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第参章 縁
弐
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そんな夜半の出来事からさかのぼる事、同日の朝方。
北川が尋ねていったその家は、浅草の観音様から少しのところにある、どこにであるような貧乏長屋にあった。
もう十日も前、あの疾風の一件以来、北川は、もてるすべてのつてや渡りを利用して、あの親子の事を調べ回っていたのだ。
ところが、いっこうに何も出てこない。
北川の探索下手のせいなのか、それとも何かの裏があるのかは知らないが、親子の住処を捜し当てるのが精一杯で、その氏素性となるとさっぱりであった。
そこで思いついたのが、蕎麦の味。
この上なく心許ない手がかりであるものの、ここに至ってそうそう贅沢は言っていられない。確か、仕合せ屋のあの蕎麦の味は、浅草観音裏の喜多屋の味だった。
そう思いついて行き着いた所が大当たり。
浅草一帯を縄張りにしていた目明かしの親分が、どうやらあの二人を知っているという所まで突き止めたのだ。
太平を通じて、話は通してある。
しかし……こんな荒れ屋住いとはねぇ。
一見には、誰も住んでいないような風情のその家は、閉め立ててある表戸の意味もないくらいに穴だらけで、いやなにおいを発してる。
「こりゃ、相当に偏屈のすみかだな」
その家の前で、北川がそうつぶやいたのも無理もない事だ。
「おぉい、いるかい」
その破れ放題の戸の前で、北川がそう大声を出すと、中から「へぇってきな」と嗄れた声が返ってきた。
北川は眉をひそめた。
仮にもこちらは士分である。そして、中にいる男はそのことを重々承知のはずだった。昔は相当聞こえた男でも、素っ町人の目明し風情が「へぇってきな」とは恐れ入る。が、その程度でへそを曲げる北川でもない。
けっ、なれっこだよこっちぁ。
「そうかい、それじゃ、じゃまするぜぇ」
中の男に負けじと、またぞろ町人のような口調になってそう言うと、北川は、その建て付けの悪い戸をこじ開けて、家の中へと入った。
うへぇ。
入るなり、北川は心中で深くため息をついた。
薄暗いのはどこの長屋でも同じであるが、見た目に暗いのではなく、雰囲気がなんとも陰気くさい。何もかもが、うっすら埃をまとっているのか、妙に空気が粉っぽく、かびくさい。しかも、外からも感じたにおいは、どうも水瓶のにおいらしく、百両積まれても飲みたくないような水がたまってる事を容易に想像させた。
こんな一時で病気になりそうなところで、これで住人は長生きだってんだから、世の中わからねぇよなぁ。
「一人暮らしなんでね、行き届かないもんさ」
突然、奥の方から声がした。まるで北川の心中を読んだかのように。
あわてて北川は声のした方を見ると、揉んだあと引き延ばした鼻紙のような年寄りが、半分布団にくるまれて横たわっていた。
あまりに薄っぺらで、布団のふくらみがほとんどない。
「おめぇさんが、藤五郎かい?」
年寄りは、身体を起こすでもなく、寝転がったまま顔だけこちらに向けると「ああ」と小さくうめいた。
皺くちゃの顔に光る眼光が、やけに鋭い。
ほぉ、老いてなお……てやつか。
「浅草の藤五郎親分って言やぁ起きあがってくれるかい」
北川は皮肉混じりでそう言った。
「すまねぇな、こちとら心の臓を病んでいて、もう長くねぇんだ」
どうやら皮肉は通じなかったのか、野太い声で藤五郎はそう言うと、ギロリと北川を睨んだ。
ふ、長くねぇとはとうてい思えねぇ迫力じゃねぇか。
北川は、ほくそ笑みながら鼻の頭をなでると、上がりかまちに腰掛けた。
「いいさ、寝たままで。わしの方もな、用件だけ聞けばそれで良いんだ」
すると藤五郎は、北川の顔色を伺うように言った。
「今さらあのときの話を聞いて、どうしようって言うんですね」
事の子細は、もうすでに太平を使いにやって通してある。なのに、藤五郎はやけに警戒しているように北川には思えた。
「そりゃおめぇには関わりねぇことさ。わかるだろ、な」
北川の言葉に、藤五郎は「ふぅ」っと重たい息を吐いて、ゆっくりと身体を起こした。そして、しっかりと布団の上に正座をすると、北川に正対して言った。
「利吉親子には、障りはねぇんですね」
北川は、聞き返した。
「利吉?」
「しらねぇんですかい?蕎麦屋の名前を」
それを聞いて、北川は盲点をつかれたような心持ちだった。
そう言えば、おやじの名前を聞いた事がなかったが……利吉ってのかいあいつは。
住処まで捜し当てておいて、そこをしらねぇとは、我ながら恐れ入る。
「ああ、そうだ、利吉と……お美代の話だ」
北川がそう言うと、藤五郎は真顔で念を押した。
「本当に、本当にあの二人の事は旦那に任せて良いんですね」
しつけぇな。
北川は思った。
そして、そのしつこさが、いやな予感を感じさせて、妙に心が騒いだ。ここまで念押ししなければ話せない事を、この年老いた大親分は話そうとしているのだ。
「ああ、大丈夫だ。俺が信じられないってんなら、俺の上役でも何でも信じてくれればいい」
北川がそう言うと、藤五郎は「じゃぁ」と言ってひとつ咳払いをした。
俺の上役もたまには役に立つ。
北川は自嘲気味にそう思って、頭を掻いた。
「で、どこから話せばいいんですね」
「そうさな、最初の最初かね」
藤五郎は、こめかみのあたりをぐりぐりと押さえて、そして話し始めた。
どうやらそうすると、昔の話も思い出せるらしい。
「もう、三十年近く前になりますか。利吉の奴は、練馬の方の農家の次男でしてね、まぁ、よくある貧乏百姓の家で、十二の時にはもう江戸に出てきて奉公って事になりましてね」
最初の最初とは言ったが……。
北川は少し後悔をしていた。年寄りの思い出話の長さを考えていなかったのだ。
こりゃ、長っ尻になるなぁ。
「そのころでさぁ、わしがれが利吉とあったのは。観音裏にあった桜屋って料理屋に奉公してましてね。まぁ、御店奉公なんてのはどこも同じで、丁稚なんてのは牛馬と同じ扱い。それも利吉の奴は、板場働きで、追廻なんてのは丁稚以下でしょう?」
なるほど、料理の腕はそこで。
しかし、桜屋ってのはどっかで……?
「ところがね、旦那。当時桜屋の花板だった幸助ってのがいて、こいつが利吉の舌に惚れ込みやしてね。そっから利吉はとんとん拍子で、十五の頃には、もう椀方をつとめてましてね」
ほぉ、そいつはすげぇ。
北川は、心底感心した。
椀方と言えば、花板に次ぐ二番手。奉公にでて3年やそこらで辿り着く所ではない。
あいつの蕎麦がうめぇわけだ。
「店の方もうまくいってましたんでね。あのころの桜屋は、本当にいい料理屋でした。経験よりも腕をとる花板と、天賦の才を持った利吉。まぁ、花板の幸助と店の主……ありゃなんていったけなぁ……そう左兵衛だ、その二人は諍《いさか》いをおこしてやしたが、それでも繁盛してましてね」
そこまで聞いて、北川は横やりを入れた。
「おい、何でぇその、花板と主の諍いってのは」
北川は、続けた。
「花板とは言え奉公人だろ?店の主と諍いってのは、そりゃちょっとおだやかじゃねぇ」
商家において主とは絶対的な権力者だ。奉公人が逆らいでもしたら、下手したら首が飛ぶ。主が死ねと言えば死ぬ、大げさだがそんな奉公人も珍しくはない。
すると藤五郎は北川の言葉を鼻で笑った。
「旦那は、料理屋ってのをわかっちゃいねぇ」
「そりゃどういう事だい?」
「料理屋ってのは、普通の御店とは違うんでね。働いてるのは、商人と職人。商人の頭が主なら、職人の頭が花板なんでさぁ。しかもあの当時の桜屋は、誰彼がみんな、幸助の腕で店がもってると思ってましてね…」
なるほどね、一つ屋根の下に頭が二つ……か。
北川は、言葉尻をうばって吐き出した。
「男の……妬心かい」
「へぇ」
藤五郎は、何の感情も込めずにいった。
「よくある事でさぁね」
よくある事、だなぁ、確かに。
「続けますぜ。まぁそれでも繁盛していた桜屋に、おけいの奴が来たのが、利吉が椀方になって十五年、三十の坂を越えた頃でした、確か、それぐらいだ」
「おい、おけいってのは誰だい」
二度目の北川の横やりに、藤五郎は露骨に不快そうな顔をした。
「順を追っていいますから、ちょっと黙っててくれませんかね」
そりゃすいませんね。
頭を掻きながら、北川はそうつぶやいた。
「おけいは、こりゃ人から聞いた話ですからね、ちゃんとはわからねぇが、西国の商家の娘だっていう事でしてね。なにがあったか、生家の商いがいけなくなったってんで、江戸に流れてきた女でしてね。身体売って、どこぞで女郎をやっていたところを見初められて、主の妾みてぇな形で桜屋に住み着いたんでさ」
これもまた、よくある話だ。よくある、惨い話だ。
「表向きは、女中として奉公に上がったんですがね、まぁ、その時につれていたのが、お美代でございますよ」
「なに?お美代?」
北川は、慌てて聞き返した。
なかなか核心に至らないかと思えば、唐突に、さらりとすごい事を話す。
「へぇ」
藤五郎は、北川の心を察したかのように即座に返事をし、そして、答えた。
「お美代は、おけいの連れ子ですよ。あの子は、利吉とは何の繋がりもねぇ」
藤五郎は少しためて、そして言った。
「赤の他人なんで」
やはりか。
北川の心に浮かんできたのは、驚きよりも、その言葉だった。
初めて会った時の、あの違和感は、間違っていなかった。
あの親子は、偽もんだ。
「なぁ、藤五郎。どうでも良い事ではあるが、そのおけいという女、さぞかし美しかったんであろうな?」
美代の顔が浮かぶ。人形のような白い顔、紅を塗ったような唇。
「それが……とんと覚えがないんですよ。会った事もあるんですがね。確かに美しい女のような心持ちはあるんですが、顔が、出てこねぇ」
藤五郎は、こめかみをぐりぐりとこねた。
「どうしても、出てこねぇんですよ」
そうかい。北川は残念そうにつぶやいた。
そして、おけいという女に会ってみたいと、心底思った。
「そのおけいという女、今どこにいやがるんだね?」
藤五郎は眉をひそめて答えた。
「いませんよ、もう、こっちの世にはね」
「死んだのか」
矢継ぎ早の質問に、また藤五郎はいらいらと北川を制した。
「せわしねぇ旦那だ、ちゃんと順序通りに話しますといってるでしょうよ」
ふぅっと大げさにため息をついて藤五郎はそう言った。
「あ、こりゃすまねぇ、続けてくれ」
なんとも、面倒な事だ。
「しかしね、旦那。表向きは女中といっても、見りゃわかるんでさ。おけいの本当の仕事はね。ところが桜屋は格のたけぇことが売りの料理屋、生臭い話は御法度で、客筋にも関わってくる」
確かにな。茶屋小屋じゃあるめえし、生臭ぇ色の話は、いい料理屋には似つかわしくねぇな。
「そこで主の頭に浮かんだのが……利吉でさ」
「利吉?」
「ええ、主にしてみれば、憎々しい幸助の一番弟子。汚い事をやらせて見せしめるには、うってつけの男だったんですよ」
そう言って、藤五郎は一息ついた。
そして、北川の顔をじっと見つめると、ゆっくりと次の言葉を吐いた。
「主の奴は、おけいと利吉を添わせたんですよ」
これには北川も驚いた。
驚いて、藤五郎を問いただす。
「添わせた?添わせたって、おめぇ。自分の妾と利吉の縁組みを結びやがったってのかい?」
「ええ」
藤五郎は笑っていた。
悲しそうに、笑っていた。
「いやな話でね。でもね、旦那。桜屋の主にしてみれば、自分から不義の疑いは遠のく、妾は大手を振るって家に囲える、その上……」
北川は、言葉尻をとって続けた。
「幸助には……格好の面当てになるって事か……」
「そういうわけでさぁ」
藤五郎も北川も、たぶん、同じ事を思っていた。
同じ事を思い、憤り、そして……人間の世にそのような事が日常的に存在する事を、知っていた。それらを見聞きする事が、彼らの仕事なのだから。
「でもね、旦那。かわいそうだったのはお美代でさぁ」
そうか、そうだったな。
「あのころお美代は、まだまだ小さな童で、なにかにつけ母親の恋しい時分でね。ところが妾ってのは、昼も夜もない。昼は身の回り、夜は下の世話ってんでね。お美代はいつも、寂しそうに利吉の足下に貼り付いておりやしてねぇ」
むりもねぇよなぁ。妾なんてものがわかる歳じゃねぇ、わからせていい歳でもねぇ。
「端から見ても、利吉とお美代は本当の親子みたいでしてね。根っから気が優しくて正直者で子煩悩な利吉は、そりゃいい父親だったんじゃないですかねぇ」
そう言って藤五郎は「それでも母親のかわりになるもんなんてありゃしませんがね」と付け加えた。
その通りだぜ……。
北川の目に、小さな美代の手を引く利吉の姿が浮かんだ。
今と同じように、表情の少ない美代が、てくてくと、若い利吉の後ろをついて行く様を。
似合いの親子だ。似合いの親子だぜ、お美代。
でも……。
寂しかったろうなぁ。
「でもね、旦那。わしがれは、それはそれで、美代も利吉も、おけいですら、幸せだったんだと思いますね」
藤五郎は目を細めた。
「そりゃ格好の良い生活じゃねぇし、恵まれていたわけでもねぇ。でもね、旦那、旦那ならおわかりでしょうがね、このお江戸にゃ、もっと獣みてえぇな生活をしてる奴は……佃煮にするほどいるんで」
北川はゆっくりと頷いた。
幸せなんてもんは、人それぞれだ。他人が外から値踏みしていいもんじゃねぇ。
「ところが、この利吉やお美代の幸せは、ある日突然地獄にかわるんでさぁ」
北川は、藤五郎の言葉に身を乗り出した。
「何?まだ何かあるのかい?」
藤五郎は、ほくそ笑みながら答えた。
「馬鹿いっちゃいけねぇよ、こっからが、本筋でさぁ」
なんてぇなげぇ前置きだ。
北川は、苦笑した。
そんな北川の苦笑いを無視して、藤五郎は続けた。
話の核心に向けて。
「ありゃ、おけいが桜屋にはいてから三年の後。美代がちょうど七つになったその年の、まだ松の内も明けきらねぇ正月の事でした。桜屋に、押し込みがありましてね。おけいはその時に死んじまったんで」
押し込み?!
「なんだって!」
北川は、立ち上がって叫んだ。
これまでのどの話も、それはそれで驚きの連続であったけれど、これに勝る驚きはなかった。
また……押し込みかい。
「どうしなすったんで、旦那?」
藤五郎は、小首を傾げていった。
「顔が真っ青ですぜ?」
北川は、震えていたのかも知れない。
頭の中で、たくさんの事柄が浮かんでは、ひとつの記憶をたぐっていた。
浅草……桜屋……押し込み……。
利吉……お美代……。
……疾風!!
そうだ、何で忘れてやがったんだ!
桜屋は、桜屋といえば。
「藤五郎、桜屋っていやぁ、まさか……」
藤五郎はゆっくりと答えた。
「ええ、お察しの通りでさぁ。桜屋は……」
突如、表に強烈な風が吹き、破れ放題の表戸から冷たい風が吹き込んできた。
狭い長屋の中に、ほこりが舞い上がる。
藤五郎は、それをものともせず言った。
「江戸で最初に疾風にやられた、店でさぁ」
「疾風の、最初の獲物でさぁ」
その言葉が出たとたん、吹き込む風がぴたりと止んだ。
そしてあとには、北川のうなり声が残っていた。
……知っているどころか、美代の母親は……。
「疾風に殺されてやがったのかよ」
……なんてぇ因果だ……。
北川は、無意識に刀の柄を握りしめていた。
北川が尋ねていったその家は、浅草の観音様から少しのところにある、どこにであるような貧乏長屋にあった。
もう十日も前、あの疾風の一件以来、北川は、もてるすべてのつてや渡りを利用して、あの親子の事を調べ回っていたのだ。
ところが、いっこうに何も出てこない。
北川の探索下手のせいなのか、それとも何かの裏があるのかは知らないが、親子の住処を捜し当てるのが精一杯で、その氏素性となるとさっぱりであった。
そこで思いついたのが、蕎麦の味。
この上なく心許ない手がかりであるものの、ここに至ってそうそう贅沢は言っていられない。確か、仕合せ屋のあの蕎麦の味は、浅草観音裏の喜多屋の味だった。
そう思いついて行き着いた所が大当たり。
浅草一帯を縄張りにしていた目明かしの親分が、どうやらあの二人を知っているという所まで突き止めたのだ。
太平を通じて、話は通してある。
しかし……こんな荒れ屋住いとはねぇ。
一見には、誰も住んでいないような風情のその家は、閉め立ててある表戸の意味もないくらいに穴だらけで、いやなにおいを発してる。
「こりゃ、相当に偏屈のすみかだな」
その家の前で、北川がそうつぶやいたのも無理もない事だ。
「おぉい、いるかい」
その破れ放題の戸の前で、北川がそう大声を出すと、中から「へぇってきな」と嗄れた声が返ってきた。
北川は眉をひそめた。
仮にもこちらは士分である。そして、中にいる男はそのことを重々承知のはずだった。昔は相当聞こえた男でも、素っ町人の目明し風情が「へぇってきな」とは恐れ入る。が、その程度でへそを曲げる北川でもない。
けっ、なれっこだよこっちぁ。
「そうかい、それじゃ、じゃまするぜぇ」
中の男に負けじと、またぞろ町人のような口調になってそう言うと、北川は、その建て付けの悪い戸をこじ開けて、家の中へと入った。
うへぇ。
入るなり、北川は心中で深くため息をついた。
薄暗いのはどこの長屋でも同じであるが、見た目に暗いのではなく、雰囲気がなんとも陰気くさい。何もかもが、うっすら埃をまとっているのか、妙に空気が粉っぽく、かびくさい。しかも、外からも感じたにおいは、どうも水瓶のにおいらしく、百両積まれても飲みたくないような水がたまってる事を容易に想像させた。
こんな一時で病気になりそうなところで、これで住人は長生きだってんだから、世の中わからねぇよなぁ。
「一人暮らしなんでね、行き届かないもんさ」
突然、奥の方から声がした。まるで北川の心中を読んだかのように。
あわてて北川は声のした方を見ると、揉んだあと引き延ばした鼻紙のような年寄りが、半分布団にくるまれて横たわっていた。
あまりに薄っぺらで、布団のふくらみがほとんどない。
「おめぇさんが、藤五郎かい?」
年寄りは、身体を起こすでもなく、寝転がったまま顔だけこちらに向けると「ああ」と小さくうめいた。
皺くちゃの顔に光る眼光が、やけに鋭い。
ほぉ、老いてなお……てやつか。
「浅草の藤五郎親分って言やぁ起きあがってくれるかい」
北川は皮肉混じりでそう言った。
「すまねぇな、こちとら心の臓を病んでいて、もう長くねぇんだ」
どうやら皮肉は通じなかったのか、野太い声で藤五郎はそう言うと、ギロリと北川を睨んだ。
ふ、長くねぇとはとうてい思えねぇ迫力じゃねぇか。
北川は、ほくそ笑みながら鼻の頭をなでると、上がりかまちに腰掛けた。
「いいさ、寝たままで。わしの方もな、用件だけ聞けばそれで良いんだ」
すると藤五郎は、北川の顔色を伺うように言った。
「今さらあのときの話を聞いて、どうしようって言うんですね」
事の子細は、もうすでに太平を使いにやって通してある。なのに、藤五郎はやけに警戒しているように北川には思えた。
「そりゃおめぇには関わりねぇことさ。わかるだろ、な」
北川の言葉に、藤五郎は「ふぅ」っと重たい息を吐いて、ゆっくりと身体を起こした。そして、しっかりと布団の上に正座をすると、北川に正対して言った。
「利吉親子には、障りはねぇんですね」
北川は、聞き返した。
「利吉?」
「しらねぇんですかい?蕎麦屋の名前を」
それを聞いて、北川は盲点をつかれたような心持ちだった。
そう言えば、おやじの名前を聞いた事がなかったが……利吉ってのかいあいつは。
住処まで捜し当てておいて、そこをしらねぇとは、我ながら恐れ入る。
「ああ、そうだ、利吉と……お美代の話だ」
北川がそう言うと、藤五郎は真顔で念を押した。
「本当に、本当にあの二人の事は旦那に任せて良いんですね」
しつけぇな。
北川は思った。
そして、そのしつこさが、いやな予感を感じさせて、妙に心が騒いだ。ここまで念押ししなければ話せない事を、この年老いた大親分は話そうとしているのだ。
「ああ、大丈夫だ。俺が信じられないってんなら、俺の上役でも何でも信じてくれればいい」
北川がそう言うと、藤五郎は「じゃぁ」と言ってひとつ咳払いをした。
俺の上役もたまには役に立つ。
北川は自嘲気味にそう思って、頭を掻いた。
「で、どこから話せばいいんですね」
「そうさな、最初の最初かね」
藤五郎は、こめかみのあたりをぐりぐりと押さえて、そして話し始めた。
どうやらそうすると、昔の話も思い出せるらしい。
「もう、三十年近く前になりますか。利吉の奴は、練馬の方の農家の次男でしてね、まぁ、よくある貧乏百姓の家で、十二の時にはもう江戸に出てきて奉公って事になりましてね」
最初の最初とは言ったが……。
北川は少し後悔をしていた。年寄りの思い出話の長さを考えていなかったのだ。
こりゃ、長っ尻になるなぁ。
「そのころでさぁ、わしがれが利吉とあったのは。観音裏にあった桜屋って料理屋に奉公してましてね。まぁ、御店奉公なんてのはどこも同じで、丁稚なんてのは牛馬と同じ扱い。それも利吉の奴は、板場働きで、追廻なんてのは丁稚以下でしょう?」
なるほど、料理の腕はそこで。
しかし、桜屋ってのはどっかで……?
「ところがね、旦那。当時桜屋の花板だった幸助ってのがいて、こいつが利吉の舌に惚れ込みやしてね。そっから利吉はとんとん拍子で、十五の頃には、もう椀方をつとめてましてね」
ほぉ、そいつはすげぇ。
北川は、心底感心した。
椀方と言えば、花板に次ぐ二番手。奉公にでて3年やそこらで辿り着く所ではない。
あいつの蕎麦がうめぇわけだ。
「店の方もうまくいってましたんでね。あのころの桜屋は、本当にいい料理屋でした。経験よりも腕をとる花板と、天賦の才を持った利吉。まぁ、花板の幸助と店の主……ありゃなんていったけなぁ……そう左兵衛だ、その二人は諍《いさか》いをおこしてやしたが、それでも繁盛してましてね」
そこまで聞いて、北川は横やりを入れた。
「おい、何でぇその、花板と主の諍いってのは」
北川は、続けた。
「花板とは言え奉公人だろ?店の主と諍いってのは、そりゃちょっとおだやかじゃねぇ」
商家において主とは絶対的な権力者だ。奉公人が逆らいでもしたら、下手したら首が飛ぶ。主が死ねと言えば死ぬ、大げさだがそんな奉公人も珍しくはない。
すると藤五郎は北川の言葉を鼻で笑った。
「旦那は、料理屋ってのをわかっちゃいねぇ」
「そりゃどういう事だい?」
「料理屋ってのは、普通の御店とは違うんでね。働いてるのは、商人と職人。商人の頭が主なら、職人の頭が花板なんでさぁ。しかもあの当時の桜屋は、誰彼がみんな、幸助の腕で店がもってると思ってましてね…」
なるほどね、一つ屋根の下に頭が二つ……か。
北川は、言葉尻をうばって吐き出した。
「男の……妬心かい」
「へぇ」
藤五郎は、何の感情も込めずにいった。
「よくある事でさぁね」
よくある事、だなぁ、確かに。
「続けますぜ。まぁそれでも繁盛していた桜屋に、おけいの奴が来たのが、利吉が椀方になって十五年、三十の坂を越えた頃でした、確か、それぐらいだ」
「おい、おけいってのは誰だい」
二度目の北川の横やりに、藤五郎は露骨に不快そうな顔をした。
「順を追っていいますから、ちょっと黙っててくれませんかね」
そりゃすいませんね。
頭を掻きながら、北川はそうつぶやいた。
「おけいは、こりゃ人から聞いた話ですからね、ちゃんとはわからねぇが、西国の商家の娘だっていう事でしてね。なにがあったか、生家の商いがいけなくなったってんで、江戸に流れてきた女でしてね。身体売って、どこぞで女郎をやっていたところを見初められて、主の妾みてぇな形で桜屋に住み着いたんでさ」
これもまた、よくある話だ。よくある、惨い話だ。
「表向きは、女中として奉公に上がったんですがね、まぁ、その時につれていたのが、お美代でございますよ」
「なに?お美代?」
北川は、慌てて聞き返した。
なかなか核心に至らないかと思えば、唐突に、さらりとすごい事を話す。
「へぇ」
藤五郎は、北川の心を察したかのように即座に返事をし、そして、答えた。
「お美代は、おけいの連れ子ですよ。あの子は、利吉とは何の繋がりもねぇ」
藤五郎は少しためて、そして言った。
「赤の他人なんで」
やはりか。
北川の心に浮かんできたのは、驚きよりも、その言葉だった。
初めて会った時の、あの違和感は、間違っていなかった。
あの親子は、偽もんだ。
「なぁ、藤五郎。どうでも良い事ではあるが、そのおけいという女、さぞかし美しかったんであろうな?」
美代の顔が浮かぶ。人形のような白い顔、紅を塗ったような唇。
「それが……とんと覚えがないんですよ。会った事もあるんですがね。確かに美しい女のような心持ちはあるんですが、顔が、出てこねぇ」
藤五郎は、こめかみをぐりぐりとこねた。
「どうしても、出てこねぇんですよ」
そうかい。北川は残念そうにつぶやいた。
そして、おけいという女に会ってみたいと、心底思った。
「そのおけいという女、今どこにいやがるんだね?」
藤五郎は眉をひそめて答えた。
「いませんよ、もう、こっちの世にはね」
「死んだのか」
矢継ぎ早の質問に、また藤五郎はいらいらと北川を制した。
「せわしねぇ旦那だ、ちゃんと順序通りに話しますといってるでしょうよ」
ふぅっと大げさにため息をついて藤五郎はそう言った。
「あ、こりゃすまねぇ、続けてくれ」
なんとも、面倒な事だ。
「しかしね、旦那。表向きは女中といっても、見りゃわかるんでさ。おけいの本当の仕事はね。ところが桜屋は格のたけぇことが売りの料理屋、生臭い話は御法度で、客筋にも関わってくる」
確かにな。茶屋小屋じゃあるめえし、生臭ぇ色の話は、いい料理屋には似つかわしくねぇな。
「そこで主の頭に浮かんだのが……利吉でさ」
「利吉?」
「ええ、主にしてみれば、憎々しい幸助の一番弟子。汚い事をやらせて見せしめるには、うってつけの男だったんですよ」
そう言って、藤五郎は一息ついた。
そして、北川の顔をじっと見つめると、ゆっくりと次の言葉を吐いた。
「主の奴は、おけいと利吉を添わせたんですよ」
これには北川も驚いた。
驚いて、藤五郎を問いただす。
「添わせた?添わせたって、おめぇ。自分の妾と利吉の縁組みを結びやがったってのかい?」
「ええ」
藤五郎は笑っていた。
悲しそうに、笑っていた。
「いやな話でね。でもね、旦那。桜屋の主にしてみれば、自分から不義の疑いは遠のく、妾は大手を振るって家に囲える、その上……」
北川は、言葉尻をとって続けた。
「幸助には……格好の面当てになるって事か……」
「そういうわけでさぁ」
藤五郎も北川も、たぶん、同じ事を思っていた。
同じ事を思い、憤り、そして……人間の世にそのような事が日常的に存在する事を、知っていた。それらを見聞きする事が、彼らの仕事なのだから。
「でもね、旦那。かわいそうだったのはお美代でさぁ」
そうか、そうだったな。
「あのころお美代は、まだまだ小さな童で、なにかにつけ母親の恋しい時分でね。ところが妾ってのは、昼も夜もない。昼は身の回り、夜は下の世話ってんでね。お美代はいつも、寂しそうに利吉の足下に貼り付いておりやしてねぇ」
むりもねぇよなぁ。妾なんてものがわかる歳じゃねぇ、わからせていい歳でもねぇ。
「端から見ても、利吉とお美代は本当の親子みたいでしてね。根っから気が優しくて正直者で子煩悩な利吉は、そりゃいい父親だったんじゃないですかねぇ」
そう言って藤五郎は「それでも母親のかわりになるもんなんてありゃしませんがね」と付け加えた。
その通りだぜ……。
北川の目に、小さな美代の手を引く利吉の姿が浮かんだ。
今と同じように、表情の少ない美代が、てくてくと、若い利吉の後ろをついて行く様を。
似合いの親子だ。似合いの親子だぜ、お美代。
でも……。
寂しかったろうなぁ。
「でもね、旦那。わしがれは、それはそれで、美代も利吉も、おけいですら、幸せだったんだと思いますね」
藤五郎は目を細めた。
「そりゃ格好の良い生活じゃねぇし、恵まれていたわけでもねぇ。でもね、旦那、旦那ならおわかりでしょうがね、このお江戸にゃ、もっと獣みてえぇな生活をしてる奴は……佃煮にするほどいるんで」
北川はゆっくりと頷いた。
幸せなんてもんは、人それぞれだ。他人が外から値踏みしていいもんじゃねぇ。
「ところが、この利吉やお美代の幸せは、ある日突然地獄にかわるんでさぁ」
北川は、藤五郎の言葉に身を乗り出した。
「何?まだ何かあるのかい?」
藤五郎は、ほくそ笑みながら答えた。
「馬鹿いっちゃいけねぇよ、こっからが、本筋でさぁ」
なんてぇなげぇ前置きだ。
北川は、苦笑した。
そんな北川の苦笑いを無視して、藤五郎は続けた。
話の核心に向けて。
「ありゃ、おけいが桜屋にはいてから三年の後。美代がちょうど七つになったその年の、まだ松の内も明けきらねぇ正月の事でした。桜屋に、押し込みがありましてね。おけいはその時に死んじまったんで」
押し込み?!
「なんだって!」
北川は、立ち上がって叫んだ。
これまでのどの話も、それはそれで驚きの連続であったけれど、これに勝る驚きはなかった。
また……押し込みかい。
「どうしなすったんで、旦那?」
藤五郎は、小首を傾げていった。
「顔が真っ青ですぜ?」
北川は、震えていたのかも知れない。
頭の中で、たくさんの事柄が浮かんでは、ひとつの記憶をたぐっていた。
浅草……桜屋……押し込み……。
利吉……お美代……。
……疾風!!
そうだ、何で忘れてやがったんだ!
桜屋は、桜屋といえば。
「藤五郎、桜屋っていやぁ、まさか……」
藤五郎はゆっくりと答えた。
「ええ、お察しの通りでさぁ。桜屋は……」
突如、表に強烈な風が吹き、破れ放題の表戸から冷たい風が吹き込んできた。
狭い長屋の中に、ほこりが舞い上がる。
藤五郎は、それをものともせず言った。
「江戸で最初に疾風にやられた、店でさぁ」
「疾風の、最初の獲物でさぁ」
その言葉が出たとたん、吹き込む風がぴたりと止んだ。
そしてあとには、北川のうなり声が残っていた。
……知っているどころか、美代の母親は……。
「疾風に殺されてやがったのかよ」
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北川は、無意識に刀の柄を握りしめていた。
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