人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

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 今日は新年の儀式で陛下は一日中忙しくされてるので私は侍女達と大人しく部屋で過ごしている。
 来年の新年は陛下と一緒に一日儀式に晩餐にと忙しくするのだろう。
 今年が多分最後のゆったりとした新年だ。
 とは言っても新年を静かに過ごしたのなんて初めてかもしれない。
 マグダラスの新年は神獣に祈りを捧げる。
 朝から昼過ぎまで続けて、あとは王族のみで新年を祝う晩餐があった。
 グリムヒルトの様に諸侯、官吏まで集まって大々的に晩餐会を開いたりしない。
 マグダラスの場合、お国事情もあるのだろうけど。
「レーナ、パウラ、オルティ、そろそろおやつの時間ですね。少し休憩しましょう」
 今日の私付き担当はこの3人。
 この3人はとてもセンスが良いのでお願い事を頼んでいる最中だ。
「そうですね、姫様。お茶の準備を致しますね」パウラが言う。パウラはお茶の準備を進める為、一礼して部屋を出ていく。
「やはり、皆の意見はこのスターエメラルドが一番良いと一致しましたね」
 オルティは色々と並んだ宝物ほうもつを前に腕組みしている。
「やはりそうですよね」
 最近、セオ鉱山で採れたスターエメラルドを貴重なものだからとヤルンバリさんがわざわざ取り置いて送ってくれた。
「私もそういった貴重なものは陛下に献上するのが一番良いと思うんですよね」
 こういうものはちゃんと国庫に入れて、保管してもらってる方が安全だし手入れだって行き届く。
「だったらやはりブレスレッドに加工されるのが一番かと思います」
 レーナが口添える
「でもそれじゃ陛下のお誕生日には間に合いませんね」
「原石で差し上げるのは失礼になりますか?」私は二人に質問する。
「そういった献上物も過去にはあった事も有りますよ。ただそういった物は800カラット相当の大きさの物だった様に記憶してます」
 レーナが答えてくれる。
 800カラット! そんな大きな宝石あるのね! 私には想像もつかない……。
「とにかく宝石彫刻師に依頼だけしてみましょうか?」
「そうですね。問い合わせだけでもしてみましょう」
「畏まりました」
 そう言ってレーナも一礼して出て行く。

 オルティと二人きりになる。オルティは苦笑いしながら言った。
「陛下のお誕生日で公式に差し上げる物をお選びするのは大変ですね」
「本当に。国の見栄えを考えたら変な物は差し上げられないですからね。太公様のご遺産をお返しする良いチャンスなのかもしれませんけど」
 私も一緒に苦笑いしながら答えた。
「でもきっと陛下はどんな物を贈られても喜ばれると思います。だって、あんなに姫様をご寵愛なさっているのですから」
「公式に差し上げる物は皆が贈る物だから、深い意味はないと思うんですけど」
 オルティはニヤニヤと笑う。
「あら?もしかして公式な物ではない別の物をお贈りになるのですか?」
 私は口元に人差し指を当てる。
「……内緒ですよ?」
 オルティはにこりと笑って心得顔で言う。
「まぁ、きっとお喜びになられますよ」
 本当は陛下に、と言うよりアナバス様に差し上げる物だ。
 城下に降りてどんな物がいいか色々見て回りたい。
 パウラがお茶の準備を整えて戻って来た。
「姫様、お茶が入りますよ。」
「ありがとうございます。今日も皆んなで頂きましょう」
 丁度レーナも帰ってくる。
「姫様、打診はして参りましたがお返事頂けるのは明日になりそうです」
「そうですか。ご苦労様でした。レーナも一緒に頂きましょ」

 このひとときは私にとっては皆んなを知れるいい機会だったりする。
 自分の世話をしてくれる人達がどんな人なのかわかる事はとても大事な事だと思う。
「そういえばオルティはあの騎士の方とはどうなったの?」
 パウラがお菓子を摘みながらオルティに訊ねる。
「え⁈   ……何もありませんよ?そんなに親しくしてるわけではありませんから」
 オルティはしどろもどろで答える。
「あらオルティにはそんなお相手がいるんですか?」
「いや、それが姫様。何でもあちらから声をかけられて、アプローチを受けてるんですって!」
「そんなアプローチだなんて!ただ普通に声をかけて来られるだけで……」
 パウラとオルティが盛り上がっている所にレーナが頬に手を当てて言う。
「……この所、姫様付きの侍女達のそういう話をよく聞きますね。この間はカティもそんな様な事があったと」
「そうなのですか?」
「きっと御正妃様付きの侍女だから今の内に仲良くなっておこうという男性もいるのかもしれません」
「私に付いて貰っても特に得する事はないんですけどね」
 私は苦笑いする。
 オルティが言う。
「あら、そんな事はありませんよ?とても優しいご主人に仕えられて幸せです」
 パウラも笑ってその言葉に同意する。
「こうして一緒におやつを御相伴下さる主人なんて姫様だけですよ」
 レーナも続く。
「本当に。こんな御正妃様は他にいないでしょうね」
 皆んなに褒められてなんだかこそばゆい。
「ありがとうございます。でも私がこの方が気が楽だから合わせて貰ってるだけなんですけどね。だけど皆んな、もしステキな人が現れたら、遠慮なく言って下さいね。応援するから」
 レーナが言う。
「素敵な方なら問題ないけど、しっかりお相手の身元だけは確認するのよ、オルティ」
 オルティは真剣な顔になって返事する。
「はい! 万が一にも姫様に害があってはいけませんもんね」

 侍女三人は引き締まった顔で注意事項を確認していた。
 イーリスの件があってから、皆んなずっとこんな風に万全を期す様にしてくれている。
 私は本当に優秀な侍女達に守られてるんだなぁと改めて思った。
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