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No.37:強烈な愛のメッセージ

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「おはよう、雪奈」

 翌朝。
 学校の昇降口で、雪奈に声をかける。

「あ、浩介君、おはよう。熱はもう大丈夫なの?」

「ああ、まだ少しふらふらするけどな。でも熱はすっかり下がったよ」

「そう、よかった。なんか昨日はごめんね……泣いちゃったりして。迷惑かけちゃった」
 雪奈はバツが悪そうに、小声でいった。

「全然そんなことないぞ。こちらこそ昨日、ありがとな」

 雪奈はあれからしばらく泣き続けた。
 そしてそのままベッドの上に顔を乗せたまま、泣き疲れて眠ってしまった。
 俺はその間、ずっと頭を撫で続けていた。

 しばらくすると目を覚まし、
「もうこんな時間!」
 と慌てて体を起こした。

 それから少し恥ずかしそうに、
「えーと、また熱出したりしたら心配だから、Lime教えてくれないかな」
 と言ってきた。
 そういえばお互いの連絡先、まだ知らなかったんだな。

 雪奈はスマホで俺のQRを読み込むと、嬉しそうに微笑んだ。
 俺のアドレス帳に、二人目のJKの名前が入った。
「それじゃあ、お大事にね」
 そう笑顔を残して、照れくさそうに帰っていった。

「あのだし巻き卵で、風邪がよくなった気がするよ。何か元気が出るものでも入れてくれたのか?」
 俺はあえて軽口をたたく。

「うーん、愛かな?」
 雪奈は首を少しかしげて、いたずらっぽく笑った。

 やられた。
 可愛いかよ。

「冗談でもそういうのやめてくれ。また熱が出そうだ」

 えへへっと、雪奈は「一本とってやった」という顔をしている。

「でも気をつけないとだめだよ。これから寒く……」

 雪奈が靴箱を開けると、中から白い紙がひらりと落ちてきた。

 半分に折られたA4の紙。
 そこにはプリンターで印刷された文字。
 大きなフォントで、愛の言葉が綴られていた。


『いい気になってんじゃねーぞ、このクソビッチ!』


 これはまた、強烈な愛のメッセージだ。
 雪奈はしゃがんで、悲しそうにそれを拾った。

「雪奈、こういうのたびたびあるのか?」

「うーん、前はたまにあるくらいだったけど、最近ちょっと多い……かな」

「そうか」

 俺は天井を見渡す。
 監視カメラは、昇降口の入り口部分に取り付けられているだけだ。
 靴箱がある周辺は、監視エリア外だろう。

 その時、俺は何か鋭い視線を感じた。
 感じた先を見ると、階段のところに女子生徒が3人。
 真ん中の茶髪ストレートと一瞬目が合ったが、3人ともそのまま階段を上がって消えていった。

「あんまり気にするな。単なるやっかみだから」

「うん……そうだね」

 俺はそのとき、「有名税だろ」ぐらいにしか捉えていなかった。
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