宝石請負人ガント

今橋 卓杜

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宝石請負人ガント

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ある田舎にガントと言う男がいました。

彼はある日、用事があって遠くに行くことになりました。

そこで用事を済ませた後、宝石店の横を通り過ぎると

「70周年 半額セール」の文字

ガントは少しだけ寄り道してみることにしました。

ケースをぼーぅと眺めていると一つのサファイアに目が留まりました。

「33000円 50パーオフ!!」

ガントはそれを宝石商に言ってケースから取り出してもらいました。

すると心の奥の方にサファイアの光が濁って見えました。

彼は言います。

「君、うちに来るかい」

サファイヤはただ濁った光を心に照らすだけでした。

帰路の電車の中で

そのサファイヤを眺めているとふいに偽物ののように見えてくるではありませんか!

そこでがんとは言いました。

「君、今僕を試しているね。持ち主にふさわしいかどうか見ているのだろう。

宝石ケースで安売りされている宝石にはたまにあることだ。

常に比べられ、値踏みされ、また宝石同士のいろいろもあるのだろう。

それでそんなにプライドが高くなってしまったのだね」

宝石は心の奥に濁りを映します。

「まずは自己紹介からだ。僕はガント。よろしく。君のことはこれから長い目で育てていくつもりだよ

大丈夫。」

宝石の変わらぬプライドの高い態度に少し不安になりましたが

まあまあこれもよくあること。長い目で見よう。

サファイアは知性、冷静さ、守護、そして霊的成長に強く関連する石だ。強力なエネルギーを持つため、扱うのに苦労するのである。

彼の中に途端に芽生えた自尊心やプライドとといったものがもしかしたらサファイヤの今のそれなのかもしれないと思いつつ帰ってからを楽しみに待った。

その感情はけたたましく、宝石のガラスケースの中で自分の価値を見出すために身に着けたことなのだろうとふと思う。

家に帰ると、椅子に座り

彼は精油を取り出しました。

「セージ」

それはかつてネイティブアメリカンをはじめとする古代の文化で神聖な植物として尊重されてきました。彼らはセージを使って儀式を行い、ネガティブなエネルギーや悪霊を追い払うために焚いていたり、空間や人、物を浄化するために使っていたのです。

彼はティッシュを丁寧にたたむとセージの精油を二滴たらします。

そうして宝石の奥深くをめがけて丁寧に拭くのです。

それは丁寧に、丁寧に、宝石の心を癒すように。

すると彼は宝石の今までの殺気だった印象が徐々に丸くなっていくのを感じました。

この瞬間がやめられないのだ。

宝石が徐々に僕に心を許し輝きを取り戻していく瞬間が。

彼は何度も何度もセージの精油をティッシュにたらしては拭くのでした。

宝石は徐々に安心し始めます。

ガントは言うのでした。

「大丈夫。大丈夫。君は大事な大事な僕のものだ」

サファイヤは穏やかに。それは女神の水浴びのように。

サファイヤは透き通るオアシスの水を頭からかぶり

頭をふるって水を切ります。

何度も何度も気持ちを込めてガントの手は、サファイヤの核心に届き始めます。

そしてしばらく宝石を箱の中にしまいそっとしておきました。

ガントは言います。

「しばらく一人にしよう。ゆっくりお休み」

そうして夜が来るまで一人にしておくのでした。

夜が来るとガントは部屋の電気を消し宝石を窓辺に置きました。

そうしてまた宝石のそばを離れるのでした。

夜空の星々は、幾千、幾万の時を超えて光を届け、それをサファイヤに宿します。

ガントはしばらくたって部屋に戻ってくるとサファイヤを見ました。

するとがんとは驚きます。

「君は、こんな輝きをする子だったんだね」

サファイヤの雰囲気はショウケースにあった荒れ果てた商品としてのサファイヤではなく、本来の地球の自然の記憶を徐々に取り戻していました。

その雰囲気はまさに夜空。

濁った色は、深い洞察力さえ感じる深みのあるブルーに変わっていました。

ガントは喜びます。


「思ったより早かったね。君はやはり僕に選ばれるだけはある」

するとガントはサファイヤを月の見える場所に持っていきます。

そうして月の光にあてるのでした。

するとサファイヤは音楽を聴きます。

それは月の調べ。

浪々と輝くそれは緩やかな音をサファイヤに届け、

サファイヤの奥にある、締め切った心を徐々にほどくのでした。

そうしてサファイヤは彼の石になるのでした。

地球の英知はその遺志に宿り、身に着けるものに夜空の加護をもたらします。

深い青のベールに包まれたサファイヤは満足げに彼の指に収まるのでした。

彼は言います。

宝石にかつての地球の記憶を呼び起こさせ本来の輝きを宿すこと。

これすなわち宝石が単なる商品以上の価値を持つ瞬間だというのです。

「僕はガント。宝石請負人さ」
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