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後編
俺のアパートへ
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『でもどうやって? 僕はこの部屋の外にも出たかったんだけど、全然出られなかったんだ』
俺はそれについても、りんの時と同じ説明をした。そして……
「俺が作った霊壁の中へ入ってもらえれば、ここから出ることができますよ。とりあえず俺の部屋に行きましょう」
『また琴葉ちゃんには会えるんだよね?』
「あ、はい、もちろん。それは約束します」
和幸さんにも納得してもらったところで、俺はカバンの中から小さな和紙を取り出して呪文を唱える。和紙が式神に変わったところで更に呪文を唱えて霊壁をつくり、その中に和幸さんに入ってもらった。
俺が自前で作った霊壁には、既にりんが入っているので解除ができない。なのでこうやって式神に霊壁を守護してもらう形を取る。俺は式神を制服のポケットに忍ばせて、帰る準備をする。
「じゃあ花宮、また明日な」
「うん。ありがとう、城之内君」
『琴ちゃん、またねー』
『琴葉ちゃん、また会いに来るからね』
俺は二人の霊を連れて、花宮の家を出た。駅までの道を、3人並んで歩いて行く。
『ああ……この辺も久しぶりに来たけど変わらないな』
和幸さんは、まわりをキョロキョロと眺めながらそう言った。
「和幸さんは病院にいる時間が長かったんですね」
『ああ。昔は入退院を繰り返していたんだけど、ここ数年は病院から出ることもなかったよ。だから久しぶりに琴葉ちゃんを見たときは、ずいぶん大きくなっていてびっくりしたよ』
和幸さんは昔を懐かしむように話を続ける。
『あの頃の琴葉ちゃんは本当に可愛くてね。でも今は……第二次性徴を終えてしまって、身長も胸もおしりも、全て巨大化してしまっていたよ。純情無垢で小さくて従順で、胸もぺったんこで棒付きキャンディをペロペロしていたあの可愛い琴葉ちゃんは、もういなくなってしまったんだ。時間の経過というのは、全く残酷だよ』
『ナオ、警察を呼んで! ここに変質者がいるわ!』
和幸さんの性癖がヤバかった。長い入院生活のせいなのか……単なるロリコン野郎じゃねーか。花宮の部屋から連れ出してきてよかった。いや、逆にいても安全だったのか?
駅に着いて俺たちが電車に乗る前に、りんと和幸さんに電車の中では静かにしてもらうようにお願いした。さすがに人が多いところで二人を相手するとなると、俺の負担が大きすぎる。
電車を降りると俺たちは直接スーパーへ食材の買い出しへ向かう。俺はいつものようにりんの指示で、買い物かごへ食材をポイポイと入れていった。
『君たち、仲がいいんだね』
レジで会計を終えて俺のアパートへ向かって歩いている途中。和幸さんがそう訊いてきた。
『そーだよ。アタシたち付き合ってるもん。言ってみれば同棲ね』
『付き合ってる? 同棲?』
『そうそう。あ、因みに琴ちゃんもナオと付き合ってるわよ。アタシと琴ちゃんは、両方ともナオの彼女なんだよ』
「りん!」
『いーじゃない、どうせすぐわかることなんだから』
いやそれにしたって、言うタイミングっていうもんがあるだろ?
『な、なんだって? 城之内君、いったいそれはどういうことなんだ? 君は琴葉ちゃんとこの……霊体と、二股をかけているのか!?』
言わんこっちゃない……面倒くせーことになってきた。
「えっと……まず俺は花宮と付き合ってます。それでこのりんは……花宮も合意のもとで一緒にいるっていうか」
『アタシはね、琴ちゃんに憑依できるの。それで一緒にチューとかするんだよ』
『な、なんだと!? そんなことが可能なのか?! なんという裏山……いや、フシダラな関係なんだ! 君たちはまだ高校生じゃないか! そんなことは許されないぞ!』
和幸さん、うらやまとか言っちゃってるけど……まあお怒りの気持ちは分かる。
『いつの時代の話をしているのよ! 今の高校生は普通にやることはやるの。でもナオはチュー以上はしないんだよ。不能霊能者だから』
『なに!? 不能で霊能なのかっ!?』
「二人ともうるせーよ!」
不能で霊能ってなんだ? 意味わからん。
『そうなのか……琴葉ちゃんにはもう彼氏が……確かにあれだけ可愛ければ仕方がないのか……いやでも所詮は高校生の恋、この先すぐに破局するかもしれない……いや、きっとそうに違いない!』
「できれば本人のいない所で言ってもらえますかね?」
その後も和幸さんはブツブツと独り言を言っていたが……俺はこれからの事を考えると、頭が痛くなってきた。
アパートに着いても和幸さんの式神はそのままにして、その代わり霊壁の大きさを部屋いっぱいに広げた。これから和幸さんがいる間は、式神は毎日交換しないといけないな。俺の霊力じゃ、式神の効力は長くても丸一日しか持たない。
『ふむ、なかなか綺麗にしているじゃないか』
「とりあえず俺、メシ作りますんで……テレビでも見てて下さい」
『アタシも手伝うよ』
俺はキッチンで豚のしょうが焼きを作り始める。りんはいつも通り俺の横へやってきて、料理指導をしてくれる。というより、ただ喋ってるだけの方が多いが。すると和幸さんも隣にやってきた。
俺はそれについても、りんの時と同じ説明をした。そして……
「俺が作った霊壁の中へ入ってもらえれば、ここから出ることができますよ。とりあえず俺の部屋に行きましょう」
『また琴葉ちゃんには会えるんだよね?』
「あ、はい、もちろん。それは約束します」
和幸さんにも納得してもらったところで、俺はカバンの中から小さな和紙を取り出して呪文を唱える。和紙が式神に変わったところで更に呪文を唱えて霊壁をつくり、その中に和幸さんに入ってもらった。
俺が自前で作った霊壁には、既にりんが入っているので解除ができない。なのでこうやって式神に霊壁を守護してもらう形を取る。俺は式神を制服のポケットに忍ばせて、帰る準備をする。
「じゃあ花宮、また明日な」
「うん。ありがとう、城之内君」
『琴ちゃん、またねー』
『琴葉ちゃん、また会いに来るからね』
俺は二人の霊を連れて、花宮の家を出た。駅までの道を、3人並んで歩いて行く。
『ああ……この辺も久しぶりに来たけど変わらないな』
和幸さんは、まわりをキョロキョロと眺めながらそう言った。
「和幸さんは病院にいる時間が長かったんですね」
『ああ。昔は入退院を繰り返していたんだけど、ここ数年は病院から出ることもなかったよ。だから久しぶりに琴葉ちゃんを見たときは、ずいぶん大きくなっていてびっくりしたよ』
和幸さんは昔を懐かしむように話を続ける。
『あの頃の琴葉ちゃんは本当に可愛くてね。でも今は……第二次性徴を終えてしまって、身長も胸もおしりも、全て巨大化してしまっていたよ。純情無垢で小さくて従順で、胸もぺったんこで棒付きキャンディをペロペロしていたあの可愛い琴葉ちゃんは、もういなくなってしまったんだ。時間の経過というのは、全く残酷だよ』
『ナオ、警察を呼んで! ここに変質者がいるわ!』
和幸さんの性癖がヤバかった。長い入院生活のせいなのか……単なるロリコン野郎じゃねーか。花宮の部屋から連れ出してきてよかった。いや、逆にいても安全だったのか?
駅に着いて俺たちが電車に乗る前に、りんと和幸さんに電車の中では静かにしてもらうようにお願いした。さすがに人が多いところで二人を相手するとなると、俺の負担が大きすぎる。
電車を降りると俺たちは直接スーパーへ食材の買い出しへ向かう。俺はいつものようにりんの指示で、買い物かごへ食材をポイポイと入れていった。
『君たち、仲がいいんだね』
レジで会計を終えて俺のアパートへ向かって歩いている途中。和幸さんがそう訊いてきた。
『そーだよ。アタシたち付き合ってるもん。言ってみれば同棲ね』
『付き合ってる? 同棲?』
『そうそう。あ、因みに琴ちゃんもナオと付き合ってるわよ。アタシと琴ちゃんは、両方ともナオの彼女なんだよ』
「りん!」
『いーじゃない、どうせすぐわかることなんだから』
いやそれにしたって、言うタイミングっていうもんがあるだろ?
『な、なんだって? 城之内君、いったいそれはどういうことなんだ? 君は琴葉ちゃんとこの……霊体と、二股をかけているのか!?』
言わんこっちゃない……面倒くせーことになってきた。
「えっと……まず俺は花宮と付き合ってます。それでこのりんは……花宮も合意のもとで一緒にいるっていうか」
『アタシはね、琴ちゃんに憑依できるの。それで一緒にチューとかするんだよ』
『な、なんだと!? そんなことが可能なのか?! なんという裏山……いや、フシダラな関係なんだ! 君たちはまだ高校生じゃないか! そんなことは許されないぞ!』
和幸さん、うらやまとか言っちゃってるけど……まあお怒りの気持ちは分かる。
『いつの時代の話をしているのよ! 今の高校生は普通にやることはやるの。でもナオはチュー以上はしないんだよ。不能霊能者だから』
『なに!? 不能で霊能なのかっ!?』
「二人ともうるせーよ!」
不能で霊能ってなんだ? 意味わからん。
『そうなのか……琴葉ちゃんにはもう彼氏が……確かにあれだけ可愛ければ仕方がないのか……いやでも所詮は高校生の恋、この先すぐに破局するかもしれない……いや、きっとそうに違いない!』
「できれば本人のいない所で言ってもらえますかね?」
その後も和幸さんはブツブツと独り言を言っていたが……俺はこれからの事を考えると、頭が痛くなってきた。
アパートに着いても和幸さんの式神はそのままにして、その代わり霊壁の大きさを部屋いっぱいに広げた。これから和幸さんがいる間は、式神は毎日交換しないといけないな。俺の霊力じゃ、式神の効力は長くても丸一日しか持たない。
『ふむ、なかなか綺麗にしているじゃないか』
「とりあえず俺、メシ作りますんで……テレビでも見てて下さい」
『アタシも手伝うよ』
俺はキッチンで豚のしょうが焼きを作り始める。りんはいつも通り俺の横へやってきて、料理指導をしてくれる。というより、ただ喋ってるだけの方が多いが。すると和幸さんも隣にやってきた。
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