淡き河、流るるままに

糸冬

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(七)

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 淡河家の家臣と共に鉄入斎の案内で、別所一党は淡河城下に構えられた葛屋の商宅まで足を運んだ。
 葛屋の主人である福助は、自ら門前まで出迎えに立っていた。
「ようこそおいでなさいました」
 実直そうな面立ちの福助は、下にも置かぬといった丁寧な物腰で頭を下げる。
「この人数で押しかけては、その方も困るであろう」
 源兵衛は、眉根に皺を寄せて首を傾げた。けっして押し出しが強いだけの男ではない。相手に配慮する心も持ち合わせている。
「その儀なれば、お連れ様におかれてばあちらの天正寺にて御休息いただけるよう、取り計らってございます」
 福助は動じる様子もなく、淡河城の北側、淡河川の向こうの石切山に建つ寺を掌で指し示した。
「どのような寺でございますかな」
 さすがに元僧侶とあって気になるのか、源兵衛が問うた。
「梅林山天正寺は、有馬家の菩提寺にございます」
 聞かれるままに福助は説明を始める。
 かつて石切山には淡河城の出城が築かれていたが、淡河家と争っていた有馬法印が攻め落として己の城とした記録が残る。
 後に三木合戦の折に淡河城が秀吉勢に攻められた際は秀吉方の付城として用いられたこともある。
 その後、有馬法印が淡河の地を治め、淡河城を新たな居城と定めた折に、己の菩提寺として新たに建立したのが梅林山天正寺である。
 その建築にあたっては、葛屋も助力したという。
「ほう、有馬家の」
 由来を聞いた源兵衛はちらりと次郎に意味ありげな視線を向け、肩をすくめてみせる。
 別所家にしろ淡河家にしろ、有馬家は長きにわたって敵対してきた間柄である。特に淡河家にとっては不倶戴天の敵といっても過言ではない。
 しかし一方で、その有馬家に淡河長範が仕えることを許されたからこそ、今こうやって頼ろうとしている訳で、毛嫌いするわけにはいかない。
 その複雑な思いを共有していることを互いの目で確かめあう形になった。
「では、ご厚意に甘えると致そう」
 一党を葛屋の手代の案内で天正寺に送り出すと、源兵衛は赤松外記、次郎は鉄入斎をそれぞれ供に連れ、葛屋の離れに入った。
 淡河新三郎長範は既に畳敷きの部屋で次郎たちの到着を待っていた。
 長範は、まず鉄入斎の黒光りする頭に目を留めた。
 かつての「淡河四天王」の一人である鉄入斎のことは、長範は当然よく知っている。
「お主、時折この地に足を運んでおったと家臣より聞いたぞ。にも関わらず、わたしのところには顔を出さず、奥方と御曹司を讃岐に落としたと、なにゆえ伝えなんだ」
 目を細めた長範の語調は、言葉の内容に比べれば柔らかい。不満よりも懐かしさが先に立つように、次郎には思われた。
「その段、平にご容赦を。新三郎様が有馬家中でどのようなお立場であるか、見極めがつきかねましたゆえ」
 鉄入斎は旧知の間柄であることよりも、今の立場をわきまえてか、神妙な調子で頭を下げる。もっとも、どこかふてぶてしい態度は消しきれない。
 長範は呆れたように小さく鼻を鳴らし、改めて次郎に目を向ける。
「久しいな。その面立ちは、兄よりも母親の血が濃いやもしれぬな。わたしの顔を覚えておるかね」
 長範の声音こそ柔らかであったが、次郎を見据える目には鋭い光が宿っている。
 そして、長範の口ぶりは明らかに、次郎を兄の忘れ形見である淡河家の世継としてではなく、一人の叔父と甥の間柄として対峙していることを伝えていた。
 その意味を考えながら、次郎は内心でありがたいと感じている。
 万が一にも、ここで淡河家の世継として有馬家の家老としての地位を譲りたいなどと言い出されてしまっては一大事である。
「三木城にて、叔父御とお会いした記憶はございますが、申し訳なきことながら、当時の御顔がどのようであったか、覚えておりませぬ」
 目下としての礼をとり、頭を下げながら次郎は応じる。
「さもあろう。五つにもならぬ頃であった故な。わたしも当時は兄に比べれば頼りない青びょうたんであったが、今はいささか貫禄がついた」
 長範は薄く笑い、今度は源兵衛に目を向け、無言で言葉を促す。
「別所源兵衛長行と申しまする。別所家の再興に力をお借りしたく、旧縁を頼り、こうして参上した次第にござる」
 源兵衛は卑屈にならない一方、別所家当主としての威厳を失わない堂々とした態度で長範と対峙する。
「別所公の忘れ形見の噂はあれこれと耳にしておりましたが、こうして実際に当人の一人とお会いするのははじめてですな」
 長範の口ぶりは丁寧ながら、醒めたものがあった。
 暗に、別所長治の世継を公言している者は一人や二人ではないと伝えている。
 つまり、言葉にしないが本当に別所長治の血を引いているのか疑っていると示しているようなものだった。
「御家の血を絶やさぬため、亡き父が尽力した結果でございましょうかな。それがしも、我が父から直接話を聞けるものなら、是非とも真意を聞いてみたいものにござる」
 源兵衛は恐れ入ることも腹を立てることもなく、まっすぐに長範を見据えて、腹の据わった声で応じた。
「いや、これは詮無いことを申した。許されよ。して、御家再興と口で申すのは容易きことなれども、どのような形をお考えか」
 長範はさらりと話題を本筋に戻した。確かに長範の立場からは、それが最も気にかかるところであろう。
「徳川内府様が公儀の命にて会津征伐に向かったところ、その内府を公儀は糾弾し、討てという。世情は大きく揺れておりまするが、なにも混乱に乗じて三木城を乗っ取ろうなどとは考えておりませぬ」
「それを聞いて安堵いたした。元亀天正の初期の頃ならいざしらず、もはやそのような時代ではない」
 長範が表情を緩める。
「いかにも」
 頷き返した源兵衛は、別所重宗の子・正之が養子に入っている福島正則の陣に追いつき、陣借をして戦働きにより一党の召し抱えを願うとの策を腹蔵なく説明する。
 相変わらず、横で聞いている分にはいとも容易い話のように次郎には思えてしまう。
 実際には、どこで戦さに巻き込まれるかも判らない情勢の中、遠く会津まで遠征している福島勢の元に馳せ参じることからして、無謀に近い企てなのだが。
「なるほど、我が殿と同じく内府様に与力する福島様に召し抱えを願うのであれば、止め立ての必要も無き事。さりながら、どのように手助けできるやら」
 ややあって長範は苦しい胸の内を明かすように声を絞り出した。
 今の長範は、有馬家の重臣の一人ではあるが、有馬家自体が一万石あまりの小さな身代に過ぎない。
 冷静になって長範の立場で考えてみれば、彼の権限で六十名の士分の者に対してできる助力など限られているのは自明であった。淡河城の金蔵を勝手に開くわけにはいかないのである。
 無い袖は振れないと言ってもよい。
 重い沈黙が互いの間を流れる。
「それならば、わたくしどもにて別所御一党様をお助けいたしまする」
 その時、こがしと呼ばれる冷えた麦の茶を運んできた娘が、不意に明るい声を発した。
 裕福な商家の娘らしく、黄梅模様の振袖に紅房の提帯という華やかな出で立ちが人目を惹く。
「葛屋が別所殿を支援すると申すのか」
 長範はこの時初めて、この娘に対して困惑した表情を見せた。
「はい」
 娘ははっきりとした口調で応じる。その間にも、慣れた手つきで、盆に乗せた茶碗をそれぞれの前に差し出していく。
「そうは申しても、その方の一存では決められまい。福助を呼んで参るがよい」
「承知いたしました」
 茶を配り終えた娘は、落ち着いた所作で頭を下げて部屋を退出する。
 次郎は半ば呆然としてその後姿を見送っていた。
「今の娘は何者ですかな」
 源兵衛が楽し気に声を弾ませて長範に問うた。
「葛屋の主人・福助の一人娘で、於寿と申してな。親の教えによるものか、武士の生業にもなにかと興味を持って首を突っ込みたがりおる。女にしては珍しい性分よな」
 旧知の間柄なのだろう。ため息交じりといった調子で長範は首を振ってみせた。

 少しの間をおいて於寿と共に姿を見せた福助は、その名どおりの福々しい顔に、今ははっきりと判る困惑の色を浮かべていた。
(愛娘の安請け合いが、よほど堪えているらしい)
 まったく笑いごとではないと承知はしているが、ついおかしみを感じてしまう次郎である。
 しかし、いざ長範と源兵衛を等分に見やる位置に腰を据えた福助の表情からは、すっと迷いの色が消えた。
「まずは別所様が御家再興の為にお起ちになること、御慶び申し上げまする。ついては、葛屋がその一助を担うとなれば、名誉なことにございまする。これなる我が娘より聞いてはおりますが、具体的にどれほどの御助力を所望されますでしょうか」
「うむ。それについては家中の者とも談合のうえ、ひととおりまとめてある」
 源兵衛は臆する様子もなく、鷹揚に頷いて懐から書付を取り出し、福助に差し出した。
「では、拝見致しまする」
 福助は一礼して受け取った書付を畳の上に広げた。
 そこには、馬乗り身分のうち馬を持たぬ者用の軍馬をはじめ、甲冑、弓矢、鉄砲と焔硝などの武具一式、鉛玉、米や味噌といった兵糧、そして軍資金の額が達筆な筆使いで記されていた。
 しばし、福助が黙考する。
 次郎はつい「如何でございましょうか」と問いかけたくなる気持ちを抑え、答えが出るのを黙って待つ。源兵衛も鉄入斎も、一様に口を真一文字に結んでいる。
「父上」
 一番最初に沈黙に堪え切れなくなったのは、福助の斜め後ろに控えていた於寿だった。室内に響いた女性の不安げな声が、その場の空気を緩ませた。
「お前はよほど、入れ込んでおるようじゃな」
 福助は於寿の方に顔を向け、半ば呆れるように大きく息をついた。
「これもご縁にござりますれば、是非にと願っておりまする」
 悪びれる様子もなく、於寿は顔を上げて言い切る。
 その態度に、福助がふっと肩の力を抜いた。
「ようございます。ここに書かれた品と軍資金は、全て我が葛屋にて工面いたしましょう」
「おお、まことか」
 さすがに満額回答は虫が良すぎると思っていたのか、源兵衛は思わず腰を浮かせて訊ね返す。
「ただし、葛屋福助は商人でございますれば、ただではお渡しは出来ませぬ。あくまでもお貸ししたうえで、御家再興の暁にはお返しいただく。それが条件にございます」
 福助の言葉に、源兵衛は腰を落として表情を曇らせた。
「証文を書けと申されるか。無論、身命を賭す覚悟ではござるが、必ず成就すると決まってはおらぬ。戦さ場に臨めば、口にしたくもないが落命することも皆無とは言えまい。そうなれば約定を違えることとなろう」
 浮かぬ表情の源兵衛に、次郎は意外の念を抱く。
 これまで見てきた源兵衛は楽天的で、あまり先の算段を考えていないような振る舞いが目立っていた。
(仮にしくじったところで、無い袖は振れぬと開き直ることも出来ように、殿にはそのつもりはないらしい)
 新たな一面を見た、と思う。大袈裟に言えば感動したと評しても良い。
 福助も、源兵衛の態度に好感を覚えたらしい。
「仰せのとおり、必ず回収できるとは限らぬでしょう。されど、商いとはおしなべて、損を覚悟のうえで行うもの。別所様が一本気に約定を果たしたいとお考えであれば、手前はそれで構いませぬ」
「それはまことにありがたいが」
 なにゆえに、と源兵衛は問う。
「別所様も淡河様も、当地で暮らしておられぬので実感はないとは存じますが、お二方の父君の御威光は、この地においてはまだまだ強うございます」
「しかし、それだけでは福助殿に利がないのでは」
 たまらず、傍らから次郎が口を挟む。
「別所家並びに淡河家が再興された暁には、是非とも葛屋を御贔屓いただきたい。それで充分でございます」
「つまり、我等に肩入れするのは投資という訳か。葛屋の主人がそう請け負うてくれるのであれば、お言葉に甘えると致そう」
 覚悟が定まったのか、源兵衛が表情を引き締めて頭を下げた。その場の空気が緩む。
 その一瞬の間を衝くように、福助の斜め後ろから於寿が声をあげる。
「父上、わたくしにも御手伝いをさせていただきたく存じます」
「はて、商家の娘に、何が出来ると仰せかな」
 源兵衛は困惑げに、ちらりと福助の顔を伺う。次郎も、福助に向き直ってその言葉を待つ。
 福助は一つ、大きく息を吐いた。
「まったく、利かん気な娘じゃな。新三郎様、皆様にお教えしても構いませぬか」
「まあ、止むを得まい。別所一党には、先を見る目、遠くの声を聞く耳が必要であろうでな。儂から話そう」
 やれやれと首を振った長範は、咳払いして左右を伺うそぶりを見せた。
 つられるように、次郎たちも居住まいをただす。
「元々、葛屋と有馬法印様とはかの三好実休様の使番をしていた頃からの付き合いがあるそうじゃが、実は葛屋は配下の連雀商人を各地に送り込み、調者働きもこなす商人なのじゃ」
  連雀商人とは、専用の背負い道具に商品や荷物を乗せて運ぶ行商人である。専ら集団で行動することからその呼び名がある。
「調者働き、にござりますか」
 鉄入斎が眉を上げた。
「兵庫。いや、今は鉄入斎であったか。お主、有馬家にそのような者が出入りしておったなど、淡河家の誰も知ってはおらなんだであろう」
 からかいが混じった口ぶりで長範が問う。
「いや全く存じませなんだ」
 鉄入斎が禿頭を掻く。
「兄者もな、織田勢に淡河城を囲まれた折に申しておった。当家に調者働きの出来るものを揃えなんだのは不覚であった、とな。兄者は有馬家の動きの陰に調者がおると感付いておったのやも知れぬな」
「於寿には、当家の連雀に学ばせる手管を伝えてござりますれば、何かのお役には立てましょう」
 福助が言い添える。
「つまり、於寿殿は我等に先んじて天下の情勢を調べて伝えてくれると申すのか。しかし、娘御一人にそのような役を任せると言うのはのう」
 源兵衛が首をひねる。
「別所様のお言葉通り、わたくし一人で出来ることなど高が知れております。さりながら、腕の確かな供を連れて参りますれば、ご懸念は無用に存じます」
 於寿が微笑むと、それが合図であったかのように二人の男が入室し、於寿の左右を固めるように静かに進み出る。
 二人のうち、細身の男が甲之進、堅肥りの男が乙蔵とそれぞれ名乗った。
 いずれも所作は穏やかであるが、歩き詰めで鍛えられた足腰の頑健さが伺えた。
(確かに、このような者が補佐につくのであれば頼もしい)
 次郎らは顔を見合わせ、うなずき合った。
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