120 / 200
120
しおりを挟む
宰相様に軍船の差配を任せて、乗船する。
私が正妃になった事で、私の紋章が決められた。陛下の提案でヒメユズリの花と鷹があしらわれた紋章になった。
私が乗船しているのでこの船にはその紋章の旗が風に揺れてはためいている。
「王妃。大型になる軍船は沖合で待機させます。先ずは巡回を装った船で取り囲んだ後に、大型船で更に取り囲むのが宜しいかと」
宰相様が私に作戦の説明をしてくれる。
「よしなに。でも、相手は商船ですから、決して向こうから攻撃が無い以上、こちらも手荒な真似はしないで下さいね?何よりも証拠の押収を最優先に。お願いしますね?」
「御意」
ロロテア港に向かう軍の船団はかなり大きな規模で、20隻はあるだろう。
「……たった1隻の商船にここまで必要でしょうか?」
私は宰相様にお尋ねする。宰相様はにっこりと笑って仰った。
「必要です。我らの主を舐めてかかってこれだけの規模の密輸をやって来たんですから。ハッキリとその事を自覚させてやらねばなりません」
「……決して、手荒な事だけは許しません。いいですか?」
「もちろんです。相手が攻勢に出ない限りは威嚇するのみですよ」
「ロロテア港には恐らく陛下もいらっしゃいます。充分注意して下さい」
宰相様は苦笑いをする。
「そう。陛下がいらっしゃるという事は、恐らく何か仕掛けて来ます。それが一番厄介なんですよね」
私は武装船の話を思い出す。陛下の提案で組織される予定だった。
私がそんな事を思い巡らせていると、宰相様の部下から声がかかった。
「ハーヴィスト閣下。ヴェルウェルト商会の商船と思われる船影が見えたとの報告です」
「よし、軍船団はそのまま沖合で待機。巡視船は山陰に隠れて待機」
かなり沖で待機してる私達には船影を確認は出来なかったけれど、商船はロロテアの港の山陰に着いた様だった。
「巡視船は商船を取り囲め。全艦、ロロテアに向かえ」
宰相様が伝令を伝えると沖合で停泊していた船団は一斉にロロテアに向かって舵を切る。
私達が着いた頃には漁船に偽装していた武装船と巡視船が交戦していた。
互いに距離を測りながら弓を放っている。
巡視船は弓矢を防ぐ大きな置き盾が装備されているので大きな損害は出ていない様だ。
武装船も簡易の板の様なもので置き盾代わりにしている。でも強度を考えたらそんなには保たないだろう。
漁船の機動力を活かして縦横無尽に動き回りながら巡視船を翻弄している。
私は船の動きをじっと見た。矢面に立って先陣を切る武装船が一隻ある。
「待って! 白旗を上げて下さい!」
宰相様がキョトンとして私に訊ねる。
「白旗ですか?」
「あれ、あの武装船に陛下が乗っています。お迎えに上がりましょう」
「陛下が? しかし……」
「いつだって陛下はご自身を囮になさる。今回は殿をお務めになられてるのでしょう」
そう、船の動きはさりげなく他の船を逃そうとしている。
宰相様は少し間を置いて、その後優しく微笑んだ。
「御意。全巡視船に告ぐ。白旗を上げて、目標の武装船に向かえ! 陛下がご乗船されている! 軍用船は商船を囲んだまま待機!」
白旗の上げられた巡視船とこの宰相様と私の乗っている軍船で武装船にゆっくりと近づく。
武装船は構えていた弓を下ろす。近づいていくと、船首に陛下のお姿を見つけた。
「陛下!」
私は思わず船の縁にしがみつき、お声をかける。
その声に気がついて下さった様子で、こちらを向いて軽く手を上げて下さった。
武装船と軍船に簡易の桟橋が架けられる。陛下は桟橋を軽い足取りで渡って来られた。
「お帰りなさいませ、陛下」
私は頭を下げて陛下をお迎えする。
それに倣って軍船、巡視船の水兵達が陛下に向かって一斉に敬礼する。
「ああ、戻った。しかしえらく簡単に儂だとバレたな。何故わかった?」
「……危ない事をなさっているからです。お約束して下さったのに……」
私は頭を上げて少し拗ねた顔をする。陛下は私の頭を撫でて笑った。
「大して危険でもなかったぞ? そう怒るな。お前に怒られるのは敵わん」
宰相様が陛下に仰った。
「我らを揶揄って弄ぶのはおやめ下さい。万一陛下にお怪我でもあったらどうするんですか」
陛下はニヤリと笑って宰相様に答えた。
「なに、ちょっとした演習代わりにと思ってな。この所お前も内政ばかりで海に出ておらんだろう?」
「まぁ、確かに久しぶりに海に出られて沸き立ちましたけど」
私は呆れてお二人に言った。
「宰相様までそんな事を。付き合わされる水兵さん達の身にもなって下さいね?」
お二人は私の方を見て笑う。私もそれを見て笑ってしまう。
ひとしきり笑い合った後、陛下が改めて仕切り直す。
「商船の荷を改めよ。乗組員は全員拘束しろ」
宰相様以下全ての陛下の兵が頭を下げて返答する。
「御意」
そして迅速に商船の荷は検められて、証拠になり得る品々は無事に見つかった。
その中身は調度品や葡萄酒、高価な陶器類に禁止されてる催淫剤まであった。
「今現在外洋に出ているヴェルウェルトの船も全て確認出来ています。帰り次第抑えられる様手筈も整っております」
「連絡を取られる前に頭を叩くか。この押収品を証拠として、ヴェルウェルト商会に監査を入れる。早急に手配せよ」
宰相様がそれに応えて言った。
「鳥を飛ばして法相に知らせをやりました。届き次第ヴェルウェルト商会本部に監査が入ります」
ヴェルウェルト商会本部に監査が入って、裏帳簿とロイヤルブルーのブレスレッドとオリヤンの御守りが見つかった。
私が正妃になった事で、私の紋章が決められた。陛下の提案でヒメユズリの花と鷹があしらわれた紋章になった。
私が乗船しているのでこの船にはその紋章の旗が風に揺れてはためいている。
「王妃。大型になる軍船は沖合で待機させます。先ずは巡回を装った船で取り囲んだ後に、大型船で更に取り囲むのが宜しいかと」
宰相様が私に作戦の説明をしてくれる。
「よしなに。でも、相手は商船ですから、決して向こうから攻撃が無い以上、こちらも手荒な真似はしないで下さいね?何よりも証拠の押収を最優先に。お願いしますね?」
「御意」
ロロテア港に向かう軍の船団はかなり大きな規模で、20隻はあるだろう。
「……たった1隻の商船にここまで必要でしょうか?」
私は宰相様にお尋ねする。宰相様はにっこりと笑って仰った。
「必要です。我らの主を舐めてかかってこれだけの規模の密輸をやって来たんですから。ハッキリとその事を自覚させてやらねばなりません」
「……決して、手荒な事だけは許しません。いいですか?」
「もちろんです。相手が攻勢に出ない限りは威嚇するのみですよ」
「ロロテア港には恐らく陛下もいらっしゃいます。充分注意して下さい」
宰相様は苦笑いをする。
「そう。陛下がいらっしゃるという事は、恐らく何か仕掛けて来ます。それが一番厄介なんですよね」
私は武装船の話を思い出す。陛下の提案で組織される予定だった。
私がそんな事を思い巡らせていると、宰相様の部下から声がかかった。
「ハーヴィスト閣下。ヴェルウェルト商会の商船と思われる船影が見えたとの報告です」
「よし、軍船団はそのまま沖合で待機。巡視船は山陰に隠れて待機」
かなり沖で待機してる私達には船影を確認は出来なかったけれど、商船はロロテアの港の山陰に着いた様だった。
「巡視船は商船を取り囲め。全艦、ロロテアに向かえ」
宰相様が伝令を伝えると沖合で停泊していた船団は一斉にロロテアに向かって舵を切る。
私達が着いた頃には漁船に偽装していた武装船と巡視船が交戦していた。
互いに距離を測りながら弓を放っている。
巡視船は弓矢を防ぐ大きな置き盾が装備されているので大きな損害は出ていない様だ。
武装船も簡易の板の様なもので置き盾代わりにしている。でも強度を考えたらそんなには保たないだろう。
漁船の機動力を活かして縦横無尽に動き回りながら巡視船を翻弄している。
私は船の動きをじっと見た。矢面に立って先陣を切る武装船が一隻ある。
「待って! 白旗を上げて下さい!」
宰相様がキョトンとして私に訊ねる。
「白旗ですか?」
「あれ、あの武装船に陛下が乗っています。お迎えに上がりましょう」
「陛下が? しかし……」
「いつだって陛下はご自身を囮になさる。今回は殿をお務めになられてるのでしょう」
そう、船の動きはさりげなく他の船を逃そうとしている。
宰相様は少し間を置いて、その後優しく微笑んだ。
「御意。全巡視船に告ぐ。白旗を上げて、目標の武装船に向かえ! 陛下がご乗船されている! 軍用船は商船を囲んだまま待機!」
白旗の上げられた巡視船とこの宰相様と私の乗っている軍船で武装船にゆっくりと近づく。
武装船は構えていた弓を下ろす。近づいていくと、船首に陛下のお姿を見つけた。
「陛下!」
私は思わず船の縁にしがみつき、お声をかける。
その声に気がついて下さった様子で、こちらを向いて軽く手を上げて下さった。
武装船と軍船に簡易の桟橋が架けられる。陛下は桟橋を軽い足取りで渡って来られた。
「お帰りなさいませ、陛下」
私は頭を下げて陛下をお迎えする。
それに倣って軍船、巡視船の水兵達が陛下に向かって一斉に敬礼する。
「ああ、戻った。しかしえらく簡単に儂だとバレたな。何故わかった?」
「……危ない事をなさっているからです。お約束して下さったのに……」
私は頭を上げて少し拗ねた顔をする。陛下は私の頭を撫でて笑った。
「大して危険でもなかったぞ? そう怒るな。お前に怒られるのは敵わん」
宰相様が陛下に仰った。
「我らを揶揄って弄ぶのはおやめ下さい。万一陛下にお怪我でもあったらどうするんですか」
陛下はニヤリと笑って宰相様に答えた。
「なに、ちょっとした演習代わりにと思ってな。この所お前も内政ばかりで海に出ておらんだろう?」
「まぁ、確かに久しぶりに海に出られて沸き立ちましたけど」
私は呆れてお二人に言った。
「宰相様までそんな事を。付き合わされる水兵さん達の身にもなって下さいね?」
お二人は私の方を見て笑う。私もそれを見て笑ってしまう。
ひとしきり笑い合った後、陛下が改めて仕切り直す。
「商船の荷を改めよ。乗組員は全員拘束しろ」
宰相様以下全ての陛下の兵が頭を下げて返答する。
「御意」
そして迅速に商船の荷は検められて、証拠になり得る品々は無事に見つかった。
その中身は調度品や葡萄酒、高価な陶器類に禁止されてる催淫剤まであった。
「今現在外洋に出ているヴェルウェルトの船も全て確認出来ています。帰り次第抑えられる様手筈も整っております」
「連絡を取られる前に頭を叩くか。この押収品を証拠として、ヴェルウェルト商会に監査を入れる。早急に手配せよ」
宰相様がそれに応えて言った。
「鳥を飛ばして法相に知らせをやりました。届き次第ヴェルウェルト商会本部に監査が入ります」
ヴェルウェルト商会本部に監査が入って、裏帳簿とロイヤルブルーのブレスレッドとオリヤンの御守りが見つかった。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
人形な美貌の王女様はイケメン騎士団長の花嫁になりたい
青空一夏
恋愛
美貌の王女は騎士団長のハミルトンにずっと恋をしていた。
ところが、父王から60歳を超える皇帝のもとに嫁がされた。
嫁がなければ戦争になると言われたミレはハミルトンに帰ってきたら妻にしてほしいと頼むのだった。
王女がハミルトンのところにもどるためにたてた作戦とは‥‥
森でオッサンに拾って貰いました。
来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
アパートの火事から逃げ出そうとして気がついたらパジャマで森にいた26歳のOLと、拾ってくれた40近く見える髭面のマッチョなオッサン(実は31歳)がラブラブするお話。ちと長めですが前後編で終わります。
ムーンライト、エブリスタにも掲載しております。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる