23 / 66
No.22:「おい、当たってるぞ」
しおりを挟む「よしっ、11万2千円のプラス」
プールへ遊びに行った日から3日後。
授業が終わり昇降口で靴を履き替えながら、俺はスマホで今日1日のトレード結果を見る。
今日の東証マーケットは前場は小動きだったが、昼休み中に自動車メーカー最大手の好決算が公表され、後場に入り市場がこれを好感。
為替が円安に進んだことも合わせて、製造業・輸出関連銘柄を中心に買いが入り相場は全面高。
俺のプログラムも、しっかりと利益を確保してくれた。
これで投資金残高は450万円を超えた。
500万円まで、あと少しだ。
俺たち5人組は、相変わらず昼休みに机を囲んで一緒に昼食を食べている。
話題はこの間のプールでの事とか授業の話とかが中心だが、なんだか楽しい日常だ。
慎吾と竜泉寺のケンカのような夫婦漫才に山野がのっかり、桜庭がそれを止めに回るというパターンが多い。
俺は大半聞き役に回っている。
今まではソロランチだったので、なんだかむず痒い感じがする。
皆でプールに行った日からというもの、俺は改めて桜庭の美少女っぷりに意識をもっていかれることが多くなった。
さらさらの黒髪。
くりっとした二重まぶたに鳶色の瞳。
シュッとした鼻に整った口元。
それに……制服の下に隠れている白くて大きな双丘。
くびれたウエスト……そういったところまで、どうしても意識してしまう。
見ちまったからな。
「さすがは学校一の美少女だな」
俺は小さくため息を着いた。
すると俺のスマホが、ブルっと震えた。
Limeのメッセージだ。
ひな:今から駅裏の改札前に集合ね。
ひな:来なかったら、エアホッケーのとき私のおっぱいガン見してたこと言いふらすからねー(笑)
「言いふらすからねー(笑)、じゃねえ!」
俺はスマホを地面に叩きつけそうになった。
冤罪はこうやって生み出されるのか?
いや、冤罪とも言い切れないのか……
そもそもなんで山野が俺のLimeIDを知ってるんだ?
ああ思い出した。
エンカウントした初日にスマホを取り上げられて、強制的に交換させられたんだっけ。
「今から駅裏の改札前に集合」って……。
でもどうやら俺には拒否権がなさそうだ。
本当はとっとと帰りたがったが、俺は渋々向かうことにする。
駅の出口は2か所ある。
学校側へ向かう東側には飲食店もあって結構にぎやかだが、逆に西側はさびれていて、人の流れも少ない。
この西側を俺たちは駅裏と読んでいる。
学校と反対側なので、生徒の姿はほとんどない。
山野が人気のないところを指定してきたということは……何かあるのか?
駅裏の改札前でスマホをいじっていると、
「やっほーーーーー」
ツインテールがいきなり腕を絡めてきた。
山野だ。
「おい……」
山野はいたずらっぽい目で俺を見上げながら、自分の胸をぐいっと俺の腕に押し付ける。強烈な弾力と圧力と共に、胸の形がぐにゃん、と変形している。
「その武器をわざとらしく押し付けるのはやめろ」
「えーー、そこは「おい、当たってるぞ」「当ててるんだよー」っていうくだりでしょー? つまんないなー」
「笑えんぞ。俺の鋼の理性、なめんな」
山野は俺の腕から離れた。
こういうところが、小悪魔と言わる所以なんだろうな。
「そんなこと言ってー。この間エアホッケーやってる時、ひなの胸しっかり見てたくせにー。ねえ、ちょっと触ってみる?」
「いいのか?」
「うん! ちょっと大声出すけどね。おーーまーーわーーりーーさ」
「ごめんなさいごめんなさい調子に乗りましたすいません」
とんだトラップだった。
強気に出て山野をあせらせようとしたら、返り討ちにあってしまった。
小悪魔どころか大悪魔じゃねーか。
「まーでもしょーがないよねー。男の子なんてみんなそんなもんだしー」
山野がニヤニヤしている。
「この間のプールでもさー、慎吾くんがひなの胸チラチラ見るし、他の女の子にも色目つかってたもんだから葵が怒っちゃってねー。『お仕置きが必要やな! 肛門から、ぶぶ漬け突っ込んだる!』ってもうカンカンに息まいちゃってー」
新しいサムゲタンが爆誕していた。
なに、竜泉寺って怒ると怖い系なの?
「ひなだって好きでこんな胸になった訳じゃないんだよー。身長にまわる分が全部胸に集中しただけでさー」
「うん、全国の貧乳女子に謝れ」
もしかしたら竜泉寺、自分が貧乳だから余計に怒り倍増だったのか?
「お前の乳の話はもういい。他に話がなければ帰るぞ」
「まーまー、そう言わないでさー」
そういうと、山野は自分のスマホの画面をスッと俺の方へ向けてきた。
「これ、誰だかわかる?」
山野のスマホには制服を着た女子生徒が写っていた。
髪の毛は切り揃えられて、いわゆる「おかっぱ」に近い。
えんじ色のフレームの眼鏡をかけていて、顔も幼い感じだ。
制服もうちの学校の制服ではない。
雰囲気からして中学生ぐらいか?
一瞬山野の妹かとも思ったが、顔つきが全く似ていない。
もう一度よく見ていると、何か既視感が……。
眼鏡の奥の鳶色の瞳、スッとした鼻すじに整った口元……これってもしかして……
「ひょっとして……桜庭か?」
山野はニヤリと口角を上げた。
「聞きたくない? 中学時代の雪奈のこと」
20
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
イケメン御曹司とは席替えで隣になっても、これ以上何も起こらないはずだった。
たかなしポン太
青春
【第7回カクヨムコンテスト中間選考通過作品】
本編完結しました!
「どうして連絡をよこさなかった?」
「……いろいろあったのよ」
「いろいろ?」
「そう。いろいろ……」
「……そうか」
◆◆◆
俺様でイメケンボッチの社長御曹司、宝生秀一。
家が貧しいけれど頭脳明晰で心優しいヒロイン、月島華恋。
同じ高校のクラスメートであるにもかかわらず、話したことすらなかった二人。
ところが……図書館での偶然の出会いから、二人の運命の歯車が回り始める。
ボッチだった秀一は華恋と時間を過ごしながら、少しずつ自分の世界が広がっていく。
そして華恋も秀一の意外な一面に心を許しながら、少しずつ彼に惹かれていった。
しかし……二人の先には、思いがけない大きな障壁が待ち受けていた。
キャラメルから始まる、素直になれない二人の身分差ラブコメディーです!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
ただ巻き芳賀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
何故か超絶美少女に嫌われる日常
やまたけ
青春
K市内一と言われる超絶美少女の高校三年生柊美久。そして同じ高校三年生の武智悠斗は、何故か彼女に絡まれ疎まれる。何をしたのか覚えがないが、とにかく何かと文句を言われる毎日。だが、それでも彼女に歯向かえない事情があるようで……。疋田美里という、主人公がバイト先で知り合った可愛い女子高生。彼女の存在がより一層、この物語を複雑化させていくようで。
しょっぱなヒロインから嫌われるという、ちょっとひねくれた恋愛小説。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる