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その8 マリサとユズミ
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「敏郎ー」
「あ、操」
ライブ会場に向かっていると操に出くわす。
「昨日はお前だけ仕事長かっただろ?」
「ああ、うん」
俺はちょっとグサリとなる。俺が社長と関係を持っているのは操もタケルくんも知らない。
「しっかし敏郎はすげえよ。歌うまいし盛り上げるのうまいし」
「え? 操だってよくやってるよ? 女装可愛いし人気あって」
「それだけじゃ長く続かないだろ」
「そ、そう……」
操はこんな感じでいつも気さく。女装しても男としても完璧な気がする。
俺達はそう言いながら会場のある建物に入る。
「敏郎、操おはよう」
「おはようございまーす」
更衣室に入るとタケルくんがいた。彼も今来たところみたい。
「今日はライブが終わったら僕と敏郎が撮影で、操は取材受けるんだってね」
「そうでしたね」
タケルくんは俺や操より年上なのでリーダーみたいにやってくれて、俺達の予定も把握してくれている。
タケルくんも操も荷物を置いて着替え、つまり女装の支度をし出す。俺も始める。
「……よし」
タケルくんは普段は黒髪ロングのウィッグを被って髪の毛前髪で隠れ気味の顔を出す。この時点でもイケてるが、ちゃんとした女装メイクでもっと美人になる。これがユズミちゃんだ。
「ヅラ被るのやっぱむずいな」
操もウエーブのある金髪セミロングのウィッグを被りメイクする。やっぱ操もマリサとしての恰好は美人だ。
「……」
「どうした敏郎?」
「いや、二人とも着替え早いなぁって……」
俺は元々美形じゃないので女装メイクは時間かかる。二人との差にたまに落ち込む時がある。しかも女装してもそこまで可愛くない。
「俺そもそも普通の顔だから時間かかるんだよ。メイクさんのやり方覚えるのにも時間かかったし」
俺はちょっとしょげながらメイクを終えてウィッグを被る。三人とも今日の衣装にも着替え終える。
「敏郎ー、なんか顔とか気にしすぎじゃねえか?」
「だって……」
特別ブサイクって言われたことはないが、自分以上の存在の数を知るたびになんとなく落ち込んでしまう。
「……落ち込んでいると余計にみっともねえぞ? 人間見てくれだけじゃ勝負できねえよ」
操が俺の肩を掴む。
「お前が、アンナが人気の理由は知ってるのか?」
「え?」
「俺結構エゴサしまくりなんだけどさ」
操は自分のスマートフォンを見せる。そこには俺、いやアンナについてのツイートがあった。
『アンナの歌マジでえもい!』
『今日のライブ感動した!』
『今世紀最大じゃね?』
『ミスっても神対応、いや女神対応してくれるのが推しポイント』
「これお前のファンのコメントだよ」
操に見せられたそれは、俺の容姿ではなく歌等アイドルとしての実績を称賛するものだった。
「な、なんかめっちゃ褒められてない? 俺」
「だろ?」
「敏郎はすごいよ」
操とタケルくんは笑いかける。タケルくんも俺の隣に来る。
「まあ見た目気にするなとは言わないけど、じっとして落ち込むより先に出来ること敏郎はしてるし今のままでいいんじゃね? って俺とタケルくんは思うんだよ」
「操、タケルくん……」
俺は少し泣きそうになりながら操とタケルくんに抱き着く。
「あ~! 二人とも大好き~!」
「敏郎おおげさぁ。てか化粧くずれっぞ」
「はいはい、ありがとう」
二人とも俺の頭を撫でてくれた。最初は土壇場でアイドルになったような俺だったけど、こうして二人みたいな良い人に会えたことは本当によかった。
「ほらこれ。弟くんのアカウントのツイート」
「わ! 幸男のツイートすんごい長い! ツリーになってる」
「あ、操」
ライブ会場に向かっていると操に出くわす。
「昨日はお前だけ仕事長かっただろ?」
「ああ、うん」
俺はちょっとグサリとなる。俺が社長と関係を持っているのは操もタケルくんも知らない。
「しっかし敏郎はすげえよ。歌うまいし盛り上げるのうまいし」
「え? 操だってよくやってるよ? 女装可愛いし人気あって」
「それだけじゃ長く続かないだろ」
「そ、そう……」
操はこんな感じでいつも気さく。女装しても男としても完璧な気がする。
俺達はそう言いながら会場のある建物に入る。
「敏郎、操おはよう」
「おはようございまーす」
更衣室に入るとタケルくんがいた。彼も今来たところみたい。
「今日はライブが終わったら僕と敏郎が撮影で、操は取材受けるんだってね」
「そうでしたね」
タケルくんは俺や操より年上なのでリーダーみたいにやってくれて、俺達の予定も把握してくれている。
タケルくんも操も荷物を置いて着替え、つまり女装の支度をし出す。俺も始める。
「……よし」
タケルくんは普段は黒髪ロングのウィッグを被って髪の毛前髪で隠れ気味の顔を出す。この時点でもイケてるが、ちゃんとした女装メイクでもっと美人になる。これがユズミちゃんだ。
「ヅラ被るのやっぱむずいな」
操もウエーブのある金髪セミロングのウィッグを被りメイクする。やっぱ操もマリサとしての恰好は美人だ。
「……」
「どうした敏郎?」
「いや、二人とも着替え早いなぁって……」
俺は元々美形じゃないので女装メイクは時間かかる。二人との差にたまに落ち込む時がある。しかも女装してもそこまで可愛くない。
「俺そもそも普通の顔だから時間かかるんだよ。メイクさんのやり方覚えるのにも時間かかったし」
俺はちょっとしょげながらメイクを終えてウィッグを被る。三人とも今日の衣装にも着替え終える。
「敏郎ー、なんか顔とか気にしすぎじゃねえか?」
「だって……」
特別ブサイクって言われたことはないが、自分以上の存在の数を知るたびになんとなく落ち込んでしまう。
「……落ち込んでいると余計にみっともねえぞ? 人間見てくれだけじゃ勝負できねえよ」
操が俺の肩を掴む。
「お前が、アンナが人気の理由は知ってるのか?」
「え?」
「俺結構エゴサしまくりなんだけどさ」
操は自分のスマートフォンを見せる。そこには俺、いやアンナについてのツイートがあった。
『アンナの歌マジでえもい!』
『今日のライブ感動した!』
『今世紀最大じゃね?』
『ミスっても神対応、いや女神対応してくれるのが推しポイント』
「これお前のファンのコメントだよ」
操に見せられたそれは、俺の容姿ではなく歌等アイドルとしての実績を称賛するものだった。
「な、なんかめっちゃ褒められてない? 俺」
「だろ?」
「敏郎はすごいよ」
操とタケルくんは笑いかける。タケルくんも俺の隣に来る。
「まあ見た目気にするなとは言わないけど、じっとして落ち込むより先に出来ること敏郎はしてるし今のままでいいんじゃね? って俺とタケルくんは思うんだよ」
「操、タケルくん……」
俺は少し泣きそうになりながら操とタケルくんに抱き着く。
「あ~! 二人とも大好き~!」
「敏郎おおげさぁ。てか化粧くずれっぞ」
「はいはい、ありがとう」
二人とも俺の頭を撫でてくれた。最初は土壇場でアイドルになったような俺だったけど、こうして二人みたいな良い人に会えたことは本当によかった。
「ほらこれ。弟くんのアカウントのツイート」
「わ! 幸男のツイートすんごい長い! ツリーになってる」
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