12 / 26
12、襲撃者
しおりを挟む
結局魔王は、そのまま一緒にクリームシチューを食べて帰った。
ヴァルミカルドには人間界の料理を食べさせてくれる店が多数ある。
天界の料理店も溢れていて、本格的な宮中料理から、ご家庭の味まで色々な店があって鎬を削っている。
そんな飽食に溢れている魔界なので別に人間界でご飯をご馳走になって帰る事もない。
まして魔王だ。命じれば幾らでも食べられるだろう。
そんな事を心の中で毒づきながらリルと風呂に入る。
湯船に二人で浸かっているとリルが問う。
「しゅうちゃん?ゆうちゃんあっちゃダメなの?」
「ああ。あのメスガキがどうにかなるまでな」
「メスガキ?」
「…あ~…お前の事嫌ってるガキだ」
「…あのこ…」
明らかにリルはしょぼくれた。
「そんな顔すんなって。笑ってろ」
リルの両頬を優しくつねってやる。
リルはシュバルツににへらと笑った。
子供同士で話し合ってどうにかなる様な雰囲気ではなかったが、
さすがに警察なんかに調べられるのはマズいだろう。
きっとクロエの事だ。クロエとリルの分は偽装身分証位用意してるだろう。
ただ、一緒にシュバルツの分も調べると言われたら非常に宜しくない。
シュバルツがここにいる事はイレギュラーな事だ。
当然だがシュバルツの分の身分証があるとは思えない。
シュバルツが襲撃しここに居着く事まで予測出来ていた筈ないからだ。
警察など呼ばれたら面倒臭い事この上ない。
「色々あるんだ。それが終わるまで辛抱してくれ」
「うん、わかったぁ」
リルはこういう時、大体聞き分けがいい。
わがままを言った事がない。
頭をぐりぐりと撫でてやるとリルは嬉しそうに笑った。
「あのね?きょうきたおにいさんは、またくるの?」
「あぁ…来るかもな。リルはあいつ好きか?」
「ん~…わかんない」
感応するリルが「わからない」のなら、魔王はリルを好きでも嫌いでもないのだろう。
やはり為政者だ。その心境を簡単には読み取らせない。
この日はリルを抱いて、一緒に眠る。
シュバルツにとって、もう既にこの時間は得難いほど幸福な時間になっていた。
スヤスヤと眠るリルはなんとも愛おしい。
それを邪魔する襲撃音。
ズドーンとエネルギー体をぶつけて来た馬鹿がいるらしい。
クロエの結界はかすり傷一つついていない様だ。
シュバルツはノロノロと服を着る。
眠るリルの横にクロエの贈ったウサギのぬいぐるみを置いた。
ウサギのぬいぐるみには僅かに魔力が帯びている。
きっとリルを守る何かがあるのだろう。
ベランダから外に出て、悪魔の姿になり、マンションの屋上へ飛ぶ。
「何か用か?」
ツノ無しの悪魔を複数従えたツノ有りの悪魔がシュバルツに問う。
「クロエを出せ」
ツノ有りの悪魔がシュバルツに言い放つ。
悪魔達はシュバルツを取り囲んだ。
「どんだけ恨み買ってるんだ、あいつは…」
シュバルツは頭を掻く。
「残念だが、あいつは留守だ」
「じゃあクロエの入れ上げてる女を出せ」
「そりゃ無理だ。あれは俺のご主人様でもあるからな」
「なんだそりゃ⁈弱っちい女だと聞いてるぞ⁈」
「ま、そりゃそうなるわな。とにかく渡せない。クロエのいる時に出直せよ」
「はいそうですかって訳に行くと思うか?庇い立てするならお前も殺す」
悪魔達はシュバルツにエネルギー体を放つ。
それを簡単な防御魔法陣で軽くいなす。
その隙にツノ有りの悪魔が数十の攻撃魔法陣を展開してシュバルツに放った。
シュバルツの防御魔法陣は丁度相殺される格好となった。
「…お前、なんでクロエに生かされたんだ?」
シュバルツはポツリと呟く様に訊ねる。
「奴隷どもを盾にして逃げたんだよ」
「…そうだろうなぁ~…」
クロエの割には間抜けな見逃しをしたもんだ…と、心の中で独りごちる。
シュバルツはツノ有りの悪魔に50の攻撃魔法陣を展開した。
「お前ならこの程度で充分だろう」
ツノ有りの悪魔は青ざめて十数個程度の防御魔法陣を展開している。
防御魔法陣はあっという間に焼き切れて消滅してしまう。
ツノ有りの悪魔は命乞いをする。
「た…たのむっ!助けてくれ!お前に従うから!」
「…お前は見逃してやってもリルを狙う。そういう野郎だ」
今クロエに復讐しようとしてる時点で、この悪魔は決して反省しないだろう。
万一こいつがリルを捕まえて、リルを殺しても悪びれもせず言うのだろう。
「弱い奴を殺して何が悪い」と。
こいつにしてみれば、不文律に従ったまでだ。
それが魔界のルールだ。
シュバルツは攻撃魔法陣に魔力をグッと込めた。
そして、命乞いをするツノ有りの悪魔を塵も遺さず消滅させた。
周りを取り囲んでいるツノ無しの悪魔達はたじろぎ、どうする事も出来ず戸惑っている。
「おい、お前ら、自力で魔界に帰れんのか?」
皆一様に首を縦に振った。
「だったら人間界で悪させずにさっさと帰れ」
更に首を縦に振り、彼らは散り散りに去っていった。
シュバルツは腰に手を当てて深く溜息をついた。
たったあれだけの戦力でクロエをどうにか出来ると思ってる方がどうかしてる。
クロエの強さは桁違いだ。
きっと魔界の歴史の中でも何本かの指に入るとかそういうレベルだ。
そんな伝説級の化け物を支配してしまうリルは本当に、
『最弱の支配者』に相応しいのかもしれない…
そうぼんやりと考えながら、ベランダから自分の部屋に戻った。
ヴァルミカルドには人間界の料理を食べさせてくれる店が多数ある。
天界の料理店も溢れていて、本格的な宮中料理から、ご家庭の味まで色々な店があって鎬を削っている。
そんな飽食に溢れている魔界なので別に人間界でご飯をご馳走になって帰る事もない。
まして魔王だ。命じれば幾らでも食べられるだろう。
そんな事を心の中で毒づきながらリルと風呂に入る。
湯船に二人で浸かっているとリルが問う。
「しゅうちゃん?ゆうちゃんあっちゃダメなの?」
「ああ。あのメスガキがどうにかなるまでな」
「メスガキ?」
「…あ~…お前の事嫌ってるガキだ」
「…あのこ…」
明らかにリルはしょぼくれた。
「そんな顔すんなって。笑ってろ」
リルの両頬を優しくつねってやる。
リルはシュバルツににへらと笑った。
子供同士で話し合ってどうにかなる様な雰囲気ではなかったが、
さすがに警察なんかに調べられるのはマズいだろう。
きっとクロエの事だ。クロエとリルの分は偽装身分証位用意してるだろう。
ただ、一緒にシュバルツの分も調べると言われたら非常に宜しくない。
シュバルツがここにいる事はイレギュラーな事だ。
当然だがシュバルツの分の身分証があるとは思えない。
シュバルツが襲撃しここに居着く事まで予測出来ていた筈ないからだ。
警察など呼ばれたら面倒臭い事この上ない。
「色々あるんだ。それが終わるまで辛抱してくれ」
「うん、わかったぁ」
リルはこういう時、大体聞き分けがいい。
わがままを言った事がない。
頭をぐりぐりと撫でてやるとリルは嬉しそうに笑った。
「あのね?きょうきたおにいさんは、またくるの?」
「あぁ…来るかもな。リルはあいつ好きか?」
「ん~…わかんない」
感応するリルが「わからない」のなら、魔王はリルを好きでも嫌いでもないのだろう。
やはり為政者だ。その心境を簡単には読み取らせない。
この日はリルを抱いて、一緒に眠る。
シュバルツにとって、もう既にこの時間は得難いほど幸福な時間になっていた。
スヤスヤと眠るリルはなんとも愛おしい。
それを邪魔する襲撃音。
ズドーンとエネルギー体をぶつけて来た馬鹿がいるらしい。
クロエの結界はかすり傷一つついていない様だ。
シュバルツはノロノロと服を着る。
眠るリルの横にクロエの贈ったウサギのぬいぐるみを置いた。
ウサギのぬいぐるみには僅かに魔力が帯びている。
きっとリルを守る何かがあるのだろう。
ベランダから外に出て、悪魔の姿になり、マンションの屋上へ飛ぶ。
「何か用か?」
ツノ無しの悪魔を複数従えたツノ有りの悪魔がシュバルツに問う。
「クロエを出せ」
ツノ有りの悪魔がシュバルツに言い放つ。
悪魔達はシュバルツを取り囲んだ。
「どんだけ恨み買ってるんだ、あいつは…」
シュバルツは頭を掻く。
「残念だが、あいつは留守だ」
「じゃあクロエの入れ上げてる女を出せ」
「そりゃ無理だ。あれは俺のご主人様でもあるからな」
「なんだそりゃ⁈弱っちい女だと聞いてるぞ⁈」
「ま、そりゃそうなるわな。とにかく渡せない。クロエのいる時に出直せよ」
「はいそうですかって訳に行くと思うか?庇い立てするならお前も殺す」
悪魔達はシュバルツにエネルギー体を放つ。
それを簡単な防御魔法陣で軽くいなす。
その隙にツノ有りの悪魔が数十の攻撃魔法陣を展開してシュバルツに放った。
シュバルツの防御魔法陣は丁度相殺される格好となった。
「…お前、なんでクロエに生かされたんだ?」
シュバルツはポツリと呟く様に訊ねる。
「奴隷どもを盾にして逃げたんだよ」
「…そうだろうなぁ~…」
クロエの割には間抜けな見逃しをしたもんだ…と、心の中で独りごちる。
シュバルツはツノ有りの悪魔に50の攻撃魔法陣を展開した。
「お前ならこの程度で充分だろう」
ツノ有りの悪魔は青ざめて十数個程度の防御魔法陣を展開している。
防御魔法陣はあっという間に焼き切れて消滅してしまう。
ツノ有りの悪魔は命乞いをする。
「た…たのむっ!助けてくれ!お前に従うから!」
「…お前は見逃してやってもリルを狙う。そういう野郎だ」
今クロエに復讐しようとしてる時点で、この悪魔は決して反省しないだろう。
万一こいつがリルを捕まえて、リルを殺しても悪びれもせず言うのだろう。
「弱い奴を殺して何が悪い」と。
こいつにしてみれば、不文律に従ったまでだ。
それが魔界のルールだ。
シュバルツは攻撃魔法陣に魔力をグッと込めた。
そして、命乞いをするツノ有りの悪魔を塵も遺さず消滅させた。
周りを取り囲んでいるツノ無しの悪魔達はたじろぎ、どうする事も出来ず戸惑っている。
「おい、お前ら、自力で魔界に帰れんのか?」
皆一様に首を縦に振った。
「だったら人間界で悪させずにさっさと帰れ」
更に首を縦に振り、彼らは散り散りに去っていった。
シュバルツは腰に手を当てて深く溜息をついた。
たったあれだけの戦力でクロエをどうにか出来ると思ってる方がどうかしてる。
クロエの強さは桁違いだ。
きっと魔界の歴史の中でも何本かの指に入るとかそういうレベルだ。
そんな伝説級の化け物を支配してしまうリルは本当に、
『最弱の支配者』に相応しいのかもしれない…
そうぼんやりと考えながら、ベランダから自分の部屋に戻った。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
愛娘(JS5)とのエッチな習慣に俺の我慢は限界
レディX
恋愛
娘の美奈は(JS5)本当に可愛い。そしてファザコンだと思う。
毎朝毎晩のトイレに一緒に入り、
お風呂の後には乾燥肌の娘の体に保湿クリームを塗ってあげる。特にお尻とお股には念入りに。ここ最近はバックからお尻の肉を鷲掴みにしてお尻の穴もオマンコの穴もオシッコ穴も丸見えにして閉じたり開いたり。
そうしてたらお股からクチュクチュ水音がするようになってきた。
お風呂上がりのいい匂いと共にさっきしたばかりのオシッコの匂い、そこに別の濃厚な匂いが漂うようになってきている。
でも俺は娘にイタズラしまくってるくせに最後の一線だけは超えない事を自分に誓っていた。
でも大丈夫かなぁ。頑張れ、俺の理性。
【R18】青き竜の溺愛花嫁 ー竜族に生贄として捧げられたと思っていたのに、旦那様が甘すぎるー
夕月
恋愛
聖女の力を持たずに生まれてきたシェイラは、竜族の生贄となるべく育てられた。
成人を迎えたその日、生贄として捧げられたシェイラの前にあらわれたのは、大きく美しい青い竜。
そのまま喰われると思っていたのに、彼は人の姿となり、シェイラを花嫁だと言った――。
虐げられていたヒロイン(本人に自覚無し)が、竜族の国で本当の幸せを掴むまで。
ヒーローは竜の姿になることもありますが、Rシーンは人型のみです。
大人描写のある回には★をつけます。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
美貌の騎士団長は逃げ出した妻を甘い執愛で絡め取る
束原ミヤコ
恋愛
旧題:夫の邪魔になりたくないと家から逃げたら連れ戻されてひたすら愛されるようになりました
ラティス・オルゲンシュタットは、王国の七番目の姫である。
幻獣種の血が流れている幻獣人である、王国騎士団団長シアン・ウェルゼリアに、王を守った褒章として十五で嫁ぎ、三年。
シアンは隣国との戦争に出かけてしまい、嫁いでから話すこともなければ初夜もまだだった。
そんなある日、シアンの恋人という女性があらわれる。
ラティスが邪魔で、シアンは家に戻らない。シアンはずっとその女性の家にいるらしい。
そう告げられて、ラティスは家を出ることにした。
邪魔なのなら、いなくなろうと思った。
そんなラティスを追いかけ捕まえて、シアンは家に連れ戻す。
そして、二度と逃げないようにと、監禁して調教をはじめた。
無知な姫を全力で可愛がる差別種半人外の騎士団長の話。
魔界の先生も教育相手は選びたい~平穏な日々のためサキュバスさんにお仕置きを~
今泉 香耶
恋愛
年上の独身魔族を舐めてかかったサキュバスさんが、腕4本の敬語眼鏡攻め魔族男性にわからせセックスされてぐずぐずになる話。途中から休憩1回入りの1万字以上人外エロが始まるので、貪欲な人外エロを読みたい人のみどうぞ。全10話中、5話~9話まで延々やっています。
※「溺愛魔王は優しく抱けない」の続編ですが、出来るだけ初見の方でも読めるように書いております。
魔界の次期サキュバス当主候補フェーリス。彼女は自分好みで権力も財産もあって都合が良い男に嫁ぎたい。そこで白羽の矢を立てたのは、魔王妃の教育係の1人コーバス。だいぶ年上で穏やかな彼は、4本腕と太い尻尾がある種族だ。コーバスにアプローチするフェーリスだったが、思わぬ所で彼の地雷を踏んでおり……。
書いてる方は楽しかったです。エロが長くてすみません。
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる