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プロローグ

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「見つけた……」

 目の前の美少女は、俺の眼前30センチの距離でそうつぶやいた。

 想像してみてほしい。
 ここは学校の廊下。
 今は休憩時間。
 目の前に学校一可愛いと噂されている美少女。
 俺はその彼女に、突然壁に押し倒されている。

 ちょっと古いが……一昔前の「壁ドン」だ。
 押し倒しているのではない。
 押し倒「されて」いるのだ。

 その美少女は俺の目の前で、左手を壁ドン。
 右手は俺の前髪をかき上げた状態で、頭をがっちりホールド。
 至近距離から顔をうっすらとピンク色に染め、ぱっちりとした大きな目でうっとりと俺を見上げている。

 周りの連中は通り過ぎながら、じろじろとその様子を窺っている。

「何あれ?」
「何のご褒美?」
「お仕置きかも……」
「是非俺にも……」
 いろんな声が聞こえる。

 俺自身何が起こっているのか、理解できていない。
 何しろ相手はアイドル顔負けの、とんでもない美少女だ。

 俺は驚愕のあまり、体が硬直したままだ。
 その様子を見て、一緒にいた俺の唯一の友人も「ほぇ~」とか呆けた声を上げている。

 その横で美少女の友達らしき女子生徒が二人。

 スレンダーでゆるふわ系美人の彼女は「へぇー、イケメンやん」と呟く。

 小柄で胸の部分の主張が強いツインテール女子が「王子様ねぇ…」とニヤニヤこちらを眺めている。

 どうしてこうなった?
 いや、もちろん思い当たる節がないわけじゃない。
 でもまさかこんな事態になろうとは……。
 その時は全く思いもしなかった。
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