84 / 200
84
しおりを挟む
今夜は賓客を招いての晩餐会。
夕方から用意を始め、薄い青色の総レースに中地がベージュの落ち着いたドレスを着せてもらう。
ドレスに合わせて、産出量世界一のグリムヒルトが誇る藍石の装飾品を身につける。
髪はアップで青い花の髪飾りを飾ってくれた。
各国の賓客との食事なので、やっぱり緊張する。
特に今回は女性の出席者は私だけなので、どう振る舞えばいいのか正直よくわからない。
笑顔で、不快にさせる事だけは無い様にしなきゃ。
私の発言は国の発言。
国を背負う事。
その行い全てが陛下に影響する。
決して陛下の不利益になってはいけない。
多分、こういう緊張は私が正妃である以上ずっと向き合うんだろう。
いつか慣れて来るんだろうか?
というよりも、慣れなきゃいけないんだろう。
時間になって、陛下と一緒に1階の大広間に行く。陛下に手を取られて、エスコートされながら歩いてお話をする。
今日はずっと人と会っていて、陛下のご機嫌はあまり良くない。
と、言っても他の人にはわからないらしいので、多分問題ない。
「陛下、お疲れですか?」
「ああ。そろそろ辛抱ならん」
「明日には皆様帰路に着かれますから、どうぞ今夜だけ、ご辛抱下さいね」
「お前が横におるなら今しばらく辛抱してやろう」
私の手を取った陛下は、手の甲にキスを落とす。
私はやっぱり赤くなる。
「お前はやはり可愛いな。今日の装いも似合っておる」
「陛下はやはり軍服が一番お似合いで素敵です」
「儂はこれがせめて気楽で良いから着ておるだけだ。あまり華美なものは好かん」
今日の陛下も黒の軍服に深紅のマントを羽織っている。
これが一番陛下には似合ってると思う。
というよりも、一番陛下らしい気がする。
「……もしかして私は地味だから、陛下にお気に召して頂けたのでしょうか?」
今の陛下のお言葉になんとなく思い至った事を口に出した。
陛下が目を見開いて私の顔をまじまじと見た。
そして、くつくつと笑い出す。
「なかなか王妃は面白い事を言う。これは愉快だ。ふむ、これは気分も上々だ。……だが、儂がお前を寵愛するのは無論地味だからではないぞ?」
陛下のご機嫌が直ったので一安心だけど、そんなに可笑しかったかしら?
私は真面目に聞いたのだけれど……。
「お前はお前が思っておる以上に可愛いぞ、レイティアよ」
「陛下にそう思って頂けるなら、これ以上の僥倖はございませんね」
私はそう言って陛下に笑んだ。
「さて、王妃に気分も上げられたからな。最後の一仕事をするか」
「はい、陛下」
大広間に二人で入場する。
ジャハランカのコニー・アンブロシウス・ヘーグルンド公、
ボラオルーシのリシャルト・レンブラント・スメールデルス王弟殿下は既に先に入っておられた。
二人でご挨拶をする。
「お待たせした、ボラオルーシ王弟殿下、ヘーグルンド公」
「大変お待たせ致しました」
ボラオルーシ王弟殿下が口を開く。
「いえ、私は今来たばかりです」
ヘーグルンド公もそれに続く。
「私も今来たばかりですよ」
「今宵は皆様とゆるりとした晩餐をと思っておる。楽しんで行かれよ」
陛下がお二人に声をかける。
私はその横で微笑む。王妃モードで頑張ろう。
これは完全にお母様の猿真似なので、いつボロが出るかとヒヤヒヤする。
王妃としての立ち居振る舞いは私はお母様の振る舞いしか知らないのでとにかくお母様を踏襲する事を目指している。
お母様は官吏や諸侯自身だけでなく、その部下や家族の名前まで覚えていた。
グリムヒルトの官吏や諸侯の数はマグダラスよりずっと多いのでさすがにお母様の様に全員と家族に至るまで、とはいかないものの、
せめて本人とどんな事をしてる人なのかは覚えておこうと思った。
マグダラスは外交に関しては鎖国に近い状態だから、大して覚える事もないだろうけど、それでもお母様の事だ。
きっと外交相手の名前と家族とどんな功績のある人か完璧に覚えていたのだと思う。
私も振る舞いはお母様に敵わなくても、せめて覚えられる事は全部覚えておこうと頑張った。
その自信で少し位は王妃然としてられるだろう。
「どうぞ良き晩餐になります様に」
笑顔でお二人に声をかける。
ボラオルーシ王弟殿下は、式と夜会の時には正礼装で参加しておられたけど、今日は陛下と同じ様に軍服だ。
彼の紺青の髪色と同じ、紺青の軍服に白のパンツに長いブーツをお召しになってる。
正礼装よりもこちらの方が彼にはしっくりくる気がする。
ヘーグルンド公は式と同じ様に民族衣装を着ている。前回は青と緑を基調とした、複雑な刺繍の施された衣装を着ておられたけど、今回は深い紅と白を基調にした、とてもシンプルな刺繍の落ち着いた衣装だ。
挨拶をしている内にプトレド第二王子殿下と、ビアニア第七王子殿下も来られた。
「お待たせしてしまいました。グリムヒルト国王陛下、王妃陛下。それにボラオルーシ王弟殿下にヘーグルンド公も」
「大変お待たせしました、皆様」
プトレド第二王子殿下とビアニア第七王子殿下は二人して謝罪する。
「皆、今集まった所だ、問題はない。皆、掛けられよ」
陛下が皆様に着席を促す。
プトレド第二王子殿下は正礼装をキチンと着こなし、優雅な足取りで自分の席に着く。
その時、チラリと私を見て、薄く笑いかけた。
陛下はこれにほんの僅かだけ、眉を上げた。
ビアニア第七王子殿下も正礼装で、少し緊張した面持ちで着席した。
ボラオルーシ王弟殿下も、ヘーグルンド公も着席された。
その後、食事が始まって、他愛のない話を皆で始めて晩餐会は恙無く、平穏に終わった。
夕方から用意を始め、薄い青色の総レースに中地がベージュの落ち着いたドレスを着せてもらう。
ドレスに合わせて、産出量世界一のグリムヒルトが誇る藍石の装飾品を身につける。
髪はアップで青い花の髪飾りを飾ってくれた。
各国の賓客との食事なので、やっぱり緊張する。
特に今回は女性の出席者は私だけなので、どう振る舞えばいいのか正直よくわからない。
笑顔で、不快にさせる事だけは無い様にしなきゃ。
私の発言は国の発言。
国を背負う事。
その行い全てが陛下に影響する。
決して陛下の不利益になってはいけない。
多分、こういう緊張は私が正妃である以上ずっと向き合うんだろう。
いつか慣れて来るんだろうか?
というよりも、慣れなきゃいけないんだろう。
時間になって、陛下と一緒に1階の大広間に行く。陛下に手を取られて、エスコートされながら歩いてお話をする。
今日はずっと人と会っていて、陛下のご機嫌はあまり良くない。
と、言っても他の人にはわからないらしいので、多分問題ない。
「陛下、お疲れですか?」
「ああ。そろそろ辛抱ならん」
「明日には皆様帰路に着かれますから、どうぞ今夜だけ、ご辛抱下さいね」
「お前が横におるなら今しばらく辛抱してやろう」
私の手を取った陛下は、手の甲にキスを落とす。
私はやっぱり赤くなる。
「お前はやはり可愛いな。今日の装いも似合っておる」
「陛下はやはり軍服が一番お似合いで素敵です」
「儂はこれがせめて気楽で良いから着ておるだけだ。あまり華美なものは好かん」
今日の陛下も黒の軍服に深紅のマントを羽織っている。
これが一番陛下には似合ってると思う。
というよりも、一番陛下らしい気がする。
「……もしかして私は地味だから、陛下にお気に召して頂けたのでしょうか?」
今の陛下のお言葉になんとなく思い至った事を口に出した。
陛下が目を見開いて私の顔をまじまじと見た。
そして、くつくつと笑い出す。
「なかなか王妃は面白い事を言う。これは愉快だ。ふむ、これは気分も上々だ。……だが、儂がお前を寵愛するのは無論地味だからではないぞ?」
陛下のご機嫌が直ったので一安心だけど、そんなに可笑しかったかしら?
私は真面目に聞いたのだけれど……。
「お前はお前が思っておる以上に可愛いぞ、レイティアよ」
「陛下にそう思って頂けるなら、これ以上の僥倖はございませんね」
私はそう言って陛下に笑んだ。
「さて、王妃に気分も上げられたからな。最後の一仕事をするか」
「はい、陛下」
大広間に二人で入場する。
ジャハランカのコニー・アンブロシウス・ヘーグルンド公、
ボラオルーシのリシャルト・レンブラント・スメールデルス王弟殿下は既に先に入っておられた。
二人でご挨拶をする。
「お待たせした、ボラオルーシ王弟殿下、ヘーグルンド公」
「大変お待たせ致しました」
ボラオルーシ王弟殿下が口を開く。
「いえ、私は今来たばかりです」
ヘーグルンド公もそれに続く。
「私も今来たばかりですよ」
「今宵は皆様とゆるりとした晩餐をと思っておる。楽しんで行かれよ」
陛下がお二人に声をかける。
私はその横で微笑む。王妃モードで頑張ろう。
これは完全にお母様の猿真似なので、いつボロが出るかとヒヤヒヤする。
王妃としての立ち居振る舞いは私はお母様の振る舞いしか知らないのでとにかくお母様を踏襲する事を目指している。
お母様は官吏や諸侯自身だけでなく、その部下や家族の名前まで覚えていた。
グリムヒルトの官吏や諸侯の数はマグダラスよりずっと多いのでさすがにお母様の様に全員と家族に至るまで、とはいかないものの、
せめて本人とどんな事をしてる人なのかは覚えておこうと思った。
マグダラスは外交に関しては鎖国に近い状態だから、大して覚える事もないだろうけど、それでもお母様の事だ。
きっと外交相手の名前と家族とどんな功績のある人か完璧に覚えていたのだと思う。
私も振る舞いはお母様に敵わなくても、せめて覚えられる事は全部覚えておこうと頑張った。
その自信で少し位は王妃然としてられるだろう。
「どうぞ良き晩餐になります様に」
笑顔でお二人に声をかける。
ボラオルーシ王弟殿下は、式と夜会の時には正礼装で参加しておられたけど、今日は陛下と同じ様に軍服だ。
彼の紺青の髪色と同じ、紺青の軍服に白のパンツに長いブーツをお召しになってる。
正礼装よりもこちらの方が彼にはしっくりくる気がする。
ヘーグルンド公は式と同じ様に民族衣装を着ている。前回は青と緑を基調とした、複雑な刺繍の施された衣装を着ておられたけど、今回は深い紅と白を基調にした、とてもシンプルな刺繍の落ち着いた衣装だ。
挨拶をしている内にプトレド第二王子殿下と、ビアニア第七王子殿下も来られた。
「お待たせしてしまいました。グリムヒルト国王陛下、王妃陛下。それにボラオルーシ王弟殿下にヘーグルンド公も」
「大変お待たせしました、皆様」
プトレド第二王子殿下とビアニア第七王子殿下は二人して謝罪する。
「皆、今集まった所だ、問題はない。皆、掛けられよ」
陛下が皆様に着席を促す。
プトレド第二王子殿下は正礼装をキチンと着こなし、優雅な足取りで自分の席に着く。
その時、チラリと私を見て、薄く笑いかけた。
陛下はこれにほんの僅かだけ、眉を上げた。
ビアニア第七王子殿下も正礼装で、少し緊張した面持ちで着席した。
ボラオルーシ王弟殿下も、ヘーグルンド公も着席された。
その後、食事が始まって、他愛のない話を皆で始めて晩餐会は恙無く、平穏に終わった。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
人形な美貌の王女様はイケメン騎士団長の花嫁になりたい
青空一夏
恋愛
美貌の王女は騎士団長のハミルトンにずっと恋をしていた。
ところが、父王から60歳を超える皇帝のもとに嫁がされた。
嫁がなければ戦争になると言われたミレはハミルトンに帰ってきたら妻にしてほしいと頼むのだった。
王女がハミルトンのところにもどるためにたてた作戦とは‥‥
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる