仕合せ屋捕物控

綿涙粉緒

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第肆章 風の行方

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「なぁ利吉、ここでお前の話を聞く事は、美代を今すぐ助けに行く事より……大切なんだな?」

 北川は、利吉に一瞥もくれることなく、巨大な庭石を眺めながら、低く問いかけた。

 利吉は、それに、即答する。

「へい」

 きっぱりと、迷いなく。

 江戸最凶の賊に娘を囚われている人間の返事とは、思えなかった。

「ふぅん、ま、良い。でもな、最初におめぇの話を聞く前に、俺の質問に答えちゃくれねぇか?なぁ、利吉、おめぇはなぜ……生きてやがる?」

 太平は殺された。

 美代は……なぜだか、さらわれた。

 それは、わかろうと思えばわかる、美代は女だ、さらう理由は山ほどある。しかしだ、利吉が殺されない道理だけはどうしてもわからない。

 疾風だぜ……殺すだろ……いらねぇ奴は……。

 太平のようにな。

「ごもっともでございます。実は、あたしにもよくわからなかったんですが、これを見て合点がいきました。これです」

 そう言って利吉は、一枚に手紙を差し出した。

 ……また、手紙か。

 北川はそれを、苦々しげに受け取る。

『北川様、桜の散り残りと共に、桜の主の眠る御堂まで、もしも返して欲しいなら、いらしてくださいませ』

 桜の散り残り?

「こらぁ、なんでぇ?」

 利吉は、北川の問いに、静かに答える。何かを観念しているかのようであった。

「へぃ、桜の散り残りとは、たぶんあたしの事です。あたしは、あの桜屋の生き残りでございますから」

 ふぅん。しかしそれにしては……。

「確かに、藤五郎の言う事にはおめぇは桜屋で疾風と関わりがある。しかし、だ、おめぇを殺めたいならここでバッサリやっちまえばすむことだろ?」

 北川は腕組みをしてそう尋ねた。

 相変わらず、利吉の顔を見ようとしない。

「へぇ、それは北川様の言う通りでございますが、あたしが思いますには、疾風の野郎は、あたしと北川様を並べて殺めたいのだと思うのです。美代の、目の前で」

「……なんだと?」

 北川はやっと利吉の顔を見た。表情のまったく失せてしまった、木偶人形のような利吉の顔を。

「あいつは……疾風の野郎は……取り戻したいんですよ。仮の父親のあたしと、父親のように美代が慕う北川様から……」

 利吉は、北川の瞳をのぞき込むように凝視した。 瞳に映る熱と色をなくした表情が、なんとも似つかわしくなく、不気味に北川には感じられた。利吉は、何かを決意している。そんな顔だった。

「取り戻したいんですよ……疾風は……」

「……あの野郎の、娘を」

 その一言に、北川は弾かれるように立ち上がって叫んだ。

「な、なんだと!てめぇ、今いったいなんて言いやがった!!」

 北川は利吉の胸ぐらをつかんだ。

 それがなぜなのか、北川本人にもまったくわからなかったが、その時北川の心に沸き上がった感情は……。

 ……怒りだった。

 間違いなく、怒りだった。

「落ち着いて……くだせぇ……」

 利吉は、北川の手をつかんで、そう、苦しそうに呟いた。

 苦しそうに呟きながらも、やはり、表情は死んでしまっている。

 北川はゆっくりと手を離し、利吉の身体を突き飛ばした。そして、眼下にへたり込む利吉に、絞り出すように言った。

「落ち着けると……思うか?」

 そうだ、落ち着けるはずなどなかろう。

 湊屋を殺め、何より太平をこんな目にあわせやがった、あの大悪党が、あの腐れ外道が……。
 
 ……美代の父だと?!

 落ち着けるわけねぇ。

「へぇ、北川様のおっしゃりようももっともでございます。あたしも、初めに美代に聞いた時は三日三晩寝付けませんでしたから……疾風は……美代の父親は……」

 利吉は、膝を見つめながら呟いた。

「……妻の敵(かたき)ですから」

 それを聞いた北川は、すっと血の気の引く思いがして、へたり込むように縁側に腰を下ろした。

 そして、太平の死を目撃した時からずっと、混乱のあまり取り乱し続けていた自らの不明を、恥じた。

 北川は、大きく一つ息を吸い、ゆっくりと吐く。

 そうか、そうであったな。その現実が一番堪えるのは、俺ではなく、利吉の方よな。

「すまなかった、俺も少し興奮しておったようだ。わかった、しかし、俺が藤五郎に聞いた話では……」

 そうだ、北川が藤五郎に聞いた話には、そんな衝撃的なくだりは登場しなかった。

 北川が藤五郎に聞いた話はこうだ。

 押し込みを働き、店の者を皆殺しにした疾風は、美代を見てこう言ったそうだ。

「娘、今日は江戸で初めての仕事だ。祝いにおめぇだけは生かしてやるぜ」

 と。

「それでも、そんなことするのはおめぇが最初で最後だ。良かったな、おめぇは運が良い」

 と。 

 北川は、藤五郎のところで聞いてきた話を、そのまま利吉に話して聞かせた。

「ええ、その通りでございます、お美代が藤五郎親分に話したのは、そうに違いございません」

 利吉は語る。

「しかしそれは、先ほど北川様が出て行く前にお美代が言った通り、間違ってございます」

 ああ、そうであった。

 北川は、はたと膝を打った。

 確かに、そう、確かに利吉の言う通り、北川が出て行く直前に美代はそんな事を言っていた。

「でもね、おじちゃん。それは間違ってる」と。

 利吉は、遠くを見つめて話し始めた。

「あの日、あたしは、それは藤五郎親分のおっしゃる通り、近くの粉問屋に出かけ、酒をごちそうになってそこに泊まり込んでおりました」

 確かに藤五郎は、そんな事を言っていた。そして、ちょうどその晩に事は起こったのだ……と。

「押し込みのあった後、店に駆けつけたあたしは、美代が藤五郎親分に一部始終を話す所に出くわしました。そして、藤五郎親分の計らいで、もしもの時のために、屋台担ぎの蕎麦屋として身を隠すように算段を受けたのです」

 それも、藤五郎の言っていた通りだ。

 盗賊の気なんてものは変わりやすいもんだ。ころっと気を変えて美代を殺しにくるとも限らないし、生き残りの利吉の存在も危ない。

 そこで藤五郎は、利吉と美代を信州に蕎麦修行に出し、ほとぼり冷めたと見るや、夜の夜中にしか店を出さない屋台担ぎにして、夜の底に沈めた。

 それも聞いた、それも。

「でもですね、北川様。そこからがあるんでございます」

 そう、聞いていないのは……そこからだ。

「その日の、つまり藤五郎親分に話を聞かせたその夜に、美代は、かしこまってこう言うのです」

 利吉は、声色を変えていった。

「とおちゃん、私嘘ついちゃった……と」

 嘘、か。

「美代が言うには、疾風は美代が自分の本当の娘なんだと、言ったんだそうです……間違いなく、血を分けた娘だと」

「じゃ、じゃぁ」

 北川の脳裏に、一つの事柄が浮かぶ。

 疾風が親なら、父親なら、その母親であるおけいは……。

 利吉は、北川の言わんとする所を察して、頷いた。

「ええ、死んだおけいは……引き込みでしたんですよ。疾風の一味でございますよ」

 利吉は悔しそうに続けた。 

「それは美代の言ったことじゃございませんが、おけいが引き込みではないかという事は、藤五郎親分から聞きました」

 悲しい、震える声が、真実を紡ぐ。

「つまりですね、北川様、疾風の野郎は、自分の妻と娘を桜屋に忍び込ませていたんですよ。そして、その妻を殺して、娘を……泳がせたって事になるんでさぁ」
 
 北川は、利吉の言葉に頭を抱えた。

 そして、その真実の中身を噛みしめるほどに、北川は、自らを恨んだ。ここ数ヶ月、美代が自分と出会ったがばっかりに、どれほど痛い想いをしていただろう。と思うと、居ても立ってもいられなかった。

 俺が持ち込んだ厄介事は……。

 実の親子の争い事やら、押し込みやら、引き込みやら何やら。

 疾風の事だって。

 それらはみんながみんな、美代の隠しておきたい傷を引き出して、掻きむしる様な事じゃねぇか……。

 痛かったろうなぁ、苦しかったろうなぁ。

 北川は、眉間に皺を寄せ、重いため息をついた。

「俺の手伝いなど、したくはなかったろうに……」

 北川の脳裏に、間抜け面で美代に謎解きをさせる自分の顔が浮かんだ。

 それに対して美代は、自分と疾風の関わりを知られないように、藤五郎が用意した隠れ蓑の中に収まっていられるように、精一杯疑われまいとした。疑われぬように、北川を助けた。

「悪党は……俺だ」
 
 北川は、そう呟いて唇を噛みしめた。 

「美代は、恨んでおるだろうな……この北川を」

 月を見ながら、北川はため息と共にそう呟く。

 しかし、利吉はぶんぶんと首を横に振り、北川にこう言った。

「それは違います。話には続きがございますんで」

「まだ……あるのかい」

 どっちにしろ、この話を聞いた後には、美代を助けに行かなければならない。しかし、命の保障がある限り、それには出来るだけの事を知っておく必要がある事も、北川にはわかっていた。

 悪党を信じるってのも癪に障るが。

 それに、北川には、少なからずの好奇心も、あった。

 同時に、もうこれ以上美代と疾風の関わりを知りたくない気持ちに支配されつつもあった。疾風と美代の関わりが深くなっていくほどに、あの、美代が、汚されていく。そんな思いだった。

「ふう……」

 自分でもどうしたいのかわからない、そんな散らかった心を抱えて北川はうなる。

 しかし利吉は、お構いなしに続けた。

 北川がどんな心持ちを抱えていようと、利吉には、話さなければならない、理由がある。

「あの晩疾風は、美代にこう言ったそうなんですよ」

 いつしか利吉は、こぶしを握りしめていた。

 抱えてきた秘密の重さにつぶされぬよう、踏ん張っているのだ、利吉も。

 今まさに、戦っているのだ。

「美代が自分の娘であると明かして。その後で、言ったんだそうです」

 そして利吉は……核心を話した。

「お前は自分の子供だから、間違いなく血を分けた娘だから、お前が立派な娘になったその時には、お前を迎えに行く……と」

 迎えに……だと……?

 北川の怪訝な顔をよそに、利吉は、最後の、彼の知る本当に最後の秘密を話した。

「そして、次の疾風は……お前だ。ってね」

 な、なんて……こった……。

 北川は、もう驚く気力も失せ果てて、その場で月代をぴしゃりと叩くと「ううう」と唸った。

 あまりに目の前で語られる出来事が、大きく、そして苦しすぎた。頭が、心が、その事実を飲み込むことを全力で拒絶しているようだった。

 北川はぐっと目を閉じた。そして、なにがしかの感情を頭の奥に押し込んで、訪ねた。

「それで……さらたってのかい?」

 利吉は頷いた。

「へぇ、そうです。そうとしか考えられねぇんです」

 とうとうその日が来た、利吉はそんな思いを乗せてそう言い切った。

 この日に怯えながら、ずっと今まで生きてきた利吉が、今何を思っているのか、何を思い何を感じているのか、北川にはわからない。ただ、その日々の重さを思って、北川は利吉の苦悶に歪む顔を見つめた。

 そして、自分の手のひらを見つめる。何もできず、何も言えず、ただ、見つめる。

 そんな北川に、利吉は続けた。

「でもです、北川様、美代は、北川様に出会ってから、本当に元気になったんですよ。加役である北川様が近くにいる事は、美代にとっては心休まるものだったにちがいねぇ」

 小さな声で、でもしっかりと利吉はそう言った。

 しかし、北川の心は晴れない。

 それでも、結局さらわれちまったじゃねぇか。

 北川は痛いほどに握られたこぶしで、自らの足をぶった。

 この俺は、加役だ火盗検めだと威張っても、あんなちいせえ小娘一人守れねぇのか。あんな子供一人守ってやれねえほど、この俺は無能な男なのか、と。

 あんなちいせえガキ一人……。ん?

 ふと、ある小さな引っかかりに気づいて、利吉に尋ねた。 

「な、利吉。疾風の野郎は、美代が立派な娘になったらと言ったのだな?」

 北川の問いに、その真意を測りきれないまま利吉は「へぇ」と答えた。

「立派な娘といえば、普通話は若くとも十四、十五の娘のこった。それなら、まだ早すぎやしねぇか?美代はまだ、娘と呼ぶには……」

 北川の言葉を最後まで待たず、利吉は言葉尻をとって続けた。

「ええ、美代は、まだ頑是無い小娘に見えます。でもね北川様、藤五郎親分のところで美代とあたしの話を聞いて、おかしいと思いませんでしたのですかい?美代は、いくつだと思っていらっしゃるんで?」

「何だと?」

 と小さく呟いて、北川は藤五郎の家で聞いた話を思いだし……そして息をのんだ。

 利吉の妻、つまり引き込みのおけいが美代をつれてきたのが利吉が桜屋に入って十五年の後。そんな利吉が桜屋に奉公に上がったのは三十年前だ。

 桜屋に疾風が押し込んだのは、それより三年の後。つまり今より十二年前。

 そしてその時の美代は、七つのガキだった……って、ことは。

 ……おい、嘘だろ。

「り、利吉、藤五郎のいう事がほんとなら、美代は、美代の奴はもう……十八、九になるってのか?!」

 そんなはずはない。あるはずがない。

 あれはどう見たって十二、三の、ガキだ。時によって大人びた顔をのぞかせる事もあったが、あんな大人はいやしねぇ。子供っぽいなんて範疇の、それじゃねぇ。

「へぇ、あたしも不思議で仕方がございませんでした。でも、美代の奴は十一の頃に月の障りが出てからは、まったくといっていいほど身体が育たなくなったんでございますよ」

「そんな事が……あるのかい?」

 北川は信じられないといった風情で利吉に尋ねた。

「へぇ、あたしも、いまだに信じられません。しかし、小石川の先生がおっしゃいますには、中には稀にそう言うのがあるんだという事です。何かの理由で、心に強くに大人になりたくないと思いこむと、心が身体を押さえ込んで……」

 そんな……ことが、ほんとに。

 北川には途中から利吉の話が耳に届いてはいなかった。そして、美代の心と、その身体に起こった不思議を思っていた。月の障りが、美代に大人になってゆく事実を突きつけたその時。美代は、身体の育ちを押さえ込んでしまうほどに、大人になる事を拒絶した。

 それはなぜだ?

 それは……決まってるじゃねぇか、あいつは疾風のところになんざいきたかねぇんだ。

 立派な娘にさえならなければ、ずっと頑是ない子供でいれば、疾風のところに行かず、ずっと蕎麦屋の娘でいられる。そう思ったから以外にねぇじゃねえか。実の親だろうと血の繋がりがあろうとも、あいつは疾風を父親だなんて思っちゃいねぇんだ。あいつは悪党になんてなりたくない、いや、そうじゃない、あいつは、利吉の元を離れたくないんじゃねぇか。

 あいつは……血になんて縛られちゃいねぇ。

 血の方が、勝手にあいつを縛ろうとしてるだけだ。

「利吉!」

 北川は立ち上がって叫んだ。

「へ、へぃ」

「おめぇが、どう思ってようと疾風の思惑がどうであろうと関係はねぇ、これが罠でもかまいやしねぇ」

 北川は利吉の肩をつかんで、強引にその場に立たせた。

「でもな、俺は、もう一時も、いや刹那の間でも、美代と疾風を一緒にしておきたくはねぇんだ。あいつを、美代の奴を、もうほんの少しの間でも、おめぇから離しておきたくはねぇんだ」

 利吉は、ただ呆然と立ち尽くしている。

「話は、後だ、今すぐ美代を取り返しに行くが……良いな?」

 北川の言葉に、それまで表情を失ってしまっていた利吉の顔に、涙があふれて出た。

 こわばっていた顔が、雪解けを迎えるように、ゆるゆると溶ける。

 利吉も、悩んでいたのだ。

 育ての親でしかない自分という存在の、しがない蕎麦屋でしかない自分自身の引け目で、利吉も、迷っていたのだ。

 実の親から、美代を取り戻して良いものか……と。たとえそれが悪党でも、本当の父親から引き離してもよいのか……と。

「いいな!!」

 北川はもう一度叫んで、一喝した。

「へい!!」

 長年の相棒のように、利吉は答えた。

 利吉の瞳に、迷いの色はどこにもなかった。

 利吉は父親であることを選んだのだ。父親として、悪党から娘を取り戻す、そう決心したのだ。

 そんな利吉の瞳の色を確認して、北川は強く言い放った。

「もう、おわりにしようや」

 そう、終わりにしよう。

 なぁ、美代。

 北川のおじちゃんが、おめぇの因縁も血の呪いも、何もかもみんな叩き斬って、おめぇを自由にしてやるからよ。この俺が、何もかもみんな終わりにしてやる。

 だから美代。

 もう少し、良い子で待ってるんだぜ。

 心に浮かぶ美代の顔に、そう力強く宣言した北川の身体を、青い月が優しく照らす。
 
 時は、一刻の猶予もなかった。
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