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No.13:勉強会

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 中間試験の一週間前。
 放課後の空き教室を利用して、俺たちは勉強会をすることになった。

 俺は自宅のパソコンで、中間試験の範囲の予想問題と模範解答を作成する。
 ネットで探せばたくさん類似問題が出てくるので、その一部を変えて使ったり、教科書の範囲から拾えばいいので大した手間ではない。

 問題をpdfファイルで作成。
 それをLimeで慎吾に送り、朝一でコンビニで人数分プリントして学校へ持ってきてもらうようにした。
 慎吾にはそれぐらいやってもらわないとな。

 勉強会はまず皆に問題を解いてもらって、模範解答で答え合わせをする。
 その後に分からない問題を俺が解説して、最後に関連する問題や公式、構文や単語も追加で解説していくというスタイルにした。

 勉強会初日。空き教室に5人集まって、俺はプリントを配る。
 まず最初に数学だ。
 みんな問題を解き始めた。

 問題を解いてる姿を見るというのも、なかなか興味深い。
 その姿で、出来栄えとか勉強に対する姿勢が伺えるからだ。

 竜泉寺と桜庭は、問題に集中していて、無駄な動きは一切ない。
 おそらく家で勉強している時も、こんな感じなんだろう。

 問題は慎吾と山野だ。
 とにかく落ち着きがない。
 わからない問題が多いんだろう。
 二人とも「あー」とか「うー」とか呻いているし、答えを書いては消しを繰り返しているので、消しゴムの使用量がハンパない。

 40分くらい経っただろうか。竜泉寺と桜庭は終えたようだ。
 終わった順番に、各自自己採点を始めてもらった。

 自己採点している様子を横から見ていたが、竜泉寺と桜庭は回答欄がほとんど埋まっていた。
 おそらく成績もいいほうなんだろう。

 一方で慎吾は解答欄の7割ぐらい、山野は3分の1ぐらいしか埋まっていない。

「しかしこの問題、めっちゃようできてるわぁ。試験範囲を満遍なくカバーしてるし、基礎問題は優しいけど、応用問題はかなりムズい」
 それが分かる竜泉寺はさすがだ。

「ねぇ、大山くん。この問題、こういうやり方じゃだめなのかな?」
 桜庭が自分で書いた回答欄を見せながら質問してきた。

「もちろんそのやり方でも解ける。ただ計算式が複雑になって時間がかかるし、計算ミスも起こりやすい」

「そんなこと、試験中の短時間に分かるものなの?」

「分かる」

「どうやって?」

「……分かるとしか言いようがないのだが」
 俺の場合、フローチャートでほぼ全ての解き方が頭にの中に瞬時に出てくる。
 それに沿って解くだけだ。

「とりあえず、それぞれの問題の解き方のパターンを覚えてくれ。パターンを覚えれば、他の問題にも応用が効く。後は計算ミスさえなければ、数学はそれなりに点がとれるはずだ」

「うん、わかった。ありがとう!」
 にっこりと微笑む桜庭は、控えめに言って天使だ。

「さて問題は、っと」
 慎吾と山野の二人。

 慎吾はほぼ内容理解しているが、計算間違いやケアレスミスが多く詰めが甘い。
 とても惜しいが、そこさえ気をつければ十分伸びしろがある。

 山野に至っては、内容を大半理解していない。
 基礎計算力も弱く、これでは壊滅的だ。

「慎吾はケアレスミスだけ気をつけて。解答欄を全部埋めても、もう一度計算過程をしっかり見直すことだ」

「そうなんだよー。僕、回答欄を埋めるとそれだけで満足しちゃうんだ」

「山野は……いろいろとあるが、とりあえず試験までこの予想問題を繰り返しやってくれ。一つ一つゆっくり、計算ミスをしないように。何度もやってパターンを覚えるんだ」

「わかったよー。でも数学なんて、ほんっと意味わかんない。こんな方程式なんて、将来使うことなんてないでしょ?」

「そうかもしれない。でも数学的思考を鍛えることは、いろんなことに役立つぞ。問題解決能力を身につけるのは、間違いなくこの数学的思考だ」

 わいわいと言いながら、俺たちは一週間、全教科の予想問題をやり続けた。
 少しでも身についてくれればいいのだが。

 さて、その一週間の昼休みの時間中、俺は少なからずクラスで熱視線を集めた。
 主に男子生徒からだが。

「はいっ、じゃあ今日の分」
 にっこり笑って少しはにかみながら、お弁当を差し出す桜庭は今日も美しい。

 今日のおかずは、アスパラの豚肉巻き、小エビのかき揚げに一口サイズの照り焼きチキン。サラダはシーザードレッシングで、デザートに小さい羊羹が入っている。

「どれもこれも手が込んでて、本当に美味いよ」

「ありがとう」
 桜庭ちょっと恥ずかしそうだ。

「桜庭は……いいお嫁さんになるな」
 定番のセリフを口にする。

「もう!」
 少し赤くなって、口を尖らす。
 定番の反応なのに、わかっているのに、めちゃくちゃ可愛いとはどういうことだ?

 しかしなんだ……もう周りの目が、本当に痛い。痛すぎる。

「今日も手作り弁当……だと?」
「羨ましい」
「俺も食べたい」
「せめて匂いだけでも」
「大杉ゆるさん!」大山……もういいや。

 おまけに弁当を食べる前、山野は「じゃあみんなも一緒に!おいしくなーれ」とか本当にやりだしたので、俺は全力で止めた。

 食後に竜泉寺がドリアンサイダーを差し入れてくれた。
 一口飲むと桜庭のお弁当の余韻が全てかき消され、危うく全部リバースしそうになった。
 翌日からは、ウーロン茶に変えてもらった。

 慎吾からは……慎吾からは何もないぞ。
「まあ一つ貸しということで。必ず返すからさー」とヘラヘラ笑うイケメン。
 いつか10倍返しで請求することにしよう。
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