人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

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 晩餐会が終わり、アナバスとレイティアは王の間へ戻った。
 アナバスは湯浴みもせず早々に侍女達に下がる様に命じる。
 レイティアは晩餐会の始まった辺りからアナバスが何か不機嫌になった事に気がついていたが、周囲には気づかれる事もないので、笑顔で賓客と接していた。
 アナバスはレイティアの手を引き、寝室へ導いた。
「……陛下?私、何か粗相がございましたか?」
 恐る恐る、アナバスに聞く。
「レイティアよ。プトレドの似非王子と何があった?」
「……何、と仰いますと?」
「ダンスの時、何を話した?」
 アナバスは話をしながらマントと軍服を床に脱ぎ捨てる。
「……ダンスの話と、私の生まれた国の事と、あとはあちらから名前で呼んで下さいと……。もちろん、お断りしました」
 アナバスは眉を上げ、じっとレイティアを見つめる。
「……レイティア。その後プトレドの似非王子と何処かで会ったであろう?」
「……外苑の薔薇園で、お会いしました……。その時にもこの場限りで、というお約束で、お名前を呼んで下さいと言われて…その……、お名前でお呼びしました」
 アナバスはあの薄く笑った意味を理解する。
「……あの似非王子め……」
 アナバスは自分のものに手出しされた怒りでざわりと冷たいものが背を撫でる様な感情が湧き上がった。

「……あの、陛下……私は何か国益に適わぬ事をしでかしましたか?」
 レイティアはただ屈託なくアナバスを見つめ、国の心配をした。
 不安に揺れる瞳を覗き込む。
「……レイティア、お前は重大な過ちを犯した」
 レイティアは目を見開く。
「申し訳ありません! 陛下!」
 深く頭を下げようとしたが、アナバスに肩を掴まれる。
「……⁈   陛下⁈」
「謝罪には及ばぬ」
「⁇    ど、どういう事でしょうか?」
 レイティアはアナバスの意図がわからず困惑する。
「お前はその身を以て、その過ちを正せ。それしか認めぬ」
「あの、私、どんな過ちを犯したのでしょう? どうかどんな罰でも受けますから、それを教えて頂けませんか? 陛下」
「お前は儂の嫉妬を煽った」
 レイティアは言われた事の意味を上手く消化できない。
「⁇    嫉妬⁇    ですか⁇」
「懇切丁寧に説明してやる気はない。責苦を受けよ」
 アナバスはレイティアの顎を掴み持ち上げる。
 そして軽く唇に口付け、一旦離し、もう一度、今度は濃厚なキスをする。
 アナバスの舌がレイティアの舌に絡みつき、吸い付く。
 初めての事に驚愕し、戸惑うレイティアは何も考える事が出来なかった。ただただされるがままにアナバスの舌が自分の舌を犯す事を許してしまった。
 長く濃厚なキスがやっと終わる。
 唇が離されて見つめ合うと、自分のされた事の意味を漸く理解する。

 ゆるゆると恥辱の感情が湧き上がる。
「……あ、あの、私……、あの……」
 顔はすっかり赤く火照る。
 レイティアは俯きたいが、顎を掴まれてそれは叶わない。
 自分が今から何をされるのか、アナバスが言った、『嫉妬』の意味を理解した。
「あの……、ごめ」
 最後まで句を告げないまま、またアナバスはレイティアの舌を犯す。
 一旦唇を離し、指示を与える。
「儂のする様に、お前も舌を這わせろ」
 返事をする間も与えてもらえずに、また唇を奪われて、舌を犯される。
 命じられた通りにアナバスのする様に舌を這わせ、アナバスの舌に必死に吸い付く。
 レイティアにはまだこれが何故『良い』のかわからない。
 ただ、アナバスに満足して欲しくて必死に応えた。
 舌を離し、唇が再び解放される。
 粗く息をする。呼吸を忘れるほど必死に舌を這わせた。
 アナバスはレイティアのドレスに手をかける。
「……お前は儂の妻だ。濫りに他所の男を魅了するな」
「……っ!陛下! 誤解です! 私、誘惑なんてしてません!」
 レイティアはあらぬ誤解を解く為に必死に訴える。
 アナバスはレイティアのドレスの飾りボタンになった背中のボタンを着々と外していく。
「誘惑とは言っておらん。魅了と言っておる」
「同じ事ではないのですか?」
 ドレスを剥ぎ取られ、コルセットと下着姿になるレイティア。
 レイティアの背後に回り、背中のコルセットの編み上げた紐を手早く取り去る。
 ペティコートの紐も解いてしまう。
 レイティアは上半身を裸に、下半身には太腿まで履くストッキングと局部を隠すだけの下着をつけただけのあられもない姿になった。
「同じではない。もう解らなくても良い。お前は責苦を受けるしかない」
 両手で双丘を隠すレイティア。
 アナバスは背後からレイティアの両腕を掴む。
 そして腕を開かせその双丘を露わにさせた。
 レイティアの耳輪を喰む。
 レイティアはぞくりと悪寒にも似た感触を味わう。
 その悪寒はアナバスが首筋に吸い付いた時にも同じ様に感じる。
「……っぁ……、あ、陛下……あの、くすぐったいです……」
 後ろから回されたアナバスの手が手首を離れて、二つの膨らみの方へと向かう。
 両の手は膨らみを掴み、優しく揉みしだいていく。
「……っ……ん……」
 先端のピンク色の蕾をクイっと摘み上げられる。
 するとピクンと小さく身体が跳ねた。
 レイティア自身の意志ではない。
 アナバスを見上げるといつも自分に向ける加虐の顔をしていた。
 その顔を見て、レイティアは更に恥辱感に塗れた。
「あ、あの……陛下……私、こういう事、キチンと習っていないんです……。ですから……どうか……」
 アナバスはレイティアの耳元で囁く。
「そうか。ならば儂が全て教えてやる。お前は儂に従っていれば良い」
 首筋にキスをされる度に悪寒の様な感覚がレイティアを襲う。
 一緒に蕾を摘まれて指先で捏ねられると、身体がピクンと反応してしまう。
 その感覚がなんなのかよくわからないまま、アナバスにされるがままになる。
 レイティアの肩を掴み、向かい合わせる。
 顔を赤く染め、瞳を潤ませて、自分を見つめる、あられもない姿のレイティア。
 その姿に我慢ならず、ベッドに押し倒す。
「……レイティア、お前にはわからぬだろう。一年、こうしたい衝動に駆られ、耐えて来た儂の気など。その上今更になって他の男を魅了しおって。泣いても叫んでも、もう許してやらぬ」
「……名前でお呼びした事……それ程にお怒りですか?」
 レイティアは消え入りそうな声で訊ねた。
「ああ、怒り心頭だ」
「…………陛下?私には一つ、秘密があります」
「秘密?」
「……本当は生涯、誰にも言っちゃダメな事なのです……。伴侶となる人にも言わない事を推奨される事なのです…」
「……」
「私達シビディア大陸の純血の民は、神獣と自身の魂とで契約をします。その時、誰にも内緒の、神獣とだけ共有する名前をつけるんです。私が自分の魂につけた名前は……」
 レイティアは上半身を起こし、アナバスの耳元に唇を寄せる。
 小さく、他の誰にも決して聞こえない位の小さな声で囁く。
「アナティアリアス」
 レイティアは上半身をベッドに預けた。
 そしてアナバスをじっと見つめ、優しく微笑んだ。
「陛下……いえ、アナバス様。二人だけの秘密ですよ? この名で、決して呼ばないで下さいね?」

 自身の最大の秘密を捧げて、アナバスへの忠誠の誓いとした。
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