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朝、陛下に抱かれて微睡みながら起きた。
陛下が優しく私の髪を撫でられながら声をかける。
「起きたか?」
夜遅くまで交わっていて、まだ少し眠いけど、今日はお祭りに出かけるので寝ている場合じゃない。
「はい、おはようございます。陛下」
私は微笑んで陛下に朝の挨拶をする。
そうすると陛下は私に優しくキスをした。
陛下と王の間で軽い朝食を摂る。平民の服を着せてもらって、抜け路から城下に降りる。
陛下は私の贈った御守りを帯刀ベルトにつけてくれてる。
こうして街に出かける時は必ず身に付けてくれる。
私も陛下から頂いたネックレスをしっかり身に付ける。
「お祭り、とても楽しみですね!陛下」
朝から楽しみでついつい浮かれてしまう。
ずっと慣れない書類仕事に精を出していたので、こういう息抜きは本当に嬉しい。
「ああ、そうだな」
陛下は私の手を引いて答えてくれた。
しばらく歩いているとふと気がついた。
いつもの抜け路とは少し違うルートを進んでいる様に見える。
「陛下?いつもと路が違っている様に思うのですが…」
「あぁ。今回は違う場所に出る」
陛下について歩いていると分岐した通路の向こうに扉が見えたので、質問する。
「陛下、あの扉はなんですか?」
「あれか…。あれは祖父様秘蔵の秘薬の蒐集部屋だ」
「秘薬…ですか?」
「爺がご禁制にする前に集めたものだ。質の悪い物も、猛毒も遅効性の毒も、死なずに内臓だけ爛れるような物もあるな。媚薬もある。いずれお前に試してやろう」
「び、媚薬なんて使われたら…わたし……狂ってしまいます…。これ以上は…」
陛下のお召しだけでも充分すぎるくらいなのにそれ以上に快楽を与えられるなんて、想像するだけで怖い。
「そうか。では良い仕置きになりそうだな」
陛下は意地悪く笑う。
「そんな……。お願いですからやめて下さい…」
私は心底困ってしまって、懇願するしかない。
陛下はくつくつと笑い出す。
「冗談だ。お前が儂のものである限りは使わん。…ただし、心変わりした時には覚悟せよ」
「心変わりなんてしません」
ずっと、陛下のものであると決めているから、断言出来る。
「で、あれば使う機会はないか。つまらんな」
陛下はイジワルな顔をして私を見下ろす。
私はその顔をされると恥ずかしくなる様になった。
目を逸らして俯くと頭を撫でられる。
「…近頃は少し虐め過ぎたな。タガが外れてしまっていた」
はっと陛下の顔を見上げると、優しく笑っていた。
陛下はズルいなと思う。
こんな風に優しく笑うだけで全部許されるのだから。
…ついつい許してしまう私がダメなだけかもしれないけど。
陛下に手を引かれて初めての抜け路を歩いていくと、プストの時とは違う場所に出た。
暗い抜け路を抜けてきたので明るい日差しが目に飛び込んで眩む。
陛下が日差しを腕で避けながら言った。
「今回はテームをお前につけてある。何かあればテームを呼べ」
「はい、わかりました」
テームさんとサリさんはセオ島からの帰りの船でじっくりとお話しした。二人とも気さくでとても喋り易い方達だった。
多分、そうじゃなきゃ諜報なんて務まらないんだろう。
グリムヒルト随一の一番街の花街の入り口、大花門と呼ばれる豪奢な作りの門を潜る。
今日はお祭りなので花街は朝から人でごった返していた。
私は歩きながらキョロキョロと周りを見渡して、陛下に声をかける。
「アナバス様?今日は…」
って、あれ?陛下がいない…。
…もしかして…迷子になっちゃった…?
迷子になってしまった時の心得は『その場をじっとして動かない』、だけど、見つけてもらえるかしら?
そうだ。門まで戻ろう。
目印になり易い所にいればもしかして気がついてもらえるかも。
私はてくてくと門まで引き返す。
色々と珍しい建物に目を奪われてキョロキョロと見回しながら歩いて行く。
幾らも進んでないからきっと見つけて貰えるだろう。
「足抜けだーーーーーっ!」
大きな声が響く。
その声に耳を奪われて、振り返ろうとした瞬間、後ろから何かがドンとぶつかって、私はよろめく。
え?何?と思ったら、後ろから誰かに羽交締めにされた。
「この女か⁈」
振り返ると私を羽交締めにしていたのはあまりガラの良くなさそうな男の人だった。
「違うけど、その子もこっち連れといで。
逃げた子も追っかけて」
30過ぎ位の娼館の香車風の女性が私を一瞥して言った。
他の男の人達が何やら門の方向に向かって走っていった。
私は男の手を振り払おうと踠きながら叫ぶ。
「どうして私が連れて行かれなくちゃダメなの?ただの見物人なのに!」
香車風の女性は私を見下す様にチラリと見て鼻を鳴らした。
「どうせどっかから足抜けしようと出て来た娘だろ?とにかく連れてくよ」
私は文句を言うけど、全然取りあって貰えない。
「私は夫と見物しに来ただけなの!足抜けじゃないわ!離して!」
必死に踠くけど、男の腕から逃れられない。
大きくて華美な建物に引きずる様に連れて行かれる。
建物には大きな看板がかかってあって、『紫陽花屋』と書かれていた。
…これはとてもまずいんじゃないかしら?
陛下が優しく私の髪を撫でられながら声をかける。
「起きたか?」
夜遅くまで交わっていて、まだ少し眠いけど、今日はお祭りに出かけるので寝ている場合じゃない。
「はい、おはようございます。陛下」
私は微笑んで陛下に朝の挨拶をする。
そうすると陛下は私に優しくキスをした。
陛下と王の間で軽い朝食を摂る。平民の服を着せてもらって、抜け路から城下に降りる。
陛下は私の贈った御守りを帯刀ベルトにつけてくれてる。
こうして街に出かける時は必ず身に付けてくれる。
私も陛下から頂いたネックレスをしっかり身に付ける。
「お祭り、とても楽しみですね!陛下」
朝から楽しみでついつい浮かれてしまう。
ずっと慣れない書類仕事に精を出していたので、こういう息抜きは本当に嬉しい。
「ああ、そうだな」
陛下は私の手を引いて答えてくれた。
しばらく歩いているとふと気がついた。
いつもの抜け路とは少し違うルートを進んでいる様に見える。
「陛下?いつもと路が違っている様に思うのですが…」
「あぁ。今回は違う場所に出る」
陛下について歩いていると分岐した通路の向こうに扉が見えたので、質問する。
「陛下、あの扉はなんですか?」
「あれか…。あれは祖父様秘蔵の秘薬の蒐集部屋だ」
「秘薬…ですか?」
「爺がご禁制にする前に集めたものだ。質の悪い物も、猛毒も遅効性の毒も、死なずに内臓だけ爛れるような物もあるな。媚薬もある。いずれお前に試してやろう」
「び、媚薬なんて使われたら…わたし……狂ってしまいます…。これ以上は…」
陛下のお召しだけでも充分すぎるくらいなのにそれ以上に快楽を与えられるなんて、想像するだけで怖い。
「そうか。では良い仕置きになりそうだな」
陛下は意地悪く笑う。
「そんな……。お願いですからやめて下さい…」
私は心底困ってしまって、懇願するしかない。
陛下はくつくつと笑い出す。
「冗談だ。お前が儂のものである限りは使わん。…ただし、心変わりした時には覚悟せよ」
「心変わりなんてしません」
ずっと、陛下のものであると決めているから、断言出来る。
「で、あれば使う機会はないか。つまらんな」
陛下はイジワルな顔をして私を見下ろす。
私はその顔をされると恥ずかしくなる様になった。
目を逸らして俯くと頭を撫でられる。
「…近頃は少し虐め過ぎたな。タガが外れてしまっていた」
はっと陛下の顔を見上げると、優しく笑っていた。
陛下はズルいなと思う。
こんな風に優しく笑うだけで全部許されるのだから。
…ついつい許してしまう私がダメなだけかもしれないけど。
陛下に手を引かれて初めての抜け路を歩いていくと、プストの時とは違う場所に出た。
暗い抜け路を抜けてきたので明るい日差しが目に飛び込んで眩む。
陛下が日差しを腕で避けながら言った。
「今回はテームをお前につけてある。何かあればテームを呼べ」
「はい、わかりました」
テームさんとサリさんはセオ島からの帰りの船でじっくりとお話しした。二人とも気さくでとても喋り易い方達だった。
多分、そうじゃなきゃ諜報なんて務まらないんだろう。
グリムヒルト随一の一番街の花街の入り口、大花門と呼ばれる豪奢な作りの門を潜る。
今日はお祭りなので花街は朝から人でごった返していた。
私は歩きながらキョロキョロと周りを見渡して、陛下に声をかける。
「アナバス様?今日は…」
って、あれ?陛下がいない…。
…もしかして…迷子になっちゃった…?
迷子になってしまった時の心得は『その場をじっとして動かない』、だけど、見つけてもらえるかしら?
そうだ。門まで戻ろう。
目印になり易い所にいればもしかして気がついてもらえるかも。
私はてくてくと門まで引き返す。
色々と珍しい建物に目を奪われてキョロキョロと見回しながら歩いて行く。
幾らも進んでないからきっと見つけて貰えるだろう。
「足抜けだーーーーーっ!」
大きな声が響く。
その声に耳を奪われて、振り返ろうとした瞬間、後ろから何かがドンとぶつかって、私はよろめく。
え?何?と思ったら、後ろから誰かに羽交締めにされた。
「この女か⁈」
振り返ると私を羽交締めにしていたのはあまりガラの良くなさそうな男の人だった。
「違うけど、その子もこっち連れといで。
逃げた子も追っかけて」
30過ぎ位の娼館の香車風の女性が私を一瞥して言った。
他の男の人達が何やら門の方向に向かって走っていった。
私は男の手を振り払おうと踠きながら叫ぶ。
「どうして私が連れて行かれなくちゃダメなの?ただの見物人なのに!」
香車風の女性は私を見下す様にチラリと見て鼻を鳴らした。
「どうせどっかから足抜けしようと出て来た娘だろ?とにかく連れてくよ」
私は文句を言うけど、全然取りあって貰えない。
「私は夫と見物しに来ただけなの!足抜けじゃないわ!離して!」
必死に踠くけど、男の腕から逃れられない。
大きくて華美な建物に引きずる様に連れて行かれる。
建物には大きな看板がかかってあって、『紫陽花屋』と書かれていた。
…これはとてもまずいんじゃないかしら?
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