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その16 海斗と陸は、
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「みんなのこと待ってたよー!」
『Man made Lily』のライブ。ステージの上で俺はアンナとして今日も歌う。
今日は平日で客席には幸男は来ていない。その代わり、『青月堂』の店員二人がいた。確か黒髪が海斗さんで、茶髪が陸さんだっけ?
「――今日もありがとー!!」
全てを終えると俺は客席に手を振り、観客らは歓声を上げる。
※
「操、タケルくんは?」
「お兄さんと車で先に帰ったよ」
ライブを終えてマリサ改め操と帰り道を歩く。
「タケルくんはお兄さんに仕事のこと行ってるんだよね?」
「うん。ちょっと心配されてるみたいだけど」
「やっぱり?」
ユズミちゃん改めタケルくんについて語っていると、
「あ、」
「え? ええ!?」
意外な二人に出会った。目の前にいたのは見覚えのあるイケメン二人、『青月堂』の二人だ。
「ちっす。こないだぶりですね」
「どうも」
「ど、どうも!!?」
軽く挨拶されて俺は戸惑う。
「え!? この二人って『青月堂』の人達?」
操も驚く。
「ああ、そっちは初めてでしたね。こないだ一緒だった人は……」
「俺の弟です。あいつは仕事で今日は一緒じゃないです」
黒髪のほうは幸男も覚えていたみたい。
「えっと、海斗さんでしたっけ? 雑誌に名前出てた」
「はい。俺です」
「俺は陸です」
茶髪のほうは陸さんで黒髪のほうは海斗さんだと改めて確認する。
「変な偶然ですね。どうしてここに?」
「あー、俺達『Man made Lily』のライブに行って今帰りです」
海斗さんの言葉に俺と操はギクリと固まる。海斗さんは『Man made Lily』のグッズであるタオルを見せてくる。
「三人ともめちゃくちゃ可愛かったですよ。男なのわかってても最高でした。特にアンナって子が」
「うん。アンナ可愛い」
海斗と陸はまじまじと俺を見てくる。この目線はまさか……
「……あんた、アンナでしょ?」
海斗さんは俺を見つめながら静かに指摘してきた。
「へ? へ?」
なんでわかったの? 俺の、アンナの女装って結構顔変わるのに?
「なんでわかったんですか?!」
「敏郎、何すぐに認めてるんだよ!!」
誤魔化さなかった俺に操は叫ぶ。
「あんたもマリサだろ?」
陸さんは操に指摘する。
「な、なんでだよ……」
陸の視線に操も認める。
「顔の特徴とか声とかよーく見たり聞いたりわかるもんだぜ」
「俺達、君がアンナだってあの日店に来た時にすぐ気づいたんだ」
海斗さんと陸さんはちょっと得意げになっている。俺と操はやばさを感じて慌てた。
「あの! 俺らがアンナやマリサなのはバラさないでください!!」
「そうです! 俺らすっぴんとか本名とか伏せてやってるんで!」
『Man made Lily』は男の娘のアイドル。すっぴんや本名、素性は非公開なのもコンセプトのひとつだ。
「落ち着けよ二人とも。俺達別に脅したいわけじゃないって」
「ああ。ちょっと確かめたかっただけなんだ」
俺達は宥められて海斗さんと陸さんにクールダウンさせられる。
「俺達はアンナを見に来ているだけだ。……また来る」
「おれ達の店にもまた来なよ。えっと本名なに?」
海斗さんに名前を聞かれる。
「宮田敏郎です」
「お前何本名言ってんだ!?」
名乗ると操に少し怒られる。
「そっちは?」
「大木操。バラしたらマジで許さねえから」
操も怒りつつ名乗る。
「アンナを気に入ったみたいだけど、敏郎になんかしたら俺がお前ら潰すからな」
「操こええよ」
操は海斗さんと陸さんをじっと睨む。
「なんもしねえって」
「とりあえずサインをくれ。店に飾りたいから。俺と海斗宛てに」
「は、はあ」
妙に拍子抜けをさせられ、俺は陸さんに渡された色紙にサインをするのだった。
「敏郎、こいつら大丈夫か??」
操はずっと睨みっぱなしだった。
『Man made Lily』のライブ。ステージの上で俺はアンナとして今日も歌う。
今日は平日で客席には幸男は来ていない。その代わり、『青月堂』の店員二人がいた。確か黒髪が海斗さんで、茶髪が陸さんだっけ?
「――今日もありがとー!!」
全てを終えると俺は客席に手を振り、観客らは歓声を上げる。
※
「操、タケルくんは?」
「お兄さんと車で先に帰ったよ」
ライブを終えてマリサ改め操と帰り道を歩く。
「タケルくんはお兄さんに仕事のこと行ってるんだよね?」
「うん。ちょっと心配されてるみたいだけど」
「やっぱり?」
ユズミちゃん改めタケルくんについて語っていると、
「あ、」
「え? ええ!?」
意外な二人に出会った。目の前にいたのは見覚えのあるイケメン二人、『青月堂』の二人だ。
「ちっす。こないだぶりですね」
「どうも」
「ど、どうも!!?」
軽く挨拶されて俺は戸惑う。
「え!? この二人って『青月堂』の人達?」
操も驚く。
「ああ、そっちは初めてでしたね。こないだ一緒だった人は……」
「俺の弟です。あいつは仕事で今日は一緒じゃないです」
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「えっと、海斗さんでしたっけ? 雑誌に名前出てた」
「はい。俺です」
「俺は陸です」
茶髪のほうは陸さんで黒髪のほうは海斗さんだと改めて確認する。
「変な偶然ですね。どうしてここに?」
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海斗さんの言葉に俺と操はギクリと固まる。海斗さんは『Man made Lily』のグッズであるタオルを見せてくる。
「三人ともめちゃくちゃ可愛かったですよ。男なのわかってても最高でした。特にアンナって子が」
「うん。アンナ可愛い」
海斗と陸はまじまじと俺を見てくる。この目線はまさか……
「……あんた、アンナでしょ?」
海斗さんは俺を見つめながら静かに指摘してきた。
「へ? へ?」
なんでわかったの? 俺の、アンナの女装って結構顔変わるのに?
「なんでわかったんですか?!」
「敏郎、何すぐに認めてるんだよ!!」
誤魔化さなかった俺に操は叫ぶ。
「あんたもマリサだろ?」
陸さんは操に指摘する。
「な、なんでだよ……」
陸の視線に操も認める。
「顔の特徴とか声とかよーく見たり聞いたりわかるもんだぜ」
「俺達、君がアンナだってあの日店に来た時にすぐ気づいたんだ」
海斗さんと陸さんはちょっと得意げになっている。俺と操はやばさを感じて慌てた。
「あの! 俺らがアンナやマリサなのはバラさないでください!!」
「そうです! 俺らすっぴんとか本名とか伏せてやってるんで!」
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「落ち着けよ二人とも。俺達別に脅したいわけじゃないって」
「ああ。ちょっと確かめたかっただけなんだ」
俺達は宥められて海斗さんと陸さんにクールダウンさせられる。
「俺達はアンナを見に来ているだけだ。……また来る」
「おれ達の店にもまた来なよ。えっと本名なに?」
海斗さんに名前を聞かれる。
「宮田敏郎です」
「お前何本名言ってんだ!?」
名乗ると操に少し怒られる。
「そっちは?」
「大木操。バラしたらマジで許さねえから」
操も怒りつつ名乗る。
「アンナを気に入ったみたいだけど、敏郎になんかしたら俺がお前ら潰すからな」
「操こええよ」
操は海斗さんと陸さんをじっと睨む。
「なんもしねえって」
「とりあえずサインをくれ。店に飾りたいから。俺と海斗宛てに」
「は、はあ」
妙に拍子抜けをさせられ、俺は陸さんに渡された色紙にサインをするのだった。
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操はずっと睨みっぱなしだった。
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