月下の半導体

湊戸アサギリ

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Case.3 義眼と義務

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 「俺と健ちゃんと竹葉は、一年C組だって」
弓彦は空中ディスプレイを表示させ、自分達のクラスを確認する。この空中ディスプレイは身体を一部分でも機械化させていれば使用できる。竹葉と健之介と弓彦は自分達の教室に向かう。
「この教室だな」
健之介が一年C組の教室を見つけて三人は戸を開けて入る。白い机の並ぶ教室には既に何人かの生徒がいる。
「健ちゃんと俺は真ん中のほうの席で、竹葉は窓際の……あそこ!」
弓彦は窓際の前の席を指差す。
「そこまで言わなくてもわかるから」
「健ちゃんを助けてくれたサービスだよ」
「サービスって……」
弓彦の言った席の隣には既に誰かが座っていた。彼は健之介と弓彦のほうを見る。
「讃岐くん! 奈丹くん!」
茶色い髪に紫の瞳の彼に二人は呼ばれた。
「鉢か」
「鉢、受かってたんだ」
「?」
竹葉が自分の席に座るとその隣の席に健之介と弓彦は近寄る。
「二人共試験以来だね!」
鉢と呼ばれた彼は健之介と弓彦に笑いかける。
「あんた誰?」
竹葉も彼を見る。
「コイツは白山兵鉢。入学試験の時に知り合った」
健之介は彼、白山兵鉢を紹介する。
「よろしく! 鉢って呼んで!」
兵鉢は竹葉をじっと見つめる。竹葉は彼の視線が気になる。
「なんだよ」
「……讃岐くんから聞いたけど、眼と脳以外全部機械って本当?」
「あ、ああ……」
竹葉は戸惑う。自分を珍しがる視線はどうも苦手だ。
「鉢、そんな目で見るな」
健之介もそんな視線に気付く。
「そんな目って、俺の目はいつもこんなだよ」
兵鉢は自分の眼を指差す。彼の眼は紫色でよく見るとカメラのレンズのようだ。その特徴で竹葉はすぐわかった。
「お前……義眼なのか?」
「うん。眼球と視神経が人工なんだ」
視神経とは眼で見た映像を脳に送る神経。
「他は機械じゃないのか」
「他は全部生身でデフォルトの人とほぼ変わらないよ」
「俺と逆か」
竹葉は全身機械だが眼球と視神経は生まれたまま。つまり兵鉢と逆だ。
ふに。
「ふへ?」
「すごい、人工皮膚リアル過ぎる」
竹葉の頬に兵鉢は触れる、というより三つ指でつつく。
「お前さっきからなんだよ!」
竹葉は兵鉢と珍しがる視線と触れる手がどうもうっとうしい。
「鉢、そんぐらいにしときな」
健之介は兵鉢を止める。それと同時に入ってきたのは……
「お前達、席に座れ!」
クラスの担任、左門奈津菜だ。
「あ、昨日の先生」
教室にいた竹葉と生徒達はそれぞれの席に座る。
「私がお前達を受け持つ、左門奈津菜だ。ひとまず、入学おめでとう」
左門は教卓につき挨拶をする。
「お前達や私のように身体の機能の機械で補助している者達をコンバータと呼ぶのはもはや当たり前。サイボーグって呼び方に文句を言う輩もいるのことも知っているだろう」
左門はコンバータ達を取り巻く状況を語り出す。
「身体を機械にする事での生命維持を良くは思っていない輩もいる。人間だと思っていない輩もいる、それは生き物なのかと」
「……」
左門の説明に竹葉は曇る。機械と認識された事が彼にはあった。
「機械化の手術と術後のリハビリ、その後の社会復帰には全部、お金も時間もかかる」
左門は続ける。
「偉い人や当事者ではない人の理解を得るには、その人達にメリットがあると思わせるしかないのが現状。つまり社会貢献や人助けしかない。十代のうちに機械化手術を受けた子は、うちのような専門の教育機関への進学、卒業後はインフラやライフライン、医療や救命に関わる仕事に行く事がほぼ義務化されたわ」
現在の法では、十代で機械化手術を受けてコンバータになった子供はコンバータ専用の高校や大学への進学することが一部の例外を除き決まっている。仕事も基本的にはインフラやライフラインに関わる職種への就職を勧められている。
「やっぱ結構な縛りプレイだね。進路悩まなくて済むけど」
「後で聞くから黙ってろ」
弓彦は小さく健之介に耳打ちすると軽く静止する。
「私はお前達に聞きたい」
左門は竹葉達生徒を見つめる。
「逃げられない義務を迫られた時に、お前達ならどうする?」
そう言われて数人の生徒は悩み顔を見せ、健之介と竹葉はじっとしたままだった。
「今すぐに答えなくていい。これから決めていきな」
左門はそう話を終わらせた。

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