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プロローグ
アフター・レコーディング~リテイクは寝室で Side 律己
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浅い眠りの中で、俺はスポットライトを浴びて歌っていた。暗闇の中で揺れる、数え切れないほどの光の粒。
また、いつもと同じ夢だ。
これが現実ではないと分かっているのに、色彩の中に黄色の光を見つけると安心してしまう。その色は俺を見てくれている人がいる証だったからだ。
「なつめー!」
その声に笑顔で応えるのは俺だけど、俺は「なつめ」であって「なつめ」じゃない。
「なつめの中の人、イマイチじゃない?」
どこからかそんな声が聞こえた気がして、辺りを見渡そうとすると決まって目が覚める。
目を擦ると、俺を追いかけていた光達が跡形もなく消えて、朝の太陽がスクリーンのように壁をのっぺりと白く照らしていた。
過去の栄光の夢を見るのは、今の自分の環境に不安があるからなのだと、どこかで聞いたことがある。夢占いなんて信じていなかったけれど、あながち的を得ていて口惜しい。
確かに俺は五年前まで、キラキラな衣装を身に纏って人前に出ることを生業としていた。だけど俺の職業は、アイドルじゃない。声優だ。
声優という仕事は、簡単に定義するのが難しい。アニメキャラに声を当てる以外に、ステージでのパフォーマンス、外国映画の吹き替え、ナレーション、ラジオの出演など、その仕事範囲は多岐に渡るからだ。
初めに演じた役がアイドルだった俺に貼られたのは、「アイドル声優」というレッテルだった。しかし人気作に出られず、知名度が下がった今、そのレッテルすらもう風化して剝がれ落ちてしまっている。
そんな俺に宛がわれた新しい肩書きは、十年間、いや三十年間共にしてきた自分の名前とは別の「裏の名前」だった。
また、いつもと同じ夢だ。
これが現実ではないと分かっているのに、色彩の中に黄色の光を見つけると安心してしまう。その色は俺を見てくれている人がいる証だったからだ。
「なつめー!」
その声に笑顔で応えるのは俺だけど、俺は「なつめ」であって「なつめ」じゃない。
「なつめの中の人、イマイチじゃない?」
どこからかそんな声が聞こえた気がして、辺りを見渡そうとすると決まって目が覚める。
目を擦ると、俺を追いかけていた光達が跡形もなく消えて、朝の太陽がスクリーンのように壁をのっぺりと白く照らしていた。
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確かに俺は五年前まで、キラキラな衣装を身に纏って人前に出ることを生業としていた。だけど俺の職業は、アイドルじゃない。声優だ。
声優という仕事は、簡単に定義するのが難しい。アニメキャラに声を当てる以外に、ステージでのパフォーマンス、外国映画の吹き替え、ナレーション、ラジオの出演など、その仕事範囲は多岐に渡るからだ。
初めに演じた役がアイドルだった俺に貼られたのは、「アイドル声優」というレッテルだった。しかし人気作に出られず、知名度が下がった今、そのレッテルすらもう風化して剝がれ落ちてしまっている。
そんな俺に宛がわれた新しい肩書きは、十年間、いや三十年間共にしてきた自分の名前とは別の「裏の名前」だった。
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