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今日の夕食は一人だ。
いつもなら上座に陛下がいるけれど、今日は晩餐会に出ているので、私はいつもの席に一人でいる。
そういえば、この国に来て初めて夕食を一人で食べている気がする。
いつも必ず陛下と一緒だった。
この国に来てから寂しいと感じた事はなかったことに今更気がつく。
ずっと陛下が気遣ってくれていたのかもしれない。
本当に今更こんな事に気がつくなんて、私は鈍い。
思えばこの一年、色々な事があったなぁ。
太公様に可愛がって頂いて、その太公様が亡くなって……。
御追従を止めて貰う為に朝議に乗り込んだりした。
太公様の御遺言で私は陛下の正妃になる事になった。
太公様があんなに私の為に心を砕いて下さった事に感謝してもしきれない。
正妃という身分が欲しかった訳ではないけど、正妃でなければ出来ない事もあるはずだから戴いた以上は頑張って務めよう。
それから、アガターシェの騒動があった……。
あの麻薬は本当に怖かった。襲われたりしたけど、それよりも陛下のお怒り様の方が実は今もずっと心に残っている。
あんな陛下を見てしまったら、自分の身の安全は自分だけの事じゃないんだと改めて気がついた。
今後は御心配おかけしない様にしないと。
レニタ様の想いもとても切なかった。長らく妾妃として陛下を支えて来た事が彼女にとっては重く苦しい事だったんだと思うと、
もし自分もそういう立場に立った時、同じ様に思うのか、恐ろしくもあった。
いつかご寵愛を失って、一人になってしまった時、私は陛下を見つめていられるだろうか?
他の誰かを愛している陛下を見つめている事はどれだけ苦しい事だろう。
それは多分、いつか起こり得ると思って覚悟しなきゃならない事だと思う。
そうなっても、私は臣下として陛下を支えていく。
そういう覚悟をしなきゃならない。
決意を新たにした。
プストにも出かけた。
プストは町中に音楽が溢れていてとても不思議な格好をしてる人がいっぱいいて、幻想的なお祭りだった。
あんなに大きなお祭りは初めてで、また行ってみたいとお願いしてしまいそうだ。
セオ島にも行った。
欲に目が眩んだ人の醜さがよく見えた。
多分これから先もあんな風に不正を働く人を見つけては処断しなくてはいけないんだろう。
きっとそういう事の繰り返しだ。
セオ島もまた視察に行かなきゃいけない。
今年は私は成人したその月に正妃になる。
グリムヒルトの目下の問題はヴィンザンツ大陸のサンドバル帝国との戦争だと宰相様が教えてくれた。
でもそれ以外にもオルシロン共和国がシビディア王国との間にある小国郡に純血の保護と主権を守ると同盟に参加を呼びかけ、強引な手段も取ってるらしい。
シビディア王国はその手法に異を唱えて、緊張した状態が続いている。
モトキス王国やその北方にあるアトンブルク教国は今の所目立った動きはないけど、それでもきっとグリムヒルトととしてはその動向をしっかり把握して何かあってもすぐに対応出来なきゃいけないだろう。
私にできる事は少ないんだろうけど、この国の正妃として、陛下のお役に立つよう務めなきゃ。
黙々と食事に手を付けていく。
今日はいつもより豪勢だ。
きっと晩餐会で出されているものと同じものが出されているんだろう。
今頃同じ物を陛下も召し上がっているんだろうか……?
そして多分、今とても面倒だと思っていらっしゃるんだろうなぁと想像すると、なんだか陛下の事が少し恋しくなってしまった。
窓の外に浮かぶ月を眺めると、その銀色の光が陛下のお髪の色を思い出させて、なお一層、恋しくなった。
いつもなら上座に陛下がいるけれど、今日は晩餐会に出ているので、私はいつもの席に一人でいる。
そういえば、この国に来て初めて夕食を一人で食べている気がする。
いつも必ず陛下と一緒だった。
この国に来てから寂しいと感じた事はなかったことに今更気がつく。
ずっと陛下が気遣ってくれていたのかもしれない。
本当に今更こんな事に気がつくなんて、私は鈍い。
思えばこの一年、色々な事があったなぁ。
太公様に可愛がって頂いて、その太公様が亡くなって……。
御追従を止めて貰う為に朝議に乗り込んだりした。
太公様の御遺言で私は陛下の正妃になる事になった。
太公様があんなに私の為に心を砕いて下さった事に感謝してもしきれない。
正妃という身分が欲しかった訳ではないけど、正妃でなければ出来ない事もあるはずだから戴いた以上は頑張って務めよう。
それから、アガターシェの騒動があった……。
あの麻薬は本当に怖かった。襲われたりしたけど、それよりも陛下のお怒り様の方が実は今もずっと心に残っている。
あんな陛下を見てしまったら、自分の身の安全は自分だけの事じゃないんだと改めて気がついた。
今後は御心配おかけしない様にしないと。
レニタ様の想いもとても切なかった。長らく妾妃として陛下を支えて来た事が彼女にとっては重く苦しい事だったんだと思うと、
もし自分もそういう立場に立った時、同じ様に思うのか、恐ろしくもあった。
いつかご寵愛を失って、一人になってしまった時、私は陛下を見つめていられるだろうか?
他の誰かを愛している陛下を見つめている事はどれだけ苦しい事だろう。
それは多分、いつか起こり得ると思って覚悟しなきゃならない事だと思う。
そうなっても、私は臣下として陛下を支えていく。
そういう覚悟をしなきゃならない。
決意を新たにした。
プストにも出かけた。
プストは町中に音楽が溢れていてとても不思議な格好をしてる人がいっぱいいて、幻想的なお祭りだった。
あんなに大きなお祭りは初めてで、また行ってみたいとお願いしてしまいそうだ。
セオ島にも行った。
欲に目が眩んだ人の醜さがよく見えた。
多分これから先もあんな風に不正を働く人を見つけては処断しなくてはいけないんだろう。
きっとそういう事の繰り返しだ。
セオ島もまた視察に行かなきゃいけない。
今年は私は成人したその月に正妃になる。
グリムヒルトの目下の問題はヴィンザンツ大陸のサンドバル帝国との戦争だと宰相様が教えてくれた。
でもそれ以外にもオルシロン共和国がシビディア王国との間にある小国郡に純血の保護と主権を守ると同盟に参加を呼びかけ、強引な手段も取ってるらしい。
シビディア王国はその手法に異を唱えて、緊張した状態が続いている。
モトキス王国やその北方にあるアトンブルク教国は今の所目立った動きはないけど、それでもきっとグリムヒルトととしてはその動向をしっかり把握して何かあってもすぐに対応出来なきゃいけないだろう。
私にできる事は少ないんだろうけど、この国の正妃として、陛下のお役に立つよう務めなきゃ。
黙々と食事に手を付けていく。
今日はいつもより豪勢だ。
きっと晩餐会で出されているものと同じものが出されているんだろう。
今頃同じ物を陛下も召し上がっているんだろうか……?
そして多分、今とても面倒だと思っていらっしゃるんだろうなぁと想像すると、なんだか陛下の事が少し恋しくなってしまった。
窓の外に浮かぶ月を眺めると、その銀色の光が陛下のお髪の色を思い出させて、なお一層、恋しくなった。
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