常だろう。
気安く近しい関係はきっと、差別を生む。
本人達にその気がなくても、小さな差が大きな不満になったりするのかも知れない。
私の侍女達は私と気安い事で、免除される仕事があったり、私とおやつを食べたりして、人から見れば得をしてる様に見えるだろう。
その事に不満を持つ人も確実にいる。
フローラさんの忠告は尤もだ。
「わかりました。肝に銘じておきます。ありがとう」
そう返事をしたと同時に、ガチャリと王の間のドレッシングルームの扉が開いた。
そして私付きの侍女達も私の謹慎が解けるまで、私の世話をしない様にとの仰せだった。
なので、私の世話も陛下付きの侍女達にお願いする事になる。
陛下付きの侍女の皆さんはしっかり者な無口な人が多い。
陛下がお喋りな人を嫌うからだろう。
陛下は私とはたくさんお喋りしてくれるけれど、他の人とはお喋りするのは煩わしい様で、陛下の側仕えの人達は大抵、無口な人だった。
陛下付きの侍女長のフローラさんもとても無口な人だけど、言うべき事をキッパリ言う人だ。
陛下が御政務に出かけられた王の間で、陛下付きの侍女達に囲まれる。
「王妃陛下、とても疲れたお顔をしておられます。それでは陛下のお召しにお応えしてもガッカリなさるでしょう。しっかりお休みになって、ケアを致しましょう」
「はい」
私はフローラさんにベッドに押し込められる。
私はそれに大人しく従って薄めの羽布団を被った。
「お起きになられましたら、全身のケアを致します。陛下に少しでも喜んで頂かなくてはいけませんから」
「わかりました。お願いします」
本当なら今日も後宮の会計の書類に目を通して、お店の打ち合わせに出かけて、招かれていたお茶会に出かけて、地理の勉強をしなければいけなかったけど、正直に言うと限界だった。
連日の睡眠不足で、私は泥の様に眠ってしまった。
昼過ぎになってフローラさんに起こされる。
「王妃陛下、お起きになって下さいませ」
私は眠たい目を擦りながら言った。
「…おはようございます。陛下がお戻りになったのですか?」
フローラさんは他の侍女達に湯浴みの準備を指示しながら私に答えた。
「いいえ。陛下のお戻りまでに王妃陛下には身支度を整えて頂かなくてはいけませんから。お食事を用意しております。軽食も用意しておりますが」
「そうですか。ありがとうございます。…軽めの食事にして下さい」
「畏まりました」
手早く食事をベッドに運び、紅茶を淹れてくれる。
一事が万事、手際が良い。流石は陛下が傍付きにされるだけの事はある。
そして私の傍付きの侍女達とは違って、何もかも陛下優先なのが私には心地よかったりした。
この人達の主はあくまでも陛下なんだろう。
私と同じ想いを共有する人達だ。
そういう意味では私付きの侍女達よりも親近感があったりする。
気心が知れているのはもちろん、私付きの侍女達だけど。
軽い食事を済ませると、若い侍女二人がかりで全身を香油で揉み解されて、連日の疲労が嘘みたいに軽くなった。
そして薬湯に満たされた王の間の湯殿で湯浴みをする。
王の間のお風呂はバスタブじゃなくて、造り付けの大きな湯殿だ。
ふんだんにお湯が使われている。
お風呂の準備だけできっと大変な労力だろう。
私だけの為に準備させてしまって申し訳ない。
でもそのお陰と薬湯の効果でお肌が艶々になった。
湯浴みを終わらせて全身を拭き上げられる。いつもは自分でやるからと侍女達には下がってもらうけど、フローラさんには何とも言えない圧があって、私はそれを言い出せずにされるがままになる。
こんなに丹念にお世話される事は初めてで凄く気恥ずかしい。
「あの、髪は自分で乾かすので大丈夫です!」
これだけはなんとか言い出せて、風魔法を使う。
私が陛下の御髪を整えてる事を皆知っている様で控えてくれた。
魔法を初見の人もいただろうけど、皆特に反応は無い。
私付きの侍女達は初めて魔法を見た時、皆驚いたり興奮したりしてたのに、ここにも凄く違いがある。
ドレスを着せて貰い、髪を結われる。
髪飾りまで着けて何処かに出かける時の様だ。
「…あの、どうして着飾るんでしょう?陛下のお召しですか?」
フローラさんは私の髪を結いながら、鏡越しに答えた。
「いいえ。謹慎中ですのでせめて心持ちだけでも気を引き締めて頂かないと」
なるほど。外に出ないからこそ緊張感を持てという事ね。
着飾り終えた頃にはそろそろ陛下が御政務を終えるだろうという時間だった。
「流石はフローラさんです。陛下の事を全て把握しているのですね」
私は微笑んでそう褒め称える。
陛下はとても気難しい方だ。
その意図を汲むのは本当に理解してないと難しい。
陛下の行動パターンを全て把握して、欲する物を先回りして用意している。
こうしてる間も、他の侍女達はベッドを整えて湯殿を清掃している。
同時に私とのティータイムを想定して、お菓子と紅茶の準備も整えている。
「…差し出がましいのですが、王妃陛下に申し上げたき儀が」
「…なんでしょうか?」
フローラさんは一呼吸置いて私に目を合わせて言った。
「侍女達の中には、王妃陛下と御付きの侍女達との近しい関係に不満を持つ者もおります。どうぞお気をつけ下さいませ」
確かに私は侍女達に気安い関係を求めて、そういう風に望んで構築していった。
ここでお世話をされて、陛下付きの侍女達との距離感の違いをまざまざと見せつけられた。
どちらが、と言うと多分陛下と陛下付きの侍女達との関係の方が主従としては正常だろう。
気安く近しい関係はきっと、差別を生む。
本人達にその気がなくても、小さな差が大きな不満になったりするのかも知れない。
私の侍女達は私と気安い事で、免除される仕事があったり、私とおやつを食べたりして、人から見れば得をしてる様に見えるだろう。
その事に不満を持つ人も確実にいる。
フローラさんの忠告は尤もだ。
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