3 / 10
Case.3 義眼と義務
しおりを挟む
「俺と健ちゃんと竹葉は、一年C組だって」
弓彦は空中ディスプレイを表示させ、自分達のクラスを確認する。この空中ディスプレイは身体を一部分でも機械化させていれば使用できる。竹葉と健之介と弓彦は自分達の教室に向かう。
「この教室だな」
健之介が一年C組の教室を見つけて三人は戸を開けて入る。白い机の並ぶ教室には既に何人かの生徒がいる。
「健ちゃんと俺は真ん中のほうの席で、竹葉は窓際の……あそこ!」
弓彦は窓際の前の席を指差す。
「そこまで言わなくてもわかるから」
「健ちゃんを助けてくれたサービスだよ」
「サービスって……」
弓彦の言った席の隣には既に誰かが座っていた。彼は健之介と弓彦のほうを見る。
「讃岐くん! 奈丹くん!」
茶色い髪に紫の瞳の彼に二人は呼ばれた。
「鉢か」
「鉢、受かってたんだ」
「?」
竹葉が自分の席に座るとその隣の席に健之介と弓彦は近寄る。
「二人共試験以来だね!」
鉢と呼ばれた彼は健之介と弓彦に笑いかける。
「あんた誰?」
竹葉も彼を見る。
「コイツは白山兵鉢。入学試験の時に知り合った」
健之介は彼、白山兵鉢を紹介する。
「よろしく! 鉢って呼んで!」
兵鉢は竹葉をじっと見つめる。竹葉は彼の視線が気になる。
「なんだよ」
「……讃岐くんから聞いたけど、眼と脳以外全部機械って本当?」
「あ、ああ……」
竹葉は戸惑う。自分を珍しがる視線はどうも苦手だ。
「鉢、そんな目で見るな」
健之介もそんな視線に気付く。
「そんな目って、俺の目はいつもこんなだよ」
兵鉢は自分の眼を指差す。彼の眼は紫色でよく見るとカメラのレンズのようだ。その特徴で竹葉はすぐわかった。
「お前……義眼なのか?」
「うん。眼球と視神経が人工なんだ」
視神経とは眼で見た映像を脳に送る神経。
「他は機械じゃないのか」
「他は全部生身でデフォルトの人とほぼ変わらないよ」
「俺と逆か」
竹葉は全身機械だが眼球と視神経は生まれたまま。つまり兵鉢と逆だ。
ふに。
「ふへ?」
「すごい、人工皮膚リアル過ぎる」
竹葉の頬に兵鉢は触れる、というより三つ指でつつく。
「お前さっきからなんだよ!」
竹葉は兵鉢と珍しがる視線と触れる手がどうもうっとうしい。
「鉢、そんぐらいにしときな」
健之介は兵鉢を止める。それと同時に入ってきたのは……
「お前達、席に座れ!」
クラスの担任、左門奈津菜だ。
「あ、昨日の先生」
教室にいた竹葉と生徒達はそれぞれの席に座る。
「私がお前達を受け持つ、左門奈津菜だ。ひとまず、入学おめでとう」
左門は教卓につき挨拶をする。
「お前達や私のように身体の機能の機械で補助している者達をコンバータと呼ぶのはもはや当たり前。サイボーグって呼び方に文句を言う輩もいるのことも知っているだろう」
左門はコンバータ達を取り巻く状況を語り出す。
「身体を機械にする事での生命維持を良くは思っていない輩もいる。人間だと思っていない輩もいる、それは生き物なのかと」
「……」
左門の説明に竹葉は曇る。機械と認識された事が彼にはあった。
「機械化の手術と術後のリハビリ、その後の社会復帰には全部、お金も時間もかかる」
左門は続ける。
「偉い人や当事者ではない人の理解を得るには、その人達にメリットがあると思わせるしかないのが現状。つまり社会貢献や人助けしかない。十代のうちに機械化手術を受けた子は、うちのような専門の教育機関への進学、卒業後はインフラやライフライン、医療や救命に関わる仕事に行く事がほぼ義務化されたわ」
現在の法では、十代で機械化手術を受けてコンバータになった子供はコンバータ専用の高校や大学への進学することが一部の例外を除き決まっている。仕事も基本的にはインフラやライフラインに関わる職種への就職を勧められている。
「やっぱ結構な縛りプレイだね。進路悩まなくて済むけど」
「後で聞くから黙ってろ」
弓彦は小さく健之介に耳打ちすると軽く静止する。
「私はお前達に聞きたい」
左門は竹葉達生徒を見つめる。
「逃げられない義務を迫られた時に、お前達ならどうする?」
そう言われて数人の生徒は悩み顔を見せ、健之介と竹葉はじっとしたままだった。
「今すぐに答えなくていい。これから決めていきな」
左門はそう話を終わらせた。
弓彦は空中ディスプレイを表示させ、自分達のクラスを確認する。この空中ディスプレイは身体を一部分でも機械化させていれば使用できる。竹葉と健之介と弓彦は自分達の教室に向かう。
「この教室だな」
健之介が一年C組の教室を見つけて三人は戸を開けて入る。白い机の並ぶ教室には既に何人かの生徒がいる。
「健ちゃんと俺は真ん中のほうの席で、竹葉は窓際の……あそこ!」
弓彦は窓際の前の席を指差す。
「そこまで言わなくてもわかるから」
「健ちゃんを助けてくれたサービスだよ」
「サービスって……」
弓彦の言った席の隣には既に誰かが座っていた。彼は健之介と弓彦のほうを見る。
「讃岐くん! 奈丹くん!」
茶色い髪に紫の瞳の彼に二人は呼ばれた。
「鉢か」
「鉢、受かってたんだ」
「?」
竹葉が自分の席に座るとその隣の席に健之介と弓彦は近寄る。
「二人共試験以来だね!」
鉢と呼ばれた彼は健之介と弓彦に笑いかける。
「あんた誰?」
竹葉も彼を見る。
「コイツは白山兵鉢。入学試験の時に知り合った」
健之介は彼、白山兵鉢を紹介する。
「よろしく! 鉢って呼んで!」
兵鉢は竹葉をじっと見つめる。竹葉は彼の視線が気になる。
「なんだよ」
「……讃岐くんから聞いたけど、眼と脳以外全部機械って本当?」
「あ、ああ……」
竹葉は戸惑う。自分を珍しがる視線はどうも苦手だ。
「鉢、そんな目で見るな」
健之介もそんな視線に気付く。
「そんな目って、俺の目はいつもこんなだよ」
兵鉢は自分の眼を指差す。彼の眼は紫色でよく見るとカメラのレンズのようだ。その特徴で竹葉はすぐわかった。
「お前……義眼なのか?」
「うん。眼球と視神経が人工なんだ」
視神経とは眼で見た映像を脳に送る神経。
「他は機械じゃないのか」
「他は全部生身でデフォルトの人とほぼ変わらないよ」
「俺と逆か」
竹葉は全身機械だが眼球と視神経は生まれたまま。つまり兵鉢と逆だ。
ふに。
「ふへ?」
「すごい、人工皮膚リアル過ぎる」
竹葉の頬に兵鉢は触れる、というより三つ指でつつく。
「お前さっきからなんだよ!」
竹葉は兵鉢と珍しがる視線と触れる手がどうもうっとうしい。
「鉢、そんぐらいにしときな」
健之介は兵鉢を止める。それと同時に入ってきたのは……
「お前達、席に座れ!」
クラスの担任、左門奈津菜だ。
「あ、昨日の先生」
教室にいた竹葉と生徒達はそれぞれの席に座る。
「私がお前達を受け持つ、左門奈津菜だ。ひとまず、入学おめでとう」
左門は教卓につき挨拶をする。
「お前達や私のように身体の機能の機械で補助している者達をコンバータと呼ぶのはもはや当たり前。サイボーグって呼び方に文句を言う輩もいるのことも知っているだろう」
左門はコンバータ達を取り巻く状況を語り出す。
「身体を機械にする事での生命維持を良くは思っていない輩もいる。人間だと思っていない輩もいる、それは生き物なのかと」
「……」
左門の説明に竹葉は曇る。機械と認識された事が彼にはあった。
「機械化の手術と術後のリハビリ、その後の社会復帰には全部、お金も時間もかかる」
左門は続ける。
「偉い人や当事者ではない人の理解を得るには、その人達にメリットがあると思わせるしかないのが現状。つまり社会貢献や人助けしかない。十代のうちに機械化手術を受けた子は、うちのような専門の教育機関への進学、卒業後はインフラやライフライン、医療や救命に関わる仕事に行く事がほぼ義務化されたわ」
現在の法では、十代で機械化手術を受けてコンバータになった子供はコンバータ専用の高校や大学への進学することが一部の例外を除き決まっている。仕事も基本的にはインフラやライフラインに関わる職種への就職を勧められている。
「やっぱ結構な縛りプレイだね。進路悩まなくて済むけど」
「後で聞くから黙ってろ」
弓彦は小さく健之介に耳打ちすると軽く静止する。
「私はお前達に聞きたい」
左門は竹葉達生徒を見つめる。
「逃げられない義務を迫られた時に、お前達ならどうする?」
そう言われて数人の生徒は悩み顔を見せ、健之介と竹葉はじっとしたままだった。
「今すぐに答えなくていい。これから決めていきな」
左門はそう話を終わらせた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【完結】碧よりも蒼く
多田莉都
青春
中学二年のときに、陸上競技の男子100m走で全国制覇を成し遂げたことのある深田碧斗は、高校になってからは何の実績もなかった。実績どころか、陸上部にすら所属していなかった。碧斗が走ることを辞めてしまったのにはある理由があった。
それは中学三年の大会で出会ったある才能の前に、碧斗は走ることを諦めてしまったからだった。中学を卒業し、祖父母の住む他県の高校を受験し、故郷の富山を離れた碧斗は無気力な日々を過ごす。
ある日、地元で深田碧斗が陸上の大会に出ていたということを知り、「何のことだ」と陸上雑誌を調べたところ、ある高校の深田碧斗が富山の大会に出場していた記録をみつけだした。
これは一体、どういうことなんだ? 碧斗は一路、富山へと帰り、事実を確かめることにした。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話
赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。
前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる