学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太

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後編

一緒に学校へ

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「そうなんだ……カズ兄ちゃんが、そんなことを……」

「ってことで、俺もどうすればいいか、よくわからないんだ」

 俺は昼休みに花宮と一緒に弁当を食べながら、和幸さんのことを話していた。ちなみに今日はりんにも和幸さんと一緒に留守番してもらっている。りんの霊としての体験談でも聞いてもらえれば、なにか良いアイデアでも浮かぶかもしれないと思ったからだ。

「でも結局私だって、小さい時の私じゃないわけだしね……」

「そうなんだよ。だから後悔とかやり残した事とかっていっても、現実的にそのことを満たすことなんてできないしな」

 俺たちはなかなか良いアイディアが浮かばなかった。ところで俺は、一つ疑問に思っていたことを花宮に聞いてみる。

「ところで花宮はさ、和幸さんから、その……異性としての好意を感じたことはあったか?」

「え? まさか。全然そんなこと感じたことはなかったよ。カズ兄ちゃんは……本当のお兄ちゃんみたいに思ってたから。それに私だってまだ小さかったしね」

「なるほど……そりゃそうだよな」

 そこで俺は一つの可能性に思い当たった。思い違いかもしれないが……。

「花宮。明日から和幸さんを学校へ連れてきてもいいか?」

「えっ? 私はいいけど……城之内君、大変じゃない?」

「大変は大変だけど……でも和幸さんの後悔の念を和らげるために、必要なことのような気がするんだ」

 もしも俺が病弱な子供で学校にもろくに通えない状態だったら……俺はそう考えた。

「和幸さんは小さい頃から花宮に好意を持っていた。同時に学校生活だって普通に送りたかったに違いないんだ。普通の学生として学校へ行って、友達と遊んだり勉強したりして、普通に恋愛して、好きな人に告白して……そんな毎日を送りたかったんじゃないかな」

 そんな俺たちにとって普通のことを、和幸さんはできなかった。それは……後悔の念だって残るはずだよな。

「だから……とりあえず普通の高校生活を一緒に疑似体験できれば、和幸さんだって楽しいはずだと思うんだ。りんと同じでさ」

「うん……そうだね。それができれば、カズ兄ちゃんも喜ぶと思うよ」

 そんな話をしていたところで、昼休み終了の予鈴がなった。明日からのことを考えると気が重いが、少しでも良い方向へ進んでくれることを祈ることにした。




「ただいまー」

 学校を終えて俺はアパートの部屋に戻ったが……なにやらリビングが騒がしい。

『ちょっと、いいでしょ? アタシはバラエティーが見たいの』

『バラエティーは午前中もお昼も見たじゃないか。報道番組か教育番組を見せてくれ』

『イヤよ。あんなの面白くないじゃん』

『面白いとかそういう問題じゃない。君はもう少し、社会に興味を持つべきだぞ』

『社会に興味を持ってるから、バラエティを見るんでしょ。しーちゃん、リモコンの1を押して!』

『いや、式神君。教育テレビの4を押してくれ!』

 式神がテレビのリモコンの横で、二人の顔を交互に見ながらオロオロしていた。一応式神には「二人の言うとおりにリモコンを変えてくれ」とは言っておいたが……霊同士でチャンネル争いとかは想定外だ。こいつら子供かよ。

「はいはい、もうチャンネル争いはやめてくれ。式神、ご苦労だった」

 俺は式神に息を吹きかけて、テレビの電源をoffにした。

『あ、ナオ。おかえり』『おかえり。城之内君』

「ただいまです」

 俺はリビングテーブルの前に座った。

「和幸さん。明日りんと一緒に、俺たちの学校へ行ってみませんか?」

『え? い、いいのかい?』

「はい。和幸さんが行きたければ、ですけど。昼休みには花宮にも会えますし」

『そうか。もちろん行かせてもらうよ』

『えー、こいつも一緒に行くの?……まあでも、ひとりでお留守番は可愛そうだよね』

『別に君が留守番をしてくれても、いいんじゃないのかい?』

『なんでよ! アタシは行くの!』

「まあまあ、学校でも喧嘩はしないでくださいよ」

 これ本当に連れてって大丈夫なのか?……俺は一抹の不安を感じていた。




 そして翌日。俺たちと一緒に学校に行って教室に入った和幸さんは、朝からテンションが高かった。

『やっぱり高校ってなると、雰囲気も違うんだね。なんかいいなぁ』

「和幸さんは高校は通われてたんですか?」

『僕は通学が無理だったから、通信制の高校だったんだよ。だからこういう風に通学して、普通の学生生活を送るのが夢だったんだ』

 和幸さんは興奮気味にそう言った。やはり俺の思っていた通りだった。

「ナオ、おはようさん」

「おう、雄介」

『雄介……』

 俺のところへやってきた雄介を眺めながら、和幸さんは感慨深げだった。

『雄介は……しっかりしてきたな。ちゃんと父さんの跡を継いで頑張ってくれよ』

「雄介。お兄さんの件、大変だったな。」

 俺は本人を横にして、お悔やみの言葉を伝える。なんか変な感じだが。

「ああ。通夜は昨日だったんだけどな。葬儀は週末になりそうだ。最後ぐらい自宅に戻ってきて欲しかったんだけどな。それも叶わなかった」

『ああ、すまない。迷惑かけたな』

「雄介。お兄さん、どんな人だったんだ?」

 俺はちょっと水を向けてみた。

「ん? ああ、兄は小さい頃からめちゃめちゃ頭が良かったんだ。俺なんかより遥かに優秀で、父親もすごく期待してた。そのことで俺が父親からかまってもらえないって拗ねてた時もあったぐらいだからな」

「……雄介がそう言うんだったら、めちゃめちゃ優秀だったんだな」

「ああ。もし生きてたら、トップレベルの大学に進学してたと思う。入院中もずっと勉強してたのを覚えてるよ」

『ははっ、結局望みは叶わなかったけど……雄介だって十分優秀じゃないか。それに健康な体でいるってことは、それ以上に大切なことなんだよ』

 俺の横で雄介を見ている和幸さんは、「優しい兄」としての表情を見せていた。

「ところでナオ、もう女子は夏服から冬服になってくる時期だよな。寂しいとは思わないか? あの背中の下着が透ける感じ……それが見られなくなるというのは、寂しい限りだ」

『うーん雄介、それはちょっと違うな。女子と言っても高3ともなれば、もう立派な大人の体型じゃないか。女の子の体の本当に美しい時期というのは、もうとっくに過ぎているんだ。城之内君、お友達のなかでまだ小さい妹さんがいるお友達はいないのかい?』

『何なのよ、このエロメガネとロリコンメガネの兄弟は』

『メガネは関係ないじゃないか』

『だからっ! 否定するのはメガネじゃない方なの!』

 いずれにしても……雄介と和幸さんは、まちがいなく血の繋がった兄弟だった。
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