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No.16:めっちゃ揺れてる。

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「そう。このヌーブラっていうのは、キャバ嬢の必需品なの。ウチの店のキャストは、ほぼ全員やってるよ」

「そうなんですね。てことはやっぱり……胸の大きい方が人気がある、ってことですか?」

「それもあるけど、主に防御用かな。お店は基本おさわり禁止なのね。でもやっぱりちょっと触ってくる人とか、あるいは腕を押し当ててくる人とかいるわけ。でもこうやって中にヌーブラを入れておくと、こっちは触られた感覚がほとんどないのよ。たとえばこうやっても」

 いきなりすみかさんが僕の腕を取って、胸を押し付けてきた。

「ちょ、ちょっと、すみかさん!」

「こうやってもね、全然こっちは腕の感触が無いんだよ。翔君はどう? シリコンの感覚、わかる?」

「わかりませんわかりません!」

 僕はパニックになった。
 とりあえず腕を離してもらった。

「はぁ……もう心臓がもたないですよ」

「翔君は……やっぱりおっきい方が好きなの?」

 正解はなんだ?

「えっと……僕はすみかさんの胸のサイズが好きです」

「そ、そういうこと、真顔で言わないでくれる?」

 すみかさんの顔が赤くなった。

「じゃあ、聞かないで下さいよ……」

 こっちまで赤くなる。

「はぁー、でもなんでこんなバイトしてるんだろうね……親が聞いたら、絶対泣くよ」

 すみかさんのテンションが下がる。

「やっぱりご両親は知らないんですか?」

「そりゃ知らないわよー。母親が知ったら、それこそ本当に心臓が止まっちゃう」

 すみかさんのお母さんは、たしか心臓が悪かったんだな。

「短時間で効率よくお金が稼げて、お昼間に時間が取れる仕事って、やっぱりこういう仕事しかないのよね。ほんと、やんなっちゃう」

「大変なんですね。でも教師目指して頑張りましょうよ! 僕、応援します」

「もー翔君、本当にいい子だなー」

 すみかさんがまた僕の腕を取って、胸を押し付けてきた。

「だ、だからそれ、やめて下さいって」

 すみかさん、絶対に面白がってやってるよね。

………………………………………………………………

「よし、じゃあ動画取ろうよ」

 なぜか、すみかさんはノリノリだ。

「でも本当にいいんですか?」

「全然いいよ。だって顔出ししないし、声も使わないんでしょ? 絶対誰だかわかんないじゃん」

 僕のチャンネルは、顔出し無し、声無し、テロップのみだ。
 動画編集はパソコンでやっている。
 やっぱり身バレは、あまりしたくない。

 一応構成を考える。
 僕とすみかさんが横並びになって、斜めから撮る。
 すみかさんは、カメラ側でフライパン担当だ。
 いとこのお姉さんに、料理を手伝ってもらうことにする。

 カメラアングルを決めて、一発録りだ。
 メニューは業スーのレトルトハヤシライスを使った、牛肉の煮込み料理だ。
 ていうかそもそもこれぐらいだったら、手伝いなんか必要ないんだけど。

 僕が肉を適当な大きさに切って、フライパンに入れる。
 すみかさんがフライパンを揺らしながら、胸も揺らす。
 うわ、めっちゃ揺れてる。
 大サービスだ。

 あとはフライパンにレトルトのハヤシを入れるだけ。
 業スーの冷凍ほうれん草をレンチンしてバターを混ぜて、その上にフライパンの中のものをかければ完成だ。

 完成シーンで、すみかさんは小さくぴょんぴょんと跳ねて、喜びを表現する。
 うわっ……もう、ゆっさゆさだ。

 テーブルに移って、試食シーン。
 すみかさんは片腕をテーブルについて、その上に胸を乗っける。
 絶対に誰も料理なんて見ないだろうな……。

 取った動画をパソコンで編集して、夜遅い時間にアップロード完了。

 そして3日後……

「登録者数2,650人、だと?」

 3倍近くに増えていた。
 再生回数はいつもの8倍ぐらい。
 おっぱい効果、凄すぎる。

 すみかさんも大喜びだ。

「やっぱりヌーブラって、最強だねー」
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