私の話

今橋 卓杜

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私の話

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ある街に少女がいた。
可憐でその顔立ちは美しく肌は白くその軽やかな立ち振る舞いはみなを魅了した。

その辺にして頂戴。

ここからは私が話すわ。
だってこれからの話は私の話ですもの。

私のことはとりあえず置いといて。私の住む町の話をするわね。

私の住む町は山のふもとにある小さな町で、私のお気に入りは、私の住む小さなおうちと小さなお庭、お母さんが作ってくれるシチュー、バラと菫の花、いつも一緒に走っている双子の兄弟、近所の頑固なおじいさんに、美しい恋の本。

私のおうちは小さくて3人も入ればリビングは一杯になっちゃう。
だけどね全然狭苦しくなんかないわ
なぜならねお互いが気を使うことを知っているから。

小さいお庭も好き。お母さんがとっても大事にお花を育てていて
季節には私の大好きなバラや菫なんかが咲くのよ。
だからとても好き。

そしてなによりシチューよ。
お母さんが作ってくれるの。
それを食べると私何でもできちゃう。
元気の源。

私の町には運動公園があってそこで一人で歩くのが好き。
そこにはね面白い人たちがたくさんいるのよ。
私のお気に入りは双子の兄弟。
多分兄弟だと思う。
だってすごく似ているのよ。
笑っちゃうわよね。
めがくりくりで背は小さくていつもお揃いの服を着ていてね。
二人並んで走っているの。

そして、うーんと、うーんと、

その辺にしなよ。あとは僕が話そう。

いやよ。

ほら来客だよ。君いかなくていいの?

仕方ないわね。残念だわ。

さて、あの子には頑張ってもらわなくちゃね!

気を取り直して。こほん。

その女の子の家族は貧しくもささやかな暮らしをしていた。

夫婦でこじんまりとした書店を営んでいて、お父さんは理知にたけ本を愛する大人だった。母は愛情をたいせつにする人で娘に惜しみない愛を与えた。

家族で山にピクニックに行ったり、お弁当をもって運動公園でランチをしたり、町にある小さな映画館で映画を見たり、家族みんなで本を読んだり、そんなささやかな日常過ごしてた。。
そして、そんな時間が、大切に流れていた。

ある日のことだった。

その日もその少女は家族で山に登りに来ていた。ちょうどお昼頃だったかな。
少女はお昼を食べ終わった後、親の元を少し離れて原っぱを森を散歩していた。

季節は冬。

ふかふかの土と枯れ葉が足元で音を立てる。
木立はすっかり模様替えし、葉がすっかり落ちてしまったもの、黄色くなっているものが静かに立ち並ぶ。
枝の先に今にも落ちそうな枯れ葉が一つ。
風に吹かれて舞い落ちる。

女の子は元気に鼻歌を歌いながら森の中を軽やかに歩いて行く。

すると大きな大木のふもとに子ぎつねがうずくまっているのを見つけた。
彼女はおそるおそる近づいてその子狐観察すると、どうやらその子狐はけがをしているようだった。

足から血が出ている。

少女はそれに気が付くと急いで抱きかかえ両親の元へ向かった。

両親はそれを見ると娘を連れて急いで山を下り、町の動物病院へと向かった。

「足が折れていますね。いそいで手術しましょう」

しばらく待って
手術が終わると医者がでてきた。

「術後の経過は順調です。一か月ほど固定し安静にしておけば直るでしょう。」

しばらく病院で安静にしてから、家に連れ帰ることにした。
そしてその家族に新しい家族が増えた。

その子狐を誰よりも愛したのはその少女だった。

子ぎつねにドックフードを与え、水を替え、暇さえあれば子ぎつねをなでていた。

はじめは子ぎつねもおびえていたがその少女の献身的で愛情深いおせわで次第に心を許していった。

「まだ痛む?」

「あなたを見ているとなんだか癒されるわ」

少女は子ぎつねをなでる。子ぎつねは気持ちよさそうに目を細め喉を鳴らす。

「あなたどうしてあんなけがをしたの?
やんちゃなのね!
男の子だもんね。
それくらい元気でなきゃ!」

子ぎつねはたっぷりとその少女の愛情を受けて育った。

一年がたったあるころ、事件が起きた。

子ぎつねが消えた。

少女はひどく焦った。町中を探し回った。

けれど見つからなかった。

少女が落ち込んで家に帰ると母が自分あてに一通の手紙が来ていることを教えてくれた。

「不思議ね。手紙なんて珍しい。誰かしら」

あて先は確かに少女あてだ。

送り主の名前はなかった。

リビングの椅子に座ると手紙を開く


少女へ

こんにちは。
突然の手紙ごめんなさい
あなたに助けられた子ぎつねです。
あなたにお礼がしたい
明日の昼
山の杜の大木の前で待っています

子ぎつね


少女は舞い上がって喜んだ。
よかった。生きていたのね。


次の日の昼
少女は軽やかな足で山を登る。

あの子狐にまた会えるのね。
思わず彼女の足取りはいつも以上に軽くなる。

大木の前につくとキツネが2匹佇んでいた。

「やあ、来てくれてありがとう」

「まあ、あなたと話せるのね」

「隠していて悪かったね。母さんこの子だよ。僕を助けてくれたんだ。」

「まあ、かわいらしい子ね。うちの息子を助けてくれてほんとうにありがとうね。


「お礼に私たちの住む場所に招待させて頂戴な」

「まあ、素敵。ぜひ行きたいわ」

キツネの親子の後を追うように山を登るとそこには祠がった。
キツネはそれを通り過ぎてく

少女もそのあとを追いかけた。

しばらくすると洞穴についた。
人がかがめばぎりぎり入れるくらいの大きさで入り口にはドアがあった。

「かわいいおうちね」

「ようこそ。わが家へ。さあどうぞ」

「おくつは脱いで上がって頂戴ね」

ドアを開けると中は広かった。小さい椅子と小さなテーブル
その上にごちそうが広がっている。

「まあ、おいしそうなごちそうね」

「僕とお母さんで作ったんだ」

「大変だったのよ。この子が料理作るなんていいだすから」

「ふふ。うれしいわ。さあ、食べさせて頂戴!」

「わーい。食べよう!僕の自信作はこのハンバーグさ」

「ハンバーグ!私も好きよ!」

そして三人で食卓を囲んだ。形はなんだか不格好だったけど、とてもおいしかった。スープはコーンスープだった。暖かなコーンスープは口の中でとろけてまろやかで彼女の中のおなかの中にたどり着くと、血管を通って、ぬくもりを与える。
サラダはレタス、トマト、玉ねぎのスライスなんかが一緒のお皿に盛りつけられていて彩もよく考えらえていた。

「僕あした彼女を連れてこの森を案内するよ」

「いいわね。行ってらっしゃい。」

「今日はうちに泊まっていきなよ」

「だめよ。家族が心配するわ。」

「そっか」

「君の家族にもお礼を伝えておいてよ。」

「わかったわ。必ずよ。」

そして人通り食事を楽しんだ後、適当に会話をしてその日は帰った。

次の日の朝彼女はまた森に来た。

森の空気は澄んでいて、鳥の歌声がまるでお話ししているかのように彼女の耳に入ってくる。
それらは音楽となって彼女の耳に入り口から流れ出る。

「きれいだわ。冬の朝の雰囲気ってそうね、例えると」

木立はみな静かに。そして美しく立ち並ぶ。
その沈黙は美しく、清潔で、凛としていた。

大木の前に行くと子ぎつねが待っていた。

「やあ。」

「おはよう。いい朝ね。」

「うん。いい朝だ。」

「今日は森を案内するよ」

「ありがとう。嬉しいわ」

森を歩く間少女と子ぎつねはいろいろな話をした。
家族のこと。庭に咲いているお花の話。そして双子の兄弟。
2人の間に可憐な天使が舞い降りる。
そしてそれは二人だけのささやかな笑いを生み出す。

「僕の友達の家さ」

木にあけられた穴の中から音楽が聞こえてくる。

「おーい」

「やあ、友よ。お、素敵な子を連れているね。おはよう我が友人」

「リスね。おはよう!さっきの音楽もあなたが弾いていたの?」

「そうさ。僕は音楽家さ。」

「君の音楽をこの子に聞かせてあげてよ」

「喜んで」

「淑女よ、君にぴったりの曲がある。これをあなたに。」

するとリスはピアノを弾き始める。

ーーーベートーベン ピアノソナタ30番 ホ長調 作品109 第一楽章ーーーー

蝶が一本の花から離れると
可憐な歌を踊りだす
それは情熱的で、気まぐれで、美しく。
一人の少年がその蝶を見つけてこういう。
あれははかなき蝶。
飛び跳ねて、はじけ飛んで、まるで遊んでいるよう。
どこまでも純粋で穢れを知らない。
それはそのままどこまでも。

演奏が終わる。

「まるで君だったろ。」

「美しいわ。」

「しかし、君の美しさはこの曲では語りきれない。」

「お世辞が上手ね。」

「これ以上は子ぎつねが焼いちゃうかな?」

「なななな、なんだってそんなこと。僕はどうも思ってないわい。」

「それに僕と彼女は。」

「聞きたくなったらまた来るといい。」

「私は音楽家だ。」

「ありがとう。そうするわ」

リスの元を後にすると次はフクロウの元へ向かった。

「やあ、フクロウ爺さん」

「ほーほー、子ぎつねの坊や。よく来たね。そして隣にいるのは。」

「彼女は僕の恩人なんだ。」

「ほうほうそうかね。それは何より。」

「このおじいさんはね、何でも知ってるんだ。」

「物知りなのね」

「少しだけ先が見通せるだけだ。そんなたいそうなものではない。」

「それじゃあ、私の先も見て頂戴」

「うむ。よろしい。」

するとフクロウはその英知を感じさせる凛々しい目で彼女を見る。
すると険しい顔になりこういった。

「少女よ。ここを出る出ない。」

予想外の返答に少女は困惑する

「やーよ。私おうちに帰らなくちゃ。」

「出てはならん。決してだ。」

語調が強くなる。

「なんでなの。私こんなところにずっといるのいやよ」

彼女は怒鳴り返す

そういったあとではっとした顔押して子ぎつねのほうを振り返る。
子ぎつねはさみしそうな目で少女を見る。

「ごめんなさい。私」

「いいんだ。」

「わかったわ。いつまでいればいいの?」

「明日の朝までだ」

「家族に連絡したいのだけれど」

「わかった。手紙を書こう」

思わぬフクロウの発言に驚きながらも二人はフクロウの元を後にする。

「さっきはごめんなさいね」

「いいんだ。君の気持ちも十分わかる。」

その日の夜彼女は子ぎつねの家に泊まることになった。

「フクロウ爺さんはねその勝ち得た知恵のちからによって予言することができるんだ。だから守ったほうがいいよ。」

「それは守ったほうがよさそうね。」

「まあ一晩だけだ。手紙も出した。そんなに悲観的にならないで」

「それも、そうね。ありがとう。」

その夜どうも胸騒ぎがして彼女は家を飛び出た。
山を下りなきゃ大丈夫よね。家が見えるところまでいっいて確認したら戻りましょう。
少女はやまを下り祠を通り過ぎる。
するとそこに蛇がいた。

「やあ、お嬢さん」

「びっくりしたわ」

「君に耳よりの情報がある。こっちに来たまえ。」

「蛇ね」

「今用事があるの。またとでね。」

「君の家族の話だ。」

彼女の心臓がドキッとなった。

「何かあったの!?」

「ししし。まあこちらに来るといい。」

彼女は蛇の後をついていく。

ーーーー決してこの山を出てはならぬーーーーー

次の日。山の森に朝が来た。

少女は山で遺体となって発見された。
みぐるみははがされ、顔や体に複数の暴行の後。死因は複数の打撲によるものだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「すてきね」

「そうだろ」

リスは泣いていた。

黄金の草原に一台のピアノとそれを弾くリス。それに肘をつく少女。
ーーーーベートーベン ピアノソナタ30番 作品109 第三楽章ーーーーーー




疲れと、哀愁、悲しみそれがけだるく彼女らを包み込む。
後ろに尾を引かれた希望の光はまだあきらめぬと
さみしくも、悲しい旋律を奏でる。
君には重すぎるこの結末も
すべて僕がぬぐおう

「わたし襲われちゃったわ」

「それでも君は愛したんだろ」

「だって、彼悲しそうだったんですもの。」

「その愛はどこから来るんだい」

「私ね。ある時気づいたの。」

「愛するためにこの世に生まれたって。そういう役目をもって生まれたのよ」

「僕は神を憎む。そんな結末しか用意できなかった神を」

「でも、私もっと素敵な恋がしたかったわ」

「初体験があれじゃあね」

「素敵な人と恋をして。結婚して、子供を作って。」

「大事に大事に育てるわ」

「つらいことがたくさんあるでしょうけど」

「きっと乗り越えられるわ。」

「子供が独り立ちして、私たち夫婦だけになったら」

「小さな家に引っ越すの。小さなお庭付きのね」

「そこからは子育てで時間を使った分夫をたくさん愛すわ」

「そして、、、、、、、、、、、、、」

少女の目から涙が落ちる。

「私より先に夫がたびたつの、、、、、、、、、、、」

「そして、、、こういうのよ、、、、、、、、」

「愛してる」

「僕は君の不幸を許さない。」

ほら、迎えに来た。君の愛を粛々と祝うこの音が聞こえるかい。
少女は暴行を受けその意識が途切れるその瞬間も愛することをやめなかった。
ゆえに君にふさわしい舞台を用意しよう。


冬のある日、彼女は杜の一員となった。

山の木立たちは粛々とただ静かに彼女を祝う。

そして彼女は自分の意志で案内役という役割をかって出た。


暗い森のその中で温かいシチューを食べよう
君が大好きな。
君を大好きなぼくたちと。
もう明日は来ない。
日にちなど気にせず永遠に。


これがある少女のお話。

そう私の話よ。

君戻ってきたんだね。

ええ。きっと今回も大丈夫よ。

そうか

君今は幸せかい?

ええ。
私が伝えられることは少ないけれど、私という存在が愛となって
そうして人を包み込めたらって
今はそう思っているわ

あなた、まだ悲しんでいるの?

ぼくはただ。

ふふ。やさしいのね。

君にはかなわないよ。

さあ、これで私の話はおしまいよ。

今日のご飯は何かしら。

今日は子ぎつねの家でハンバーグだよ

みんな待ってる。

早くいきましょ!

そう。これは杜のお話。

君がもし私たちに会いたいのなら、山に来るといい。

きっと彼女が迎えに行くから


ーーーーーーーFinーーーーーーーー




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