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自分でも自分を持て余している。
全ての事柄は自分が居なくても回る様に人を配置した。
自分は何もしなくて良い様にだ。
何故だか腹心である事に甘んじている重臣達は、其々が有能で自身で為政者である事を望めば幾らでもチャンスを作る事が出来る奴らだ。
そういう者達を重臣に置くのは、自分の寝首をかいてくれる事を期待したからだった。
しかしその誰もが儂の首を狙いには来ず、王である事を許し続けている。
故に儂は城の中で儂自身が必ず手を下さなければならない事など殆ど無い。
暴君だ凶王だ冷酷無比だと言われているのも当然だろう。
儂は国にも民にも一切興味がない。
そもそも、我々の祖先は海賊。
未だその気風だけを引きずるこのグリムヒルト王国の貴族達は、すっかり地に足を縛られ肝心な気概の方は一切失ってしまった。
ただただ無駄に海賊達が
見せしめや
秩序維持や
遊び半分で決めた風習を有難がって儀式だの伝統だのと律儀に守っている。
その海の民の度重なる横暴に逆らう気力を失っている、被支配層である原住の民達。
其奴らは儂の国であり、儂の民である訳だが、そういう者達を儂は庇護してやろうという気持ちは一切なかった。
その様な非道の王はサッサと誰かに首を落とされる訳だが、
有能な重臣達は叛逆をせず、
野にある有能な指導者が煽動する動きすら見せない。
寧ろ、有能な重臣達はその動きを察知すると芽吹く前に潰してしまっているのかもしれなかった。
それ自体、どうでもよかった。
それが今ではどうだ、
この儂が政務とやらを真面目にこなしている。
王の務めを果たし終えなければ、あの真っ直ぐな瞳が、真剣な眼差しで気持ちいい程の説教を寄越してくる。
その瞳の持ち主は隣国の王女であった、我が妻レイティアーーーー。
隣国の名はマグダラス。
この大陸の中で拮抗している勢力は大まかに原住民族と、我らの様な異民族。
マグダラスは原住の民が地の利の功で辛うじて護った小さな領土を維持する小国だ。
原住の民の大国はシビディア王国、オルシロン共和国があるが、この大陸を南北に縦断するゼルジア山脈のお陰で、小国のマグダラスは必要な支援を充分に受けられず、ほぼ鎖国に近い形で均衡を保ちつつ、何とか国の程を為している。
そのマグダラスの第一王女を攫うような形で連れて来た男がこちらを見てさも可笑しそうに笑う。
「陛下が真面目にご政務されている姿を、生きてる内に見られるとは思いませんでした。」
この男はこの国の軍師。名をヴィルヘルム・ラリ・ヴィルッキラ。
海戦での軍略、戦術でこの男の上を行ける者はこの世に何人といないだろう。
「笑っていろ」
軍師に一瞥もくれてやる事なく山と積まれた書類に目を通しサインする。
さっさと終わらせてレイティアの元へ行かねばならない。
この男の揶揄に付き合ってる暇など一秒もない。
レイティアが正式に嫁いで早ひと月。
儂はあれに驚くほど溺れている。
そしてそんな自分を持て余しているのだ。
「これはもう一度吟味しておけ。宰相に伝えろ。
ここで油を売ってるという事はさぞかし暇なのだろう?」
目を通した書類を軍師に突き出す。
「宰相殿は本当にお忙しいですからね。
今もどこにいるやら判りかねますが。
まあ、言付けくらいでしたら私でもお役に立てましょう」
「ならその一角の書類もだ。儂は終えた。戻る」
下らぬ政務のノルマはさっさと午前には終えた。
この時間ならばレイティアは図書の間にいる頃だ。
政務室を出て足早に図書の間に向かう。
出会ったその日から魅了されてやまない唯一無二の我妻の元へ。
全ての事柄は自分が居なくても回る様に人を配置した。
自分は何もしなくて良い様にだ。
何故だか腹心である事に甘んじている重臣達は、其々が有能で自身で為政者である事を望めば幾らでもチャンスを作る事が出来る奴らだ。
そういう者達を重臣に置くのは、自分の寝首をかいてくれる事を期待したからだった。
しかしその誰もが儂の首を狙いには来ず、王である事を許し続けている。
故に儂は城の中で儂自身が必ず手を下さなければならない事など殆ど無い。
暴君だ凶王だ冷酷無比だと言われているのも当然だろう。
儂は国にも民にも一切興味がない。
そもそも、我々の祖先は海賊。
未だその気風だけを引きずるこのグリムヒルト王国の貴族達は、すっかり地に足を縛られ肝心な気概の方は一切失ってしまった。
ただただ無駄に海賊達が
見せしめや
秩序維持や
遊び半分で決めた風習を有難がって儀式だの伝統だのと律儀に守っている。
その海の民の度重なる横暴に逆らう気力を失っている、被支配層である原住の民達。
其奴らは儂の国であり、儂の民である訳だが、そういう者達を儂は庇護してやろうという気持ちは一切なかった。
その様な非道の王はサッサと誰かに首を落とされる訳だが、
有能な重臣達は叛逆をせず、
野にある有能な指導者が煽動する動きすら見せない。
寧ろ、有能な重臣達はその動きを察知すると芽吹く前に潰してしまっているのかもしれなかった。
それ自体、どうでもよかった。
それが今ではどうだ、
この儂が政務とやらを真面目にこなしている。
王の務めを果たし終えなければ、あの真っ直ぐな瞳が、真剣な眼差しで気持ちいい程の説教を寄越してくる。
その瞳の持ち主は隣国の王女であった、我が妻レイティアーーーー。
隣国の名はマグダラス。
この大陸の中で拮抗している勢力は大まかに原住民族と、我らの様な異民族。
マグダラスは原住の民が地の利の功で辛うじて護った小さな領土を維持する小国だ。
原住の民の大国はシビディア王国、オルシロン共和国があるが、この大陸を南北に縦断するゼルジア山脈のお陰で、小国のマグダラスは必要な支援を充分に受けられず、ほぼ鎖国に近い形で均衡を保ちつつ、何とか国の程を為している。
そのマグダラスの第一王女を攫うような形で連れて来た男がこちらを見てさも可笑しそうに笑う。
「陛下が真面目にご政務されている姿を、生きてる内に見られるとは思いませんでした。」
この男はこの国の軍師。名をヴィルヘルム・ラリ・ヴィルッキラ。
海戦での軍略、戦術でこの男の上を行ける者はこの世に何人といないだろう。
「笑っていろ」
軍師に一瞥もくれてやる事なく山と積まれた書類に目を通しサインする。
さっさと終わらせてレイティアの元へ行かねばならない。
この男の揶揄に付き合ってる暇など一秒もない。
レイティアが正式に嫁いで早ひと月。
儂はあれに驚くほど溺れている。
そしてそんな自分を持て余しているのだ。
「これはもう一度吟味しておけ。宰相に伝えろ。
ここで油を売ってるという事はさぞかし暇なのだろう?」
目を通した書類を軍師に突き出す。
「宰相殿は本当にお忙しいですからね。
今もどこにいるやら判りかねますが。
まあ、言付けくらいでしたら私でもお役に立てましょう」
「ならその一角の書類もだ。儂は終えた。戻る」
下らぬ政務のノルマはさっさと午前には終えた。
この時間ならばレイティアは図書の間にいる頃だ。
政務室を出て足早に図書の間に向かう。
出会ったその日から魅了されてやまない唯一無二の我妻の元へ。
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