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No.33:悪い風邪

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「ぶぁっーーくしょい!……うー寒いぃぃぃ……げっ、9万2千円のマイナスだと?」

 花火大会から10日ほど経った。
 俺はベッドの中で悪寒を感じながら、スマホで収益状況をチェックしていた。
 今日は火曜日。時刻はお昼の12時23分。
 俺は熱を出して学校を休んでいる。

 今日の東証マーケットは寄付きから堅調に推移したが、午前11時前にサウジアラビアの大手石油精製所で大規模火災が発生したというニュースが入り、エネルギー・商社関連を始め株価が急落。
 俺のプログラムで買いから入っていた銘柄は、全て損切りとなった。

「まったく……ついてない時は、何をやってもうまくいかないな……」
 俺は独りごちる。

 どうやら悪い風邪でもひいたようだ。
 なにか風邪をひくようなイベントがあっただろうか。

 確かにここのところ、朝晩はかなり冷えた。
 風呂上がりに髪を乾かさなかったからか?
 その後リビングで、半袖のままゴリゴリ君を食べたからか?
 ソファーでテレビを見ながら、そのまま寝てしまったからか?
 心当たりがありすぎる。

 朝から食欲がなかった。
 何も食べていない。
 それでも薬を飲まないとな。
 なんとか起き上がって、フラフラとキッチンへ向かった。

 何か腹に入れないと薬が飲めない。
 キッチンのテーブルの上に、お皿が1枚出してあった。
 その上には、パンのようなものがラップで包んである。
 レンジで温めて食べてみる。
 内側が牛乳のようなものでしっとりしていて、外側には玉子がからんでいる。
 どうやらフレンチトーストらしきもののようだ。
 オヤジが会社に行く前に、作ってくれたんだろう。

 薬を飲んで、熱を測る。
 38度8分。
 体が重いはずだ。

 再びベッドの中で横になる。
 薬のせいか、眠気が襲ってきた。

 どれぐらい眠っただろうか。
 Limeのメッセージ着信音で目を覚ます。

 慎吾:大丈夫かー? これから見舞いがてら、プリント持っていくからなー。

 てことは、もう夕方?
 相変わらずこっちの都合は無視か。
 そのまま既読スルー。
 ふぅーっと息を吐き出した。
 別にプリントなんて、無くてもあまり関係ないけどな。

 しばらくベッドで横になっていると、ピンポーンとチャイムが鳴った。
 俺は上下スエットのままフラフラと部屋を出て、インターホンのボタンを押す。
 モニターには慎吾の姿と、3人の美少女の姿が写っていた。

 ………………………………………………………………

「まったく……皆で来るんだったら、そう言ってくれよ」

 俺はベッドで横になりながら、慎吾に文句を言う。
 こっちは頭ボサボサで、上下スウェットだぞ。
 とても美少女3トップと会えるような格好じゃない。

「えー? でも見舞いに行くってLimeしたよね? 「誰と」とは言わなかったけど」

「またそれかよ!」

 慎吾はニヤニヤ笑っている。
 完全に確信犯だ。

「浩介君、大丈夫?」
「大山くん、ほんま大丈夫なん?」
「昼休み4人だけで、つまんなかったよー」

 3人の美少女も、俺の部屋に入ってきた。
 部屋の中をキョロキョロと見渡している。
 みんな興味津々のようだ。

 とはいっても、俺の部屋は殺風景だ。
 本棚、ベッドとその横に小さなテーブル。
 机の上にパソコンのモニターが3枚。
 それだけだ。

「熱はどれくらいあるの?」

 雪奈が優しい声で聞いてくれる。
 マジ天使。

「昼に測ったときは、38度8分だった。薬を飲んだから、少しは下がってると思うけどな」

「そんなにあるんだ。じゃあ苦しいよね……食欲はある?」

「ん? ああ、そう言えばお腹が空いてきたかな」

「おかゆ、食べられる?」

「え? ああ……でも」

「キッチン借りてもいい? 材料は買ってきたの。お米はあるでしょ?」

 雪奈はスーパーの買物袋らしきものを、ひょいっと掲げた。
 来る前に、買い出しに行ってくれたんだろう。

「いいのか?」

「うん、任せて! キッチン、いろいろ勝手に使わせてもらうけど」

 そう言って雪奈は部屋を出ていった。
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