63 / 65
No.63:注目の的
しおりを挟む
そしてお昼の休み時間。
引き続き私たちは、注目の的となった。
「おっ、美味そうだな。それじゃあ、いただくぞ」
「はい、どうぞ……どう?」
「うん、普通だ」
「普通?」
「ああ。普通に……ちょ、ちょっと待て。まだ味わってないぞ。だから危ないって。口の中に指を」
「か・え・し・な・さ・い」
「ねえ、これから僕たちこの夫婦漫才を見せつけられるわけ? 結構ツライんだけど」
「もう、ハリーは了見が狭いわね。そんなんだから振られるんだよ」
「き、傷口を抉らないでくれる?」
いま私と宝生君、それに柚葉とハリー君の4人で、机を寄せ合ってお弁当を食べている。
私は彼の分のお弁当を作ってきた。
昨日彼からリクエストがあったからだ。
「この唐揚げ、マジで美味いぞ」
「最初からそう言ってよ」
「でも毎日は大変だから、作らなくてもいいぞ。俺は今まで通り学食で食べるし」
「べ、別に私はお父さんの分のついでに作ってるだけだし。全然大変でもないし」
「うわー、華恋、ツンデレ乙~」
「やっぱり僕、かなりツライかも……」
こうやって4人で食べよう、と言い始めたのは宝生君だ。
どういう心境の変化だろうか。
ひょっとして私が緊張しないように、彼が気を使ってくれているのだろうか。
「なあ、三宅も張本も、映画って好きか?」
「うん、よく見に行くよ」
「僕も好きだけど……」
「『破滅の牙』の劇場版が手に入ったんだが、見に来ないか?」
「手に入ったって? あれってまだ上映中じゃん」
「発売前のテスト版DVDが手に入ったんだよ。よかったら見に来るか? 俺の家に」
「えっ? それって僕たちが宝生君の家にお邪魔しても、いいってこと?」
「ああ。家にシアタールームがある。もちろん映画館みたいに大きくはないけど、それなりに大きなスクリーンで楽しめる。音響だって悪くないぞ」
「えー行きたい!」
「是非お邪魔したいな」
私は嬉しかった。
宝生君が柚葉とハリー君とお友達になろうとしてくれている。
私のお友達と仲良くなってくれるのは、私だって嬉しい。
ひょっとしたら……いままでお友達がいなかった宝生君が、変わろうとしているのかもしれない。
私が何か協力できたら……少しでも彼への恩返しになるだろうか。
いや、そんな事を考えること自体おこがましいことだ。
「宝生君、私との賭け、忘れてないよね?」
「ん? ああ、そう言えばそんなのあったな。マクドなら無料券がまだたくさんあるから、今日の帰りにでも行くか?」
「えー本当に? やったぁ! 皆で行こうよ」
「僕も行っていいの?」
「私も今日はバイトないし、いいよ」
「よし、じゃあ皆で行こう」
「やったー。やっとマンゴーシェイクが飲めるよ」
「ハリー、どんだけマンゴーシェイク好きなのよ」
私たち4人はとにかく周りから注目を浴びた。
でも15分もしたら、全然気にならなくなった。
まわりがどうか、とか全然関係ない。
宝生君のそういう考え方を、私は少しだけ理解できたかもしれない。
あるいは単にいままで私が、周りの目を気にしすぎていただけなのかもしれない。
いずれにしても、宝生君には教わることが多い。
本当に感謝しかない。
明日のお弁当は、何を作ろうか。
他に好きなおかずは何かな?
あとでマクドに行った時に、聞いてみよう。
引き続き私たちは、注目の的となった。
「おっ、美味そうだな。それじゃあ、いただくぞ」
「はい、どうぞ……どう?」
「うん、普通だ」
「普通?」
「ああ。普通に……ちょ、ちょっと待て。まだ味わってないぞ。だから危ないって。口の中に指を」
「か・え・し・な・さ・い」
「ねえ、これから僕たちこの夫婦漫才を見せつけられるわけ? 結構ツライんだけど」
「もう、ハリーは了見が狭いわね。そんなんだから振られるんだよ」
「き、傷口を抉らないでくれる?」
いま私と宝生君、それに柚葉とハリー君の4人で、机を寄せ合ってお弁当を食べている。
私は彼の分のお弁当を作ってきた。
昨日彼からリクエストがあったからだ。
「この唐揚げ、マジで美味いぞ」
「最初からそう言ってよ」
「でも毎日は大変だから、作らなくてもいいぞ。俺は今まで通り学食で食べるし」
「べ、別に私はお父さんの分のついでに作ってるだけだし。全然大変でもないし」
「うわー、華恋、ツンデレ乙~」
「やっぱり僕、かなりツライかも……」
こうやって4人で食べよう、と言い始めたのは宝生君だ。
どういう心境の変化だろうか。
ひょっとして私が緊張しないように、彼が気を使ってくれているのだろうか。
「なあ、三宅も張本も、映画って好きか?」
「うん、よく見に行くよ」
「僕も好きだけど……」
「『破滅の牙』の劇場版が手に入ったんだが、見に来ないか?」
「手に入ったって? あれってまだ上映中じゃん」
「発売前のテスト版DVDが手に入ったんだよ。よかったら見に来るか? 俺の家に」
「えっ? それって僕たちが宝生君の家にお邪魔しても、いいってこと?」
「ああ。家にシアタールームがある。もちろん映画館みたいに大きくはないけど、それなりに大きなスクリーンで楽しめる。音響だって悪くないぞ」
「えー行きたい!」
「是非お邪魔したいな」
私は嬉しかった。
宝生君が柚葉とハリー君とお友達になろうとしてくれている。
私のお友達と仲良くなってくれるのは、私だって嬉しい。
ひょっとしたら……いままでお友達がいなかった宝生君が、変わろうとしているのかもしれない。
私が何か協力できたら……少しでも彼への恩返しになるだろうか。
いや、そんな事を考えること自体おこがましいことだ。
「宝生君、私との賭け、忘れてないよね?」
「ん? ああ、そう言えばそんなのあったな。マクドなら無料券がまだたくさんあるから、今日の帰りにでも行くか?」
「えー本当に? やったぁ! 皆で行こうよ」
「僕も行っていいの?」
「私も今日はバイトないし、いいよ」
「よし、じゃあ皆で行こう」
「やったー。やっとマンゴーシェイクが飲めるよ」
「ハリー、どんだけマンゴーシェイク好きなのよ」
私たち4人はとにかく周りから注目を浴びた。
でも15分もしたら、全然気にならなくなった。
まわりがどうか、とか全然関係ない。
宝生君のそういう考え方を、私は少しだけ理解できたかもしれない。
あるいは単にいままで私が、周りの目を気にしすぎていただけなのかもしれない。
いずれにしても、宝生君には教わることが多い。
本当に感謝しかない。
明日のお弁当は、何を作ろうか。
他に好きなおかずは何かな?
あとでマクドに行った時に、聞いてみよう。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
私の話を聞いて頂けませんか?
鈴音いりす
青春
風見優也は、小学校卒業と同時に誰にも言わずに美風町を去った。それから何の連絡もせずに過ごしてきた俺だけど、美風町に戻ることになった。
幼馴染や姉は俺のことを覚えてくれているのか、嫌われていないか……不安なことを考えればキリがないけれど、もう引き返すことは出来ない。
そんなことを思いながら、美風町へ行くバスに乗り込んだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる