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76、2ヶ月前
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「そういう訳で、あの男は本気を出していない。なので私の勝ちとは言い難い」
へリュ様は不愉快そうな顔でそう言った。
「私の顔を立てる為にわざとあそこで負けたと兵士達の間で噂される様になった。あそこで剣を取り落とすなど不自然極まりないと」
「アナバス様は負けてなお、そんな風に言われているのですか……」
「事実、わざと落としたからな。
あの男の軍人からの支持はそれで不動のものになったと言ってもいい」
私はなんとなく、皆が誤解してる様な気がした。
でも本当の所は結局、陛下の中にしかない事なので思案をやめる。
「あの店だ」
へリュ様が指差す方向に、『睦屋』があった。
店に入ると商品が所狭しと色々展示されている。
このお店は主に船乗りや兵士や軍人の恋人や夫や妻に船旅の安全や、戦いの勝利を願った玉を紐で編み込んだ御守りを売っている。
やはり航海の安全を願うので藍石はこの国では特に人気があるらしい。
グリムヒルトの船乗りや兵士や軍人は、服の帯や帯刀ベルトや剣の鞘にこの御守りをよく付けているし、これがついてる人は既婚だったり恋人がいる人だとすぐにわかる。
紐の種類や色、編み方なんかも千差万別色々な種類があるので迷ってしまう。
器用に不揃いの玉を連座して紐で編み込んでいるものもあって、どれにしようか本当に迷う。
散々見て回って私は薄い緑と白の紐で編み込んである鷹眼石と琥珀と天河石の御守りを手に取る。
うん、これがいいな。
きっとあまり派手なものはお好きではないから、この位の色目の物がいいだろう。
石の意味は守護と癒し、そして希望。
それともう二つ、
赤と黄色の紐で血石と鷹眼石を編み込んである御守りと、
黒と青の紐で血石と鷹眼石を編み込んである御守りを一緒に買う。
剣士と軍人さんには血石を贈るのがいいらしいので勇敢と守護の石を選ぶ。
その3つを買い求めてそれらを別々に包んで貰った。
基本的にこの店は贈答品を扱っているので包装も凝っていて、特別なものは木箱に納めてくれる。
貧乏性の私の割には結構奮発した。
「長々と付き合って頂いてありがとうございます、へリュ様。お陰でとても良い買い物ができました」
へリュ様は薄く笑う。
「それならよかった」
「それで、これはそのお礼なんですけど……」
先程買い求めた、赤と黄色の御守りの入った木箱を渡す。
「……私に?」
「はい。ご武運をお祈りして。ご迷惑でなければ、闘いの共にして頂けると嬉しいです」
「……有り難く頂戴する」
「帯刀ベルトとか色々考えたのですけど、そういうものは馴染んだものの方が良いのだろうと思いますし、これなら闘いの邪魔にはならないと思いました」
「御配慮、感謝する」
にこりと笑いかけるとへリュ様も柔らかく笑いかけて下さった。
へリュ様は不愉快そうな顔でそう言った。
「私の顔を立てる為にわざとあそこで負けたと兵士達の間で噂される様になった。あそこで剣を取り落とすなど不自然極まりないと」
「アナバス様は負けてなお、そんな風に言われているのですか……」
「事実、わざと落としたからな。
あの男の軍人からの支持はそれで不動のものになったと言ってもいい」
私はなんとなく、皆が誤解してる様な気がした。
でも本当の所は結局、陛下の中にしかない事なので思案をやめる。
「あの店だ」
へリュ様が指差す方向に、『睦屋』があった。
店に入ると商品が所狭しと色々展示されている。
このお店は主に船乗りや兵士や軍人の恋人や夫や妻に船旅の安全や、戦いの勝利を願った玉を紐で編み込んだ御守りを売っている。
やはり航海の安全を願うので藍石はこの国では特に人気があるらしい。
グリムヒルトの船乗りや兵士や軍人は、服の帯や帯刀ベルトや剣の鞘にこの御守りをよく付けているし、これがついてる人は既婚だったり恋人がいる人だとすぐにわかる。
紐の種類や色、編み方なんかも千差万別色々な種類があるので迷ってしまう。
器用に不揃いの玉を連座して紐で編み込んでいるものもあって、どれにしようか本当に迷う。
散々見て回って私は薄い緑と白の紐で編み込んである鷹眼石と琥珀と天河石の御守りを手に取る。
うん、これがいいな。
きっとあまり派手なものはお好きではないから、この位の色目の物がいいだろう。
石の意味は守護と癒し、そして希望。
それともう二つ、
赤と黄色の紐で血石と鷹眼石を編み込んである御守りと、
黒と青の紐で血石と鷹眼石を編み込んである御守りを一緒に買う。
剣士と軍人さんには血石を贈るのがいいらしいので勇敢と守護の石を選ぶ。
その3つを買い求めてそれらを別々に包んで貰った。
基本的にこの店は贈答品を扱っているので包装も凝っていて、特別なものは木箱に納めてくれる。
貧乏性の私の割には結構奮発した。
「長々と付き合って頂いてありがとうございます、へリュ様。お陰でとても良い買い物ができました」
へリュ様は薄く笑う。
「それならよかった」
「それで、これはそのお礼なんですけど……」
先程買い求めた、赤と黄色の御守りの入った木箱を渡す。
「……私に?」
「はい。ご武運をお祈りして。ご迷惑でなければ、闘いの共にして頂けると嬉しいです」
「……有り難く頂戴する」
「帯刀ベルトとか色々考えたのですけど、そういうものは馴染んだものの方が良いのだろうと思いますし、これなら闘いの邪魔にはならないと思いました」
「御配慮、感謝する」
にこりと笑いかけるとへリュ様も柔らかく笑いかけて下さった。
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