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後編
完璧なタイミング
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ホテルでの部屋割りは、各室2名か3名。俺たちの部屋は班の男子と同じで、俺、雄介、本田の3人。温泉大浴場へ向かう時には式神を使って霊壁をつくり、その中にりんを残して行くようにした。
ホテルの温泉はとても風情があっていいのだが、いかんせん人数が多すぎる。数回に分けたとはいえ、これだけ男子高校生だらけだと風情も何もない。女子風呂を覗こうというベタなイベントもなく、俺は大浴場を出てきた。
部屋に戻ると、りんが『おかえりー』と出迎えてくれる。雄介も本田も、まだ戻ってはいない。
『ナオ、早かったね』
「ああ。人数が多すぎて、のんびりできなかったわ」
『あー、まあそうだよね。男子高校生だらけの男風呂とか……アタシでも見たくないかも』
「まったくだな」
『ねえ、お部屋のユニットバスでさ、琴ちゃんと一緒に入ったら?』
「……お前、なに言ってんの?」
『もちろんアタシも一緒に入るからさー。キャーッ』
また例によって、りんは一人で盛り上がっていた。すると部屋のドアから鍵を開ける音がした。雄介と本田が帰ってきた。
「ナオ、早かったな」
「ああ。いくらなんでも人数多すぎだろ?」
「うん、確かにね。僕もびっくりしたよ」
二人ともペットボトルのお茶を飲みだした。
「そうそう、後から山瀬と福井がこの部屋に来るってさ」
雄介がさらりとそう言った。
「え? そうなのか?」
「そうそう。クラスの人気女子二人が来てくれるって。いやー、久山と城之内と同じ班でよかったよ」
本田は嬉しそうに口にした。
「いや雄介はともかく、俺は関係ないだろ?」
「いやいや、城之内もそのミステリアスな感じが女子に人気らしいよ。それに……花宮さんと付き合ってるんだよね? それだけでも女子からしたら興味津津なんじゃないかな。僕もその辺のことを聞きたいよ」
なんだかおかしなことになってるな……俺は根掘り葉掘り訊かれることになるのかと思うと、既に憂鬱な気分になった。
『まあ琴ちゃんと付き合うってことは、そういうことだからね。有名税ぐらいに考えといたほうがいいよ』話を聞いていた、隣のりんからのアドバイスだった。
しばらく休憩していると、コンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。雄介がドアを開けると、くだんの二名がやってきた。
「こんばんはー」
「お邪魔するねっ」
こうしてみると福井はスタイルがいいし大人っぽい雰囲気の美人だ。山瀬も小柄で可愛らしく、ちょっとだけ美久を彷彿させる。それに話も面白くて話題豊富だ。二人とも「人気の女子」というのも頷ける。
福井と山瀬が入ってきて、俺たちの部屋を見渡した。
「あ、ちょっと広い」「そうだね、ウチらの部屋よりちょっと広いかも」
「まあ3人部屋だからな」
雄介がそう答える。ちなみに福井と山瀬は二人部屋の同室らしい。
二人の女子がベッドの上に腰掛けた。俺たち男3人はそのまわりに適当に座る。福井と山瀬が持ってきたスナック菓子を開けた。
「今日まわった所は、ちょっと退屈だったよね」
「うん。ウチ、映画の時ちょっと寝ちゃったよ」
福井も山瀬も、やっぱり今日のコースは退屈だったみたいだ。
「でも城之内君、メモちゃんと取ってたよね? 偉いなぁ」
「ああ。だってレポートの提出があるだろ?」
山瀬からの問いかけに、俺はそう答える。
「確かに今日は退屈だったよね。でも明日はラフティングがあるでしょ? 僕はそれが楽しみだなぁ」
本田の言う通り、明日はこの修学旅行のメインイベントとでも言うべき「ラフティング体験」がある。北海道の大自然のなか、ラフティングで川下りをしていく。途中ちょっとした急流ポイントなんかもあって、スリル満点だそうだ。俺も密かに楽しみにしているが、実はりんがもの凄く楽しみにしていたりする。
「そうそう。わたし、前からラフティングはやってみたかったの!」
「えー? ウチは泳げないから、怖いよ。パスできないかなって思ったくらいだよ」
福井も楽しみのようだが、山瀬はそうでもないらしい。
「泳げないって言っても、ライフジャケットを着てるから大丈夫だろ?」
「うーん……て言うかね、ウチ小さいときに川で深みにハマって溺れかけたことがあるの。だから水そのものが怖いっていうか……もし川に落ちたりとかしたら、パニックになっちゃうかも」
「じゃあ皆で落とさないとな」
「やめてよー! それ、マジでやめて。フリじゃないからね!」
雄介は山瀬をからかっているが、山瀬はマジで泳げないようだ。明日はこの5人と、もう一人他の班からの女子が加わって、6人+ガイド1名でラフティングを楽しむ予定だ。
「ところでさ……わたし、城之内君と花宮さんの馴れ初めを聞きたいなぁ」
「そうそう。僕も是非聞かせてもらいたいよ」
「……特に話して面白いことなんかないぞ」
福井と本田からの追求が始まりそうになり、ヤバイなぁと思っていたところ……俺のスマホが振動した。
花宮:これからロビーで会えないかな?
完璧なタイミング。花宮からの助け舟だった。
ホテルの温泉はとても風情があっていいのだが、いかんせん人数が多すぎる。数回に分けたとはいえ、これだけ男子高校生だらけだと風情も何もない。女子風呂を覗こうというベタなイベントもなく、俺は大浴場を出てきた。
部屋に戻ると、りんが『おかえりー』と出迎えてくれる。雄介も本田も、まだ戻ってはいない。
『ナオ、早かったね』
「ああ。人数が多すぎて、のんびりできなかったわ」
『あー、まあそうだよね。男子高校生だらけの男風呂とか……アタシでも見たくないかも』
「まったくだな」
『ねえ、お部屋のユニットバスでさ、琴ちゃんと一緒に入ったら?』
「……お前、なに言ってんの?」
『もちろんアタシも一緒に入るからさー。キャーッ』
また例によって、りんは一人で盛り上がっていた。すると部屋のドアから鍵を開ける音がした。雄介と本田が帰ってきた。
「ナオ、早かったな」
「ああ。いくらなんでも人数多すぎだろ?」
「うん、確かにね。僕もびっくりしたよ」
二人ともペットボトルのお茶を飲みだした。
「そうそう、後から山瀬と福井がこの部屋に来るってさ」
雄介がさらりとそう言った。
「え? そうなのか?」
「そうそう。クラスの人気女子二人が来てくれるって。いやー、久山と城之内と同じ班でよかったよ」
本田は嬉しそうに口にした。
「いや雄介はともかく、俺は関係ないだろ?」
「いやいや、城之内もそのミステリアスな感じが女子に人気らしいよ。それに……花宮さんと付き合ってるんだよね? それだけでも女子からしたら興味津津なんじゃないかな。僕もその辺のことを聞きたいよ」
なんだかおかしなことになってるな……俺は根掘り葉掘り訊かれることになるのかと思うと、既に憂鬱な気分になった。
『まあ琴ちゃんと付き合うってことは、そういうことだからね。有名税ぐらいに考えといたほうがいいよ』話を聞いていた、隣のりんからのアドバイスだった。
しばらく休憩していると、コンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。雄介がドアを開けると、くだんの二名がやってきた。
「こんばんはー」
「お邪魔するねっ」
こうしてみると福井はスタイルがいいし大人っぽい雰囲気の美人だ。山瀬も小柄で可愛らしく、ちょっとだけ美久を彷彿させる。それに話も面白くて話題豊富だ。二人とも「人気の女子」というのも頷ける。
福井と山瀬が入ってきて、俺たちの部屋を見渡した。
「あ、ちょっと広い」「そうだね、ウチらの部屋よりちょっと広いかも」
「まあ3人部屋だからな」
雄介がそう答える。ちなみに福井と山瀬は二人部屋の同室らしい。
二人の女子がベッドの上に腰掛けた。俺たち男3人はそのまわりに適当に座る。福井と山瀬が持ってきたスナック菓子を開けた。
「今日まわった所は、ちょっと退屈だったよね」
「うん。ウチ、映画の時ちょっと寝ちゃったよ」
福井も山瀬も、やっぱり今日のコースは退屈だったみたいだ。
「でも城之内君、メモちゃんと取ってたよね? 偉いなぁ」
「ああ。だってレポートの提出があるだろ?」
山瀬からの問いかけに、俺はそう答える。
「確かに今日は退屈だったよね。でも明日はラフティングがあるでしょ? 僕はそれが楽しみだなぁ」
本田の言う通り、明日はこの修学旅行のメインイベントとでも言うべき「ラフティング体験」がある。北海道の大自然のなか、ラフティングで川下りをしていく。途中ちょっとした急流ポイントなんかもあって、スリル満点だそうだ。俺も密かに楽しみにしているが、実はりんがもの凄く楽しみにしていたりする。
「そうそう。わたし、前からラフティングはやってみたかったの!」
「えー? ウチは泳げないから、怖いよ。パスできないかなって思ったくらいだよ」
福井も楽しみのようだが、山瀬はそうでもないらしい。
「泳げないって言っても、ライフジャケットを着てるから大丈夫だろ?」
「うーん……て言うかね、ウチ小さいときに川で深みにハマって溺れかけたことがあるの。だから水そのものが怖いっていうか……もし川に落ちたりとかしたら、パニックになっちゃうかも」
「じゃあ皆で落とさないとな」
「やめてよー! それ、マジでやめて。フリじゃないからね!」
雄介は山瀬をからかっているが、山瀬はマジで泳げないようだ。明日はこの5人と、もう一人他の班からの女子が加わって、6人+ガイド1名でラフティングを楽しむ予定だ。
「ところでさ……わたし、城之内君と花宮さんの馴れ初めを聞きたいなぁ」
「そうそう。僕も是非聞かせてもらいたいよ」
「……特に話して面白いことなんかないぞ」
福井と本田からの追求が始まりそうになり、ヤバイなぁと思っていたところ……俺のスマホが振動した。
花宮:これからロビーで会えないかな?
完璧なタイミング。花宮からの助け舟だった。
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