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太公様の葬儀を主宰する事になってしまった……。
陛下の重臣の皆さんが集まった執務室に呼ばれて、太公様の遺言状を読んでもらってビックリした。
一つは、太公様の葬儀は私が主宰する事。
一つは、その褒賞が太公様の全財産。
一つは、その功績を讃えて陛下の正妃になる事。
全部大変な事だ。
特に二つめに関しては必死に固辞したけれど、誰も認めてくれない……。
太公様の財産で一番価値があるものは、グリムヒルトの南の諸島群にある、鉱山のある小さな島。
その鉱山では海の色を凝縮した様な色のとても質の良いエメラルドが採れる。
太公様が個人の持ち物として持っている土地で、それらは本来なら陛下に受け継がれるものだ。
だから正妃に選んで頂いただけでも勿体ないからと言うけど、
「姫様に渡したいと太公様御自身が御遺言されてますし」
「褒賞を受け取って頂かない事には、グリムヒルトはケチな国だと言われてしまいます」
「陛下にだけは渡したくないって御遺言状から凄い圧がかかってますからね」
なんて口々に言う。
陛下までもが、「儂もそんなもの要らん」と言ってとり合ってくれない。
仕方がないので、お預かりしているという事で如何でしょうか? と言うけど、それも誰も受け入れてくれない。
結局頂くしかなくなってしまった。
こんな財産、生まれてこのかたずっと貧乏王国の王女だった私にはどうしたらいいのかわからない……。
……でも、こうして重臣の皆さんが集まった場所に呼んで頂くのは初めてだけど、
王の顔とも、私といる時ともまた違った陛下のお顔が見られた。
とてもリラックスされているし、皆さんの軽口も楽しんでいる様に見えて微笑ましかった。
「所で姫様」
宰相様が私の方を向く。
「儀宰の異動があります。新任はユッソ・タイスト・ハスという者です。儀礼に詳しい男ですよ」
なんとなく、思った事を言う
「……その方も海軍の軍人さんですか?」
宰相様がキョトンとした顔で首肯した。
「ええ、そうですよ。俺の部下です」
やっぱりそうなのか。
「やはりそうでしたか。宰相様の仰り様にどことなく親近感があったので。
とても信頼されてる部下の方なんですね」
「……そんなに顔に出ていましたか?」
宰相様は困った様な顔をして言う。
「いいえ。なんとなく、雰囲気で感じただけですよ」
その顔がなんとなく可笑しくなって笑ってしまった。
「姫様には嘘はつけなさそうですね。これは困ったな」
冗談めかして宰相様がそう言う。
「まぁ、御葬儀に関して姫様のご指示に添う様言ってありますから、どんどんこき使ってやって下さい」
「ありがとうございます。
……その儀式に関してなのですけど……
追従の役割は人形を使うという事にしたいのですけど、よろしいでしょうか?」
陛下が口を開く。
「人形か」
「はい。皆で人形を作って一緒に流すというのではいけないでしょうか?」
「構わぬ。好きにして良い」
「では、皆さんに人形を縫って貰える様にお願いします。
でしたら、流す舟も簡素な物になりますね。その分、花を飾ろうかと思います」
「花か……」
「追従に振舞われていた食事は酒席を設けて代わりとしたいです。多分、太公様のご意向に添うのではないかと思うんです。きっと、太公様もこの儀式には胸を痛めておられたのかもしれませんね……。」
「……あの爺が姫をとても可愛がっていた事はよくわかるな」
「ええ、本当に」
軍師様が首肯すると、
「我らは太公様の現役時代を存じておりますが、陛下に負けず劣らず厳しいお方でしたよ」
法相様までが同意する。
「えぇ⁉︎ ……確かに頑固な所はおありでしたけど……」
「それ以上に姫が頑固だという事だろう?」
陛下が笑い含んで言うと、皆さんも笑い出す。
……そうなのかしら?
陛下の重臣の皆さんが集まった執務室に呼ばれて、太公様の遺言状を読んでもらってビックリした。
一つは、太公様の葬儀は私が主宰する事。
一つは、その褒賞が太公様の全財産。
一つは、その功績を讃えて陛下の正妃になる事。
全部大変な事だ。
特に二つめに関しては必死に固辞したけれど、誰も認めてくれない……。
太公様の財産で一番価値があるものは、グリムヒルトの南の諸島群にある、鉱山のある小さな島。
その鉱山では海の色を凝縮した様な色のとても質の良いエメラルドが採れる。
太公様が個人の持ち物として持っている土地で、それらは本来なら陛下に受け継がれるものだ。
だから正妃に選んで頂いただけでも勿体ないからと言うけど、
「姫様に渡したいと太公様御自身が御遺言されてますし」
「褒賞を受け取って頂かない事には、グリムヒルトはケチな国だと言われてしまいます」
「陛下にだけは渡したくないって御遺言状から凄い圧がかかってますからね」
なんて口々に言う。
陛下までもが、「儂もそんなもの要らん」と言ってとり合ってくれない。
仕方がないので、お預かりしているという事で如何でしょうか? と言うけど、それも誰も受け入れてくれない。
結局頂くしかなくなってしまった。
こんな財産、生まれてこのかたずっと貧乏王国の王女だった私にはどうしたらいいのかわからない……。
……でも、こうして重臣の皆さんが集まった場所に呼んで頂くのは初めてだけど、
王の顔とも、私といる時ともまた違った陛下のお顔が見られた。
とてもリラックスされているし、皆さんの軽口も楽しんでいる様に見えて微笑ましかった。
「所で姫様」
宰相様が私の方を向く。
「儀宰の異動があります。新任はユッソ・タイスト・ハスという者です。儀礼に詳しい男ですよ」
なんとなく、思った事を言う
「……その方も海軍の軍人さんですか?」
宰相様がキョトンとした顔で首肯した。
「ええ、そうですよ。俺の部下です」
やっぱりそうなのか。
「やはりそうでしたか。宰相様の仰り様にどことなく親近感があったので。
とても信頼されてる部下の方なんですね」
「……そんなに顔に出ていましたか?」
宰相様は困った様な顔をして言う。
「いいえ。なんとなく、雰囲気で感じただけですよ」
その顔がなんとなく可笑しくなって笑ってしまった。
「姫様には嘘はつけなさそうですね。これは困ったな」
冗談めかして宰相様がそう言う。
「まぁ、御葬儀に関して姫様のご指示に添う様言ってありますから、どんどんこき使ってやって下さい」
「ありがとうございます。
……その儀式に関してなのですけど……
追従の役割は人形を使うという事にしたいのですけど、よろしいでしょうか?」
陛下が口を開く。
「人形か」
「はい。皆で人形を作って一緒に流すというのではいけないでしょうか?」
「構わぬ。好きにして良い」
「では、皆さんに人形を縫って貰える様にお願いします。
でしたら、流す舟も簡素な物になりますね。その分、花を飾ろうかと思います」
「花か……」
「追従に振舞われていた食事は酒席を設けて代わりとしたいです。多分、太公様のご意向に添うのではないかと思うんです。きっと、太公様もこの儀式には胸を痛めておられたのかもしれませんね……。」
「……あの爺が姫をとても可愛がっていた事はよくわかるな」
「ええ、本当に」
軍師様が首肯すると、
「我らは太公様の現役時代を存じておりますが、陛下に負けず劣らず厳しいお方でしたよ」
法相様までが同意する。
「えぇ⁉︎ ……確かに頑固な所はおありでしたけど……」
「それ以上に姫が頑固だという事だろう?」
陛下が笑い含んで言うと、皆さんも笑い出す。
……そうなのかしら?
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