23 / 54
No.23:プロジェクト
しおりを挟む
「それと君に声をかけた理由はもう一つあってな」
校長が少し居住まいを正す。
「君は城京大学への特別推薦枠というのを知っているかの?」
「!」
もちろん知っている。
むしろうちの生徒で、知らないやつはいないだろう。
毎年1名だけの、城京大学への特別推薦枠。
学部も経済学部、法学部、商学部の中から、好きな学部を選べる。
試験は形式上、面接と小論文だけ。
実質無試験だ。
しかも入学金と、初年度の授業料が全額免除だ。
これが大きい。
ざっと計算しても、大学4年間の総学費の3分の1ぐらいの金額になる。
しかも大学には他にも様々な返済不要の奨学金があるのだが、「特別推薦枠で入ってきた生徒」というフラグが立つと、奨学金申請の際に何かと有利なのだ。
副次的な効果も大きい。
この特別推薦枠、成績だけでは難しい。
一言で言うと、「学校にメリットを与えた者、知名度を高めた者」が優遇される。
例えばスポーツの全国大会上位とか、弁論大会の世界大会に進出とか。
過去にはそういった生徒達が選ばれている。
もちろん僕にはまったく縁がないことなので、全然興味はなかったが。
「もしこのプロジェクトが成功したら、瀬戸川君をこの推薦枠にノミネートできるのじゃが、興味はないかね?」
「ほ、本当ですか?」
「もちろん推薦枠を確約するわけではない。じゃがもしわが校の知名度が上がり、受験者が増え、その結果偏差値が上がったら……それ以上の学校への貢献というのは、おそらくないじゃろうな」
僕はちょっと興奮していた。
僕はできればそのままエスカレーターで城京大学へ進学できればいい、と思っていた。
日本の私立大学のレベルは、早慶大学を筆頭に、その下にカソリック系の語学大学が2校、さらにその下に城京大学、宇和大学、野田島大学、江戸山大学、その頭文字をとって「JUNE」と呼ばれている大学群がある。
JUNEであれば、とりあえず就職には困らないと言われている。それでも僕にとってはレベルは低くない。外部受験では合格するかどうかさえ疑わしい。
そんなJUNEの一角である城京大学に、実質無試験・しかも授業料免除の恩典までついてくる。
喉から手が出るほど欲しい。
「もしチャンスがあるんでしたら、是非やらせてください」
僕はそう答えていた。
そしてなぜ校長先生が、僕にこの話をもってきたのか理解できた。
校長先生は、僕の家庭の事情を知っている。
僕の経済状況を心配してくれたんだろう。
本当にありがたい話だ。
「そうか、やってくれるか。では後日広告代理店の人を紹介しよう。教員の方でこのプロジェクトの中心となってもらうのは、波平……山田副校長先生だ。また別途ミーティングをやってもらうことになる」
今、波平って言ったよね?
「わかりました。ありがとうございます」
「うむ。また別途連絡がいくと思うが、頑張ってくれ」
「はい。頑張ります。失礼します」
なんとかこのプロジェクトを成功させよう。
僕の興奮はまだ続いていた。
だから部屋を出るときの、校長先生の言葉は全く聞こえなかった。
「ふぅ。瀬戸川よ、お前さんの息子は少し線が細いが、お前さんより優秀そうじゃぞ」
校長が少し居住まいを正す。
「君は城京大学への特別推薦枠というのを知っているかの?」
「!」
もちろん知っている。
むしろうちの生徒で、知らないやつはいないだろう。
毎年1名だけの、城京大学への特別推薦枠。
学部も経済学部、法学部、商学部の中から、好きな学部を選べる。
試験は形式上、面接と小論文だけ。
実質無試験だ。
しかも入学金と、初年度の授業料が全額免除だ。
これが大きい。
ざっと計算しても、大学4年間の総学費の3分の1ぐらいの金額になる。
しかも大学には他にも様々な返済不要の奨学金があるのだが、「特別推薦枠で入ってきた生徒」というフラグが立つと、奨学金申請の際に何かと有利なのだ。
副次的な効果も大きい。
この特別推薦枠、成績だけでは難しい。
一言で言うと、「学校にメリットを与えた者、知名度を高めた者」が優遇される。
例えばスポーツの全国大会上位とか、弁論大会の世界大会に進出とか。
過去にはそういった生徒達が選ばれている。
もちろん僕にはまったく縁がないことなので、全然興味はなかったが。
「もしこのプロジェクトが成功したら、瀬戸川君をこの推薦枠にノミネートできるのじゃが、興味はないかね?」
「ほ、本当ですか?」
「もちろん推薦枠を確約するわけではない。じゃがもしわが校の知名度が上がり、受験者が増え、その結果偏差値が上がったら……それ以上の学校への貢献というのは、おそらくないじゃろうな」
僕はちょっと興奮していた。
僕はできればそのままエスカレーターで城京大学へ進学できればいい、と思っていた。
日本の私立大学のレベルは、早慶大学を筆頭に、その下にカソリック系の語学大学が2校、さらにその下に城京大学、宇和大学、野田島大学、江戸山大学、その頭文字をとって「JUNE」と呼ばれている大学群がある。
JUNEであれば、とりあえず就職には困らないと言われている。それでも僕にとってはレベルは低くない。外部受験では合格するかどうかさえ疑わしい。
そんなJUNEの一角である城京大学に、実質無試験・しかも授業料免除の恩典までついてくる。
喉から手が出るほど欲しい。
「もしチャンスがあるんでしたら、是非やらせてください」
僕はそう答えていた。
そしてなぜ校長先生が、僕にこの話をもってきたのか理解できた。
校長先生は、僕の家庭の事情を知っている。
僕の経済状況を心配してくれたんだろう。
本当にありがたい話だ。
「そうか、やってくれるか。では後日広告代理店の人を紹介しよう。教員の方でこのプロジェクトの中心となってもらうのは、波平……山田副校長先生だ。また別途ミーティングをやってもらうことになる」
今、波平って言ったよね?
「わかりました。ありがとうございます」
「うむ。また別途連絡がいくと思うが、頑張ってくれ」
「はい。頑張ります。失礼します」
なんとかこのプロジェクトを成功させよう。
僕の興奮はまだ続いていた。
だから部屋を出るときの、校長先生の言葉は全く聞こえなかった。
「ふぅ。瀬戸川よ、お前さんの息子は少し線が細いが、お前さんより優秀そうじゃぞ」
40
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
イケメン御曹司とは席替えで隣になっても、これ以上何も起こらないはずだった。
たかなしポン太
青春
【第7回カクヨムコンテスト中間選考通過作品】
本編完結しました!
「どうして連絡をよこさなかった?」
「……いろいろあったのよ」
「いろいろ?」
「そう。いろいろ……」
「……そうか」
◆◆◆
俺様でイメケンボッチの社長御曹司、宝生秀一。
家が貧しいけれど頭脳明晰で心優しいヒロイン、月島華恋。
同じ高校のクラスメートであるにもかかわらず、話したことすらなかった二人。
ところが……図書館での偶然の出会いから、二人の運命の歯車が回り始める。
ボッチだった秀一は華恋と時間を過ごしながら、少しずつ自分の世界が広がっていく。
そして華恋も秀一の意外な一面に心を許しながら、少しずつ彼に惹かれていった。
しかし……二人の先には、思いがけない大きな障壁が待ち受けていた。
キャラメルから始まる、素直になれない二人の身分差ラブコメディーです!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
ただ巻き芳賀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる