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その1 義理の兄の秘密
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高校卒業と同時に俺は片田舎の地元を離れて都会に就職。それから約四年の月日が流れた。定期的に実家には帰っているし一人暮らししているアパートに弟や妹が来ることもあった。だたそれは最初の一年くらいだけだった。ここのところは実家にも帰れていないかつ弟や妹を呼ぶこともなくなった。
『兄ちゃん最近実家帰ってこないよね? やっぱり仕事忙しい? 僕アイドルのライブに行きたいからそっちに泊まりたいんだけど』
弟の幸男から俺のスマホにメール連絡が来た。
『まあな。悪いけど俺の部屋に行っても会えないよ』
『そっかー』
幸男には最近推しているアイドルがいる。『Man Made Lily』の一人、アンナだ。俺の今住んでいる街の繁華街でライブをしているいわゆる地下アイドル。街の外の人間からも人気で徐々に話題になりつつある。
幸男はかわいいだろ? とよく写真も見せられる。
俺がどうしてそこまで弟の推しのアイドルに詳しいかと言うと……
「敏郎、どうした?」
「ああ、なんでもないです」
俺は一緒にいた社長に呼ばれてスマホを切って歩き出す。
※
幸男から連絡が来た夜。俺は幸男には今夜会えない。なぜなら……
俺は鏡の前に座り、化粧をする。そして栗色の髪のショートボブカットのウィッグをする。そしてフリフリのアイドルの衣装を着る。
「敏郎、じゃなかった『アンナ』! 行けるか?」
「はい!」
先程まで一緒にいた社長に呼ばれ俺は飛び出し、観客の待つステージに出た。
「みんなー! お待たせー!」
俺は女装姿でマイクを持ち、観客に手を振る。観客らはそれを見て歓喜の声を上げる。その中に幸男がいた。
「アンナー!!」
幸男は他の観客らと共にアンナの名を叫ぶ。
そう、『Man Made Lily』のアンナとは俺、敏郎が女装したアイドルなのだ。『Man Made Lily』とは女装男子、つまり男の娘のアイドルユニットだ。他の二人も女装した男である。
「今夜もみんなで楽しんでってねー! まずは最初の一曲、『純愛メトロ』を聴いてください!!」
俺は高めの声で他の二人と一緒に歌い出す。それを幸男が見ていることはわかっている。
俺は口が裂けても言えない。「お前が推しているアイドルは兄ちゃんの女装なんだよ」とは……弟が、親の再婚で出来た義理の弟が男の娘アイドルを好きになるなんて思わないし、俺がそのアイドルになるなんて考えたこともなかったんだぞ!?
その葛藤を抱えながら俺は今夜もライブで歌うのだった。
『兄ちゃん最近実家帰ってこないよね? やっぱり仕事忙しい? 僕アイドルのライブに行きたいからそっちに泊まりたいんだけど』
弟の幸男から俺のスマホにメール連絡が来た。
『まあな。悪いけど俺の部屋に行っても会えないよ』
『そっかー』
幸男には最近推しているアイドルがいる。『Man Made Lily』の一人、アンナだ。俺の今住んでいる街の繁華街でライブをしているいわゆる地下アイドル。街の外の人間からも人気で徐々に話題になりつつある。
幸男はかわいいだろ? とよく写真も見せられる。
俺がどうしてそこまで弟の推しのアイドルに詳しいかと言うと……
「敏郎、どうした?」
「ああ、なんでもないです」
俺は一緒にいた社長に呼ばれてスマホを切って歩き出す。
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幸男から連絡が来た夜。俺は幸男には今夜会えない。なぜなら……
俺は鏡の前に座り、化粧をする。そして栗色の髪のショートボブカットのウィッグをする。そしてフリフリのアイドルの衣装を着る。
「敏郎、じゃなかった『アンナ』! 行けるか?」
「はい!」
先程まで一緒にいた社長に呼ばれ俺は飛び出し、観客の待つステージに出た。
「みんなー! お待たせー!」
俺は女装姿でマイクを持ち、観客に手を振る。観客らはそれを見て歓喜の声を上げる。その中に幸男がいた。
「アンナー!!」
幸男は他の観客らと共にアンナの名を叫ぶ。
そう、『Man Made Lily』のアンナとは俺、敏郎が女装したアイドルなのだ。『Man Made Lily』とは女装男子、つまり男の娘のアイドルユニットだ。他の二人も女装した男である。
「今夜もみんなで楽しんでってねー! まずは最初の一曲、『純愛メトロ』を聴いてください!!」
俺は高めの声で他の二人と一緒に歌い出す。それを幸男が見ていることはわかっている。
俺は口が裂けても言えない。「お前が推しているアイドルは兄ちゃんの女装なんだよ」とは……弟が、親の再婚で出来た義理の弟が男の娘アイドルを好きになるなんて思わないし、俺がそのアイドルになるなんて考えたこともなかったんだぞ!?
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