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「儂の髪も乾かしてくれぬか?」
ドレッサーに座り、魔法で髪を乾かしていると陛下が寝室からやって来た。
「もちろんです。どうぞこちらにお座り下さい。」
私は私の座っていた椅子から降りて陛下に勧めた。
私の髪を梳かしてくれていたマリは部屋の出口前まで控える。
陛下がマリに言いつける。
「お前はもう良い。下がれ」
「はい、承知致しました」
マリはすぐに返事をして出て行く。
マリにおやすみなさいと告げるとマリもおやすみなさいませ、と答えてくれた。
「……侍女とは上手くやっている様だな」
陛下が椅子に腰掛けながら言う。
「はい。働き者で気が利きます。穏やかな性格で話しやすいし、とても良い子です」
陛下が訊ねる。
「そうか。……不自由は無いか?」
「無いですよ! 最初はグリムヒルトの王城はとても立派で落ち着かなかったのですけど、私は図太いらしく、ずいぶん慣れて快適に過ごしています」
本当にそうだ。
最初は気後れしていたこの王城も今では慣れてしまった。
陛下や太公様に色々気を揉んで頂いてるからか、すっかり自分の家の様な気持ちになってしまっている。
「それは上々だ。……何かあればすぐに言え」
私は陛下の後ろに立って、鏡越しに返事した。
「はい! ありがとうございます」
陛下のお心遣いが嬉しくなって、なんだかにやにやしてしまってる気がする……
もしそんな顔をしていたら恥ずかしいので、話を逸らす。
「さぁ、陛下のお髪を乾かしますね。」
普段三つ編みで纏めている髪は解かれて下ろされていた。
綺麗な銀色のお髪にウットリしてしまう。
「陛下のお髪は本当にお美しいですね……」
「そうか? 気にした事など無いがな。お前が気に入ったのならばよかった」
鏡越しに見た陛下はとても優しく笑んでいて、
私はなんだかとても気恥ずかしくなってしまって、俯いてしまった。
「……っで、では、お髪を乾かしますね!」
風魔法を展開する。
穏やかな風が陛下の髪を取り巻いて水滴を消し去り、髪が乾く。
「ふむ。魔法とは本当に面白いな。」
陛下が興味深そうに言う。
「こんな小さな魔法でもお役に立てて良かったです」
もっと魔力が高ければ、色々と陛下のお役に立てたかもしれないのに。
けれどまぁ、無いモノは仕方ない。
「このまま髪を梳いてくれぬか?」
「はい!」
ブラシを取って陛下の髪を梳かす。
乾いた陛下の髪はサラサラだった。
丁寧に梳かした後、陛下のお髪を整えて、いつもの様な三つ編みを編んだ。
「ふむ。良いな。これからは姫に頼もうか」
「私で良ければ、毎日陛下のお髪を整えさせて下さい」
陛下は振り返り、私を見上げて「頼む」と言って笑う。
いつもとは逆の視線の位置になんだか可笑しくなってしまった。
それから、これは二人きりの日課になった。
ドレッサーに座り、魔法で髪を乾かしていると陛下が寝室からやって来た。
「もちろんです。どうぞこちらにお座り下さい。」
私は私の座っていた椅子から降りて陛下に勧めた。
私の髪を梳かしてくれていたマリは部屋の出口前まで控える。
陛下がマリに言いつける。
「お前はもう良い。下がれ」
「はい、承知致しました」
マリはすぐに返事をして出て行く。
マリにおやすみなさいと告げるとマリもおやすみなさいませ、と答えてくれた。
「……侍女とは上手くやっている様だな」
陛下が椅子に腰掛けながら言う。
「はい。働き者で気が利きます。穏やかな性格で話しやすいし、とても良い子です」
陛下が訊ねる。
「そうか。……不自由は無いか?」
「無いですよ! 最初はグリムヒルトの王城はとても立派で落ち着かなかったのですけど、私は図太いらしく、ずいぶん慣れて快適に過ごしています」
本当にそうだ。
最初は気後れしていたこの王城も今では慣れてしまった。
陛下や太公様に色々気を揉んで頂いてるからか、すっかり自分の家の様な気持ちになってしまっている。
「それは上々だ。……何かあればすぐに言え」
私は陛下の後ろに立って、鏡越しに返事した。
「はい! ありがとうございます」
陛下のお心遣いが嬉しくなって、なんだかにやにやしてしまってる気がする……
もしそんな顔をしていたら恥ずかしいので、話を逸らす。
「さぁ、陛下のお髪を乾かしますね。」
普段三つ編みで纏めている髪は解かれて下ろされていた。
綺麗な銀色のお髪にウットリしてしまう。
「陛下のお髪は本当にお美しいですね……」
「そうか? 気にした事など無いがな。お前が気に入ったのならばよかった」
鏡越しに見た陛下はとても優しく笑んでいて、
私はなんだかとても気恥ずかしくなってしまって、俯いてしまった。
「……っで、では、お髪を乾かしますね!」
風魔法を展開する。
穏やかな風が陛下の髪を取り巻いて水滴を消し去り、髪が乾く。
「ふむ。魔法とは本当に面白いな。」
陛下が興味深そうに言う。
「こんな小さな魔法でもお役に立てて良かったです」
もっと魔力が高ければ、色々と陛下のお役に立てたかもしれないのに。
けれどまぁ、無いモノは仕方ない。
「このまま髪を梳いてくれぬか?」
「はい!」
ブラシを取って陛下の髪を梳かす。
乾いた陛下の髪はサラサラだった。
丁寧に梳かした後、陛下のお髪を整えて、いつもの様な三つ編みを編んだ。
「ふむ。良いな。これからは姫に頼もうか」
「私で良ければ、毎日陛下のお髪を整えさせて下さい」
陛下は振り返り、私を見上げて「頼む」と言って笑う。
いつもとは逆の視線の位置になんだか可笑しくなってしまった。
それから、これは二人きりの日課になった。
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