月下の半導体

湊戸アサギリ

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Case.8 修理

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 「うーん」
理科室の中。戦術の授業の後に、上半身裸になった竹葉の右腕の義手を見つめているのは、槙野省吾。チューブと金属とバネで出来たそれを見られるのを竹葉は複雑に思う。槙野がどんな意図でいるのかが竹葉にはわからなかった。槙野はただ好奇心を抱いているだけだ。
「槙野省吾、早く終わらせて皮膚を張ってやれ」
左門が二人に口を出す。
「ああ失敬。珍しいパーツだらけなのでつい。でも市販の替えパーツでなんとかなるな」
「新しい人工皮膚用意出来たから早く!」
腕に巻く人工皮膚を培養液に付けて待っているピンク色の髪をツインテールにした少女は仲代アリサ。
「はいはい」
槙野は切れたチューブと傷の入った金属部分を新しいものに替える。
「おっし、アリサもういいぞ」
槙野が修理を終えるとアリサが人工皮膚を持って竹葉の傍に行く。
「ん。腕ちょっとあげて、手はパーにして」
「あ、ああ」
竹葉の右手に長い手袋を手に通すようにアリサは人工皮膚を巻く。皮膚で義手の全てが覆われる。元あった皮膚に新しい皮膚が少し重なる。その部分をグッとアリサは押える。
「え? そのままくっけるの?」
「内側に専用の糊入ってる皮膚だからこのままくっつくよ」
「え?? うわ痛い!」
「うっさい」
ぐりぐりと親指で押さえられて竹葉は痛める。
アリサが押さえた部分の皮膚を撫でていくと、新しい人工皮膚は元あった皮膚に馴染み竹葉の腕は元通りになった。
「腕、もう治ったのか?」
「一時間くらい激しく動かさないでね」
槙野とアリサに修理された右腕を竹葉は見つめる。二人のほうを見る。
「え、えっと……ありがとう」
竹葉は赤面しながら槙野とアリサに礼を言った。
「ん」
「別に普通よこんくらい」
槙野とアリサは軽く返す。
「ていうかさ、あんたの身体どうなってるの? 全身機械化してるんでしょ?」
「見た事無いパーツめっちゃあったよな」
アリサと槙野はぐい、と竹葉に迫る。二人は竹葉の全身機械化された身体が気になっていた。竹葉はそれに驚く。
「……お前達、変だと思わないの? 俺ほぼ全部機械化してるのに」
興味津々かつ明るい視線を向けられる。それを竹葉は予想していなかった。
「? 何が変だよ? 全身機械化は技術者の男のロマンだぜ」
槙野は細い目でワクワクした感情を現す。
「ボクもあんなに速い義足初めて見た!」
アリサも興奮を抑え切れなかった。
「お前達は技術者としての目があるんだな」
左門は槙野とアリサの意思を察する。
「竹葉未月」
「な、何?」
左門は竹葉に視線を向ける。
「お前が何に怯えているかは訊かないが、お前を傷付ける奴がここにはいないと信じてくれ」
「! 俺は怯えてなんて……」
否定しようとしたが、竹葉は納得もしていたので言いかけて黙る。
「……」
「教室に戻るぞ。未月は着替えろ」
「「はぁーい」」
竹葉の義手の修理が終わり、彼と槙野とアリサ、左門は理科室を出る事にした。

 ※

 「……」
竹葉は恐る恐る健之介達のいる教室に入る。先程の自分の義手を奇異の目で見ていないか、竹葉はまだ怯えていた。確かに先程はどこか安心を覚えたが今はそれらが無くなっている。
「……」
左門、アリサと槙野が入ったのを見て、ゆっくりと教室に入ると、
「竹葉、大丈夫だったか?」
健之介が竹葉に声をかけて近寄る。
「なんでそれを訊くんだよ?」
竹葉は健之介に心配される意味がわからなかった。竹葉にとって義手が壊れたりするのは普通の事でいちいち気にされる事ではなかったのだ。
「そりゃ、お前が友達だからだよ」
「???」
友達、と笑いかけられて余計にわからくなる。
「ん? ん?」
「健ちゃん、ストレートすぎ」
弓彦が割り込む。
「友達の怪我を心配するのは普通だよ。理由なんてないって事」
弓彦は健之介の意思を補足する。
「怪我って、俺の腕が義手なのさっき見たでしょ? あれは故障で……お前達がするような怪我じゃなくて……修理すればいいだけだろ?」
竹葉は戸惑う。
「あー、こういうのは理屈じゃないの! とにかく腕治ってよかったぁ」
弓彦は竹葉の右手を握る。竹葉は初めて向けられた感情にむず痒くなっていた。
ーーなんでだよ、なんで暖かいんだよ……
「もしもーし。腕壊れたのは俺もなんですけどぉ」
津々浦は自分の席で槙野とアリサに腕を見てもらいながら竹葉達を見て、ぼやく。
「お前の腕のパーツは市販のみたいだな」
「皮膚は小さいの貼るだけでいい?」
ぼやきを聞かない槙野とアリサ。
それらを兵鉢は見ていた。ありのままを見せ合う竹葉達を。
ーーなんかみんな正直っていうかまっすぐっていうか……俺すごいクラスに来たのかも。
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