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第陸章 風の名残
弐
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仕合せ屋の空気が、緩やかに流れている。
利吉はいつものごとく、釜とにらめっこで、美代もまたいつものように、湯につかる銚子を見つめてだんまりであった。
あたりに蕎麦のいい匂いが漂い、墨田の川面はいつものように穏やかである。
それは、北川が何度も見てきた、いつでも味わってきた仕合せ屋の風景であり、あきれるほどの日常。
しかし。
やっぱり、俺の来て良い所ではなかったな。
北川は、後悔していた。
利吉は、大人だ。しかも、それなりの修羅場をくぐってきた苦労人でもある。こうして現われた北川ともいつものように会話を交わし、そして何事もなかったかのように蕎麦を作る。本当は、発狂してしまいそうな葛藤を心の最奥に隠してるだろうはずなのに、だ。
しかし、美代は。
確かに、その本当の年齢は十九なのかも知れない。しかし、たとえ十九だったとしても、自分のしでかした事の重みに耐えられるような年齢ではない。耐えられようはずもない。
役目がら北川は、事件のたびに心に傷を負った若い娘を目の当たりにしてきた。そしてそんなときは、構わず過ぎ去る時間と起きた事からの逃避が心を癒すまで、その全てから遠ざけておかなければならないなんてことは百も承知のはずだった。
しかし、北川はここに来た。
少なくとも、今の美代に、北川の顔を見せていい事なんか一つだってない。
親の敵で、同時に、共に親を殺した男の顔なんざぁ……な。
「へい、お待ちです」
北川の心配事をよそに、利吉が本当にいつも通りに蕎麦を差し出す。
そして、やはりいつも通り、その蕎麦は、白く沸き立つ湯気と共に素晴らしい香気を漂わせていた。
初めてここにきた時と、まったく同じに。
「おう、すまねぇな」
「いえ、蕎麦屋ですから」
いつもらしくなく、蕎麦一杯に妙に恐縮していた北川に、利吉が軽く微笑みながらそう言った。
「ちげぇねぇ」
北川は、自分が若干構えすぎている事に気付き、頭をかいた。
たとえ今日、ここに現われた事が間違いだったとしても、現われてしまった以上、どうにもならない。
蕎麦くらいは、味わってゆこう。
北川は、そう思いきって、蕎麦の汁をすすった。
ああ、うめぇ。
北川の、凝って固くなった心を溶かす様に、かつおの効いた出汁がすうっとしみわたっていく。
「おい、美代、熱燗はまだなのか」
蕎麦をすすりはじめた北川を、満足げに確認すると、利吉は振り返ってそう怒鳴った。
その怒鳴り声に、溶けかかった北川の心がまた瞬時に凍り付く。確かに、蕎麦の前に酒が出ていないのは、普段の美代なら考えられない失態だ。しかし、北川にそのことを責める事は、出来ない。
ふと「まずは酒を一口飲むもんだよ」そう語りかけた、初めて見た時の美代の姿が北川の脳裏に浮かぶ。
もうここにはいない、美代の姿が。
「良い、良い利吉。それよりな、今日は、全ての件が丸く収まったと伝えに来たのだ」
そんな幻影を振り払うように北川がそう言うと、利吉は急に真面目な顔になって北川に向き直った。
「へぇ、じゃぁ……」
「ああ、お咎めは……なしだ、おめぇも、もちろんお美代もだ」
「そうですかい」
心底ほっとした風情で利吉はそう言うと、嬉しそうに前掛けで両の手を拭った。
そしてもう一度美代の方を振り返り「良かったなぁ」と一言呟くと、また北川に向き直った。
「本当に、ありがとうございます」
利吉の、その善良で誠実な態度が、北川には痛くて痛くて仕方がなかった。
俺は、本当に礼を言われるような事をしたのだろうか?そんな問いが、北川の頭から消え去る事はないのだ。
「いや、第一はじめから、おめぇらは被害者みたいなもんだしな。それに、藤五郎だ、浅草の。この件を荒立てれば、初めのところであいつのついた嘘が問題になる。生き残りの美代とおめぇを隠した事がな」
「へぇ」
「それはな、こちら的にはまずいのだ。江戸を騒がす疾風について、目明かし風情が町方に隠し事をしたなんて事になれば、奴に手札を出している役人に累が及ぶ。それに……」
北川は、少し口ごもった。
しかし、この男に、利吉に対して北川が隠して良い事など、もうみじんもない。
「俺のやった事も、横紙破りの出過ぎた真似でな。結果疾風を討ったから良いものの、北町も南町も、大いに面目をつぶされて……な」
「それは、大変で」
利吉は、北川に同情するようにそう言った。
「たいしたことではない、いつか言ったであろう、あの世界はやっかみの世界なんでな。ここで、藤五郎の事が表に立てば、町方と加役のいざこざに発展しかねないのだよ。そうなれば、その上の諍いに…な」
そう言いながら北川は、自分の話している内容がいかに馬鹿げているのかを感じて、苦々しい思いに駆られていた。
役人の縄張り争いに、上役の面子。いま、利吉が、何より美代が抱え込んでいる、重く暗い影に比べれば、あきれるほどに馬鹿げている。
くだらねぇ……な。
北川は、低く大きく、ため息をついた。
「でも北川様、そのおかげであっしら親子は救われたんですから、あっしらには、ありがたい話でございますよ」
利吉は、あくまで、にこやかで前向きだ。
その態度が、少し嫌みに感じられるほどに。
まるで、一度は添った女の死にも、何より深く傷ついただろう娘の心にもそんなものなんでもないかのような利吉の態度が、北川には、鼻についた。だから、聞かずにはおれなかった。
「なぁ、利吉」
「へぇ」
「おめぇは、なんでそんなに平気そうなんだ」
北川の問いに、その場の空気が凍り付いた。
利吉の表情もまた、同じように。
「俺が言うのも、なんであるがな、今回の事は、決してそう簡単に吹っ切れるものでもあるまい。第一、美代の事を考えれば……」
と、そこまで口にした所で、北川は急に息を呑んだように言葉を止めた。そして、視線を一点にとどめたまま、固まった。
「どうしましたんで……」
利吉はそう言うと、北川の視線を追う。
そこには、美代が立っていた。
「み……美代、おめぇ熱燗はどうした」
口ごもりながらそう問いかけた利吉の言葉を、美代はまったく気に留めず、ゆっくりと北川に近寄り、静かに口を開いた。
「じゃぁ、なんで、なんでおじちゃんは……」
言葉の一つ一つが、凍えていた。
そして、その身体にまとった冷気は、あの日あの御堂で見たものとそっくりだった。
「なんで、わたしを斬らなかったの?」
疾風そっくりの冷気で、美代はそう言った。
「なんで、殺してくれなかったの?」
表情のない瞳から、一筋の、なんの温もりも感じられない涙が、つーっとこぼれた。
「なんで、なんで殺してくれなかったのよぉ!」
美代の叫びが、仕合せ屋に響き渡る。
北川の心を貫いて。
響く。
利吉はいつものごとく、釜とにらめっこで、美代もまたいつものように、湯につかる銚子を見つめてだんまりであった。
あたりに蕎麦のいい匂いが漂い、墨田の川面はいつものように穏やかである。
それは、北川が何度も見てきた、いつでも味わってきた仕合せ屋の風景であり、あきれるほどの日常。
しかし。
やっぱり、俺の来て良い所ではなかったな。
北川は、後悔していた。
利吉は、大人だ。しかも、それなりの修羅場をくぐってきた苦労人でもある。こうして現われた北川ともいつものように会話を交わし、そして何事もなかったかのように蕎麦を作る。本当は、発狂してしまいそうな葛藤を心の最奥に隠してるだろうはずなのに、だ。
しかし、美代は。
確かに、その本当の年齢は十九なのかも知れない。しかし、たとえ十九だったとしても、自分のしでかした事の重みに耐えられるような年齢ではない。耐えられようはずもない。
役目がら北川は、事件のたびに心に傷を負った若い娘を目の当たりにしてきた。そしてそんなときは、構わず過ぎ去る時間と起きた事からの逃避が心を癒すまで、その全てから遠ざけておかなければならないなんてことは百も承知のはずだった。
しかし、北川はここに来た。
少なくとも、今の美代に、北川の顔を見せていい事なんか一つだってない。
親の敵で、同時に、共に親を殺した男の顔なんざぁ……な。
「へい、お待ちです」
北川の心配事をよそに、利吉が本当にいつも通りに蕎麦を差し出す。
そして、やはりいつも通り、その蕎麦は、白く沸き立つ湯気と共に素晴らしい香気を漂わせていた。
初めてここにきた時と、まったく同じに。
「おう、すまねぇな」
「いえ、蕎麦屋ですから」
いつもらしくなく、蕎麦一杯に妙に恐縮していた北川に、利吉が軽く微笑みながらそう言った。
「ちげぇねぇ」
北川は、自分が若干構えすぎている事に気付き、頭をかいた。
たとえ今日、ここに現われた事が間違いだったとしても、現われてしまった以上、どうにもならない。
蕎麦くらいは、味わってゆこう。
北川は、そう思いきって、蕎麦の汁をすすった。
ああ、うめぇ。
北川の、凝って固くなった心を溶かす様に、かつおの効いた出汁がすうっとしみわたっていく。
「おい、美代、熱燗はまだなのか」
蕎麦をすすりはじめた北川を、満足げに確認すると、利吉は振り返ってそう怒鳴った。
その怒鳴り声に、溶けかかった北川の心がまた瞬時に凍り付く。確かに、蕎麦の前に酒が出ていないのは、普段の美代なら考えられない失態だ。しかし、北川にそのことを責める事は、出来ない。
ふと「まずは酒を一口飲むもんだよ」そう語りかけた、初めて見た時の美代の姿が北川の脳裏に浮かぶ。
もうここにはいない、美代の姿が。
「良い、良い利吉。それよりな、今日は、全ての件が丸く収まったと伝えに来たのだ」
そんな幻影を振り払うように北川がそう言うと、利吉は急に真面目な顔になって北川に向き直った。
「へぇ、じゃぁ……」
「ああ、お咎めは……なしだ、おめぇも、もちろんお美代もだ」
「そうですかい」
心底ほっとした風情で利吉はそう言うと、嬉しそうに前掛けで両の手を拭った。
そしてもう一度美代の方を振り返り「良かったなぁ」と一言呟くと、また北川に向き直った。
「本当に、ありがとうございます」
利吉の、その善良で誠実な態度が、北川には痛くて痛くて仕方がなかった。
俺は、本当に礼を言われるような事をしたのだろうか?そんな問いが、北川の頭から消え去る事はないのだ。
「いや、第一はじめから、おめぇらは被害者みたいなもんだしな。それに、藤五郎だ、浅草の。この件を荒立てれば、初めのところであいつのついた嘘が問題になる。生き残りの美代とおめぇを隠した事がな」
「へぇ」
「それはな、こちら的にはまずいのだ。江戸を騒がす疾風について、目明かし風情が町方に隠し事をしたなんて事になれば、奴に手札を出している役人に累が及ぶ。それに……」
北川は、少し口ごもった。
しかし、この男に、利吉に対して北川が隠して良い事など、もうみじんもない。
「俺のやった事も、横紙破りの出過ぎた真似でな。結果疾風を討ったから良いものの、北町も南町も、大いに面目をつぶされて……な」
「それは、大変で」
利吉は、北川に同情するようにそう言った。
「たいしたことではない、いつか言ったであろう、あの世界はやっかみの世界なんでな。ここで、藤五郎の事が表に立てば、町方と加役のいざこざに発展しかねないのだよ。そうなれば、その上の諍いに…な」
そう言いながら北川は、自分の話している内容がいかに馬鹿げているのかを感じて、苦々しい思いに駆られていた。
役人の縄張り争いに、上役の面子。いま、利吉が、何より美代が抱え込んでいる、重く暗い影に比べれば、あきれるほどに馬鹿げている。
くだらねぇ……な。
北川は、低く大きく、ため息をついた。
「でも北川様、そのおかげであっしら親子は救われたんですから、あっしらには、ありがたい話でございますよ」
利吉は、あくまで、にこやかで前向きだ。
その態度が、少し嫌みに感じられるほどに。
まるで、一度は添った女の死にも、何より深く傷ついただろう娘の心にもそんなものなんでもないかのような利吉の態度が、北川には、鼻についた。だから、聞かずにはおれなかった。
「なぁ、利吉」
「へぇ」
「おめぇは、なんでそんなに平気そうなんだ」
北川の問いに、その場の空気が凍り付いた。
利吉の表情もまた、同じように。
「俺が言うのも、なんであるがな、今回の事は、決してそう簡単に吹っ切れるものでもあるまい。第一、美代の事を考えれば……」
と、そこまで口にした所で、北川は急に息を呑んだように言葉を止めた。そして、視線を一点にとどめたまま、固まった。
「どうしましたんで……」
利吉はそう言うと、北川の視線を追う。
そこには、美代が立っていた。
「み……美代、おめぇ熱燗はどうした」
口ごもりながらそう問いかけた利吉の言葉を、美代はまったく気に留めず、ゆっくりと北川に近寄り、静かに口を開いた。
「じゃぁ、なんで、なんでおじちゃんは……」
言葉の一つ一つが、凍えていた。
そして、その身体にまとった冷気は、あの日あの御堂で見たものとそっくりだった。
「なんで、わたしを斬らなかったの?」
疾風そっくりの冷気で、美代はそう言った。
「なんで、殺してくれなかったの?」
表情のない瞳から、一筋の、なんの温もりも感じられない涙が、つーっとこぼれた。
「なんで、なんで殺してくれなかったのよぉ!」
美代の叫びが、仕合せ屋に響き渡る。
北川の心を貫いて。
響く。
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