人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

文字の大きさ
上 下
85 / 200

85※

しおりを挟む
 晩餐会が終わり、アナバスとレイティアは王の間へ戻った。
 アナバスは湯浴みもせず早々に侍女達に下がる様に命じる。
 レイティアは晩餐会の始まった辺りからアナバスが何か不機嫌になった事に気がついていたが、周囲には気づかれる事もないので、笑顔で賓客と接していた。
 アナバスはレイティアの手を引き、寝室へ導いた。
「……陛下?私、何か粗相がございましたか?」
 恐る恐る、アナバスに聞く。
「レイティアよ。プトレドの似非王子と何があった?」
「……何、と仰いますと?」
「ダンスの時、何を話した?」
 アナバスは話をしながらマントと軍服を床に脱ぎ捨てる。
「……ダンスの話と、私の生まれた国の事と、あとはあちらから名前で呼んで下さいと……。もちろん、お断りしました」
 アナバスは眉を上げ、じっとレイティアを見つめる。
「……レイティア。その後プトレドの似非王子と何処かで会ったであろう?」
「……外苑の薔薇園で、お会いしました……。その時にもこの場限りで、というお約束で、お名前を呼んで下さいと言われて…その……、お名前でお呼びしました」
 アナバスはあの薄く笑った意味を理解する。
「……あの似非王子め……」
 アナバスは自分のものに手出しされた怒りでざわりと冷たいものが背を撫でる様な感情が湧き上がった。

「……あの、陛下……私は何か国益に適わぬ事をしでかしましたか?」
 レイティアはただ屈託なくアナバスを見つめ、国の心配をした。
 不安に揺れる瞳を覗き込む。
「……レイティア、お前は重大な過ちを犯した」
 レイティアは目を見開く。
「申し訳ありません! 陛下!」
 深く頭を下げようとしたが、アナバスに肩を掴まれる。
「……⁈   陛下⁈」
「謝罪には及ばぬ」
「⁇    ど、どういう事でしょうか?」
 レイティアはアナバスの意図がわからず困惑する。
「お前はその身を以て、その過ちを正せ。それしか認めぬ」
「あの、私、どんな過ちを犯したのでしょう? どうかどんな罰でも受けますから、それを教えて頂けませんか? 陛下」
「お前は儂の嫉妬を煽った」
 レイティアは言われた事の意味を上手く消化できない。
「⁇    嫉妬⁇    ですか⁇」
「懇切丁寧に説明してやる気はない。責苦を受けよ」
 アナバスはレイティアの顎を掴み持ち上げる。
 そして軽く唇に口付け、一旦離し、もう一度、今度は濃厚なキスをする。
 アナバスの舌がレイティアの舌に絡みつき、吸い付く。
 初めての事に驚愕し、戸惑うレイティアは何も考える事が出来なかった。ただただされるがままにアナバスの舌が自分の舌を犯す事を許してしまった。
 長く濃厚なキスがやっと終わる。
 唇が離されて見つめ合うと、自分のされた事の意味を漸く理解する。

 ゆるゆると恥辱の感情が湧き上がる。
「……あ、あの、私……、あの……」
 顔はすっかり赤く火照る。
 レイティアは俯きたいが、顎を掴まれてそれは叶わない。
 自分が今から何をされるのか、アナバスが言った、『嫉妬』の意味を理解した。
「あの……、ごめ」
 最後まで句を告げないまま、またアナバスはレイティアの舌を犯す。
 一旦唇を離し、指示を与える。
「儂のする様に、お前も舌を這わせろ」
 返事をする間も与えてもらえずに、また唇を奪われて、舌を犯される。
 命じられた通りにアナバスのする様に舌を這わせ、アナバスの舌に必死に吸い付く。
 レイティアにはまだこれが何故『良い』のかわからない。
 ただ、アナバスに満足して欲しくて必死に応えた。
 舌を離し、唇が再び解放される。
 粗く息をする。呼吸を忘れるほど必死に舌を這わせた。
 アナバスはレイティアのドレスに手をかける。
「……お前は儂の妻だ。濫りに他所の男を魅了するな」
「……っ!陛下! 誤解です! 私、誘惑なんてしてません!」
 レイティアはあらぬ誤解を解く為に必死に訴える。
 アナバスはレイティアのドレスの飾りボタンになった背中のボタンを着々と外していく。
「誘惑とは言っておらん。魅了と言っておる」
「同じ事ではないのですか?」
 ドレスを剥ぎ取られ、コルセットと下着姿になるレイティア。
 レイティアの背後に回り、背中のコルセットの編み上げた紐を手早く取り去る。
 ペティコートの紐も解いてしまう。
 レイティアは上半身を裸に、下半身には太腿まで履くストッキングと局部を隠すだけの下着をつけただけのあられもない姿になった。
「同じではない。もう解らなくても良い。お前は責苦を受けるしかない」
 両手で双丘を隠すレイティア。
 アナバスは背後からレイティアの両腕を掴む。
 そして腕を開かせその双丘を露わにさせた。
 レイティアの耳輪を喰む。
 レイティアはぞくりと悪寒にも似た感触を味わう。
 その悪寒はアナバスが首筋に吸い付いた時にも同じ様に感じる。
「……っぁ……、あ、陛下……あの、くすぐったいです……」
 後ろから回されたアナバスの手が手首を離れて、二つの膨らみの方へと向かう。
 両の手は膨らみを掴み、優しく揉みしだいていく。
「……っ……ん……」
 先端のピンク色の蕾をクイっと摘み上げられる。
 するとピクンと小さく身体が跳ねた。
 レイティア自身の意志ではない。
 アナバスを見上げるといつも自分に向ける加虐の顔をしていた。
 その顔を見て、レイティアは更に恥辱感に塗れた。
「あ、あの……陛下……私、こういう事、キチンと習っていないんです……。ですから……どうか……」
 アナバスはレイティアの耳元で囁く。
「そうか。ならば儂が全て教えてやる。お前は儂に従っていれば良い」
 首筋にキスをされる度に悪寒の様な感覚がレイティアを襲う。
 一緒に蕾を摘まれて指先で捏ねられると、身体がピクンと反応してしまう。
 その感覚がなんなのかよくわからないまま、アナバスにされるがままになる。
 レイティアの肩を掴み、向かい合わせる。
 顔を赤く染め、瞳を潤ませて、自分を見つめる、あられもない姿のレイティア。
 その姿に我慢ならず、ベッドに押し倒す。
「……レイティア、お前にはわからぬだろう。一年、こうしたい衝動に駆られ、耐えて来た儂の気など。その上今更になって他の男を魅了しおって。泣いても叫んでも、もう許してやらぬ」
「……名前でお呼びした事……それ程にお怒りですか?」
 レイティアは消え入りそうな声で訊ねた。
「ああ、怒り心頭だ」
「…………陛下?私には一つ、秘密があります」
「秘密?」
「……本当は生涯、誰にも言っちゃダメな事なのです……。伴侶となる人にも言わない事を推奨される事なのです…」
「……」
「私達シビディア大陸の純血の民は、神獣と自身の魂とで契約をします。その時、誰にも内緒の、神獣とだけ共有する名前をつけるんです。私が自分の魂につけた名前は……」
 レイティアは上半身を起こし、アナバスの耳元に唇を寄せる。
 小さく、他の誰にも決して聞こえない位の小さな声で囁く。
「アナティアリアス」
 レイティアは上半身をベッドに預けた。
 そしてアナバスをじっと見つめ、優しく微笑んだ。
「陛下……いえ、アナバス様。二人だけの秘密ですよ? この名で、決して呼ばないで下さいね?」

 自身の最大の秘密を捧げて、アナバスへの忠誠の誓いとした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

処理中です...