8 / 18
8❤︎
しおりを挟む
「……ふう。入ったよ……」
男の身体の勝手なんか知らない。それでも中はぬかるんで柔らかく、けれどきつくて、彼に締め付けられていると充足感でいっぱいになる。
身体のすべてを晒しこちらを見上げている少年が、恐ろしく魅力的だからだろうか。
「ん……入ったね……」
言いながら、彼は手で腹をさすっている。
「ここ、触って」
そして、アベルの片手を下腹の上に置かせると緩く腰を動かす。ぬちゅ……と濡れた音が立つ。
「あ、……ん、ここ、入ってるの、わかる……?」
アベルの手が、皮膚の下の固いものに触れている。それが自分の性器だと気づくまで数秒かかった。なんだか顔が熱くなる。
「俺の……」
にこりとマイネが微笑んだ。王子様然とした顔で、やっていることは娼婦のようだ。
アベルは腰を引き、打った。
「ひゃあっ……!」
マイネが眉根を寄せて声を上げた。
「だ、だめ、そんないきなり」
「だめ?」
「もう少し、待って」
腕を差し出され、抱擁に応じた。小さく形の良い唇に口づける。唾液が漏れるのも構わず、舌を絡め合う。
アベルは無意識に動き出してしまいそうな腰を抑えるのに必死だ。
「動きたい」
「……だめ。もう少し」
ちゅ、ちゅ、と唇同士が吸い合って音を立てる。自分たちは愛し合っているのだと、錯覚しそうだ。
この少年が手に入るはずはないのに。
「……んっ、……あ、ああ……っ」
ゆるゆると腰が動いてしまう。
「うう、あ、あ、あん、……アベル……」
「ごめん、もう無理……」
とうとう我慢できなくなり、本格的に抽挿を始めた。ぱちゅ、ぱちゅ、と肉と肉がぶつかる音と、互いの荒い息遣いがほの明るい部屋に響く。接合する二人の一かたまりになった大きな影が、ゆらゆら白い壁に映っていた。
アベルの律動に揺られながら、マイネが泣き出しそうな目を向けてくる。それでも、もう抵抗しようとはしてこなかった。
「あん、アベルっ、アベル、……きもちい……」
ぽろりと、マイネの目尻から一粒の涙が伝った。
「俺も……」
その様子が綺麗で、苦しい締め付けの中でうっとりしながらそう返す。
「やん、やあ、あ、あん、ああ……」
マイネは清純そうな外見と中身にそぐわず、快楽に従順なようだ。
ちょっと堤防を崩してしまえば、あとは流れ出す水を止めようとはしない。溢れ出す声は可愛らしく淫猥で、晒け出された身体は淫らにくねって視線を釘付けにする。
(こんなに美人で、素直で、いやらしい。外に出したら放っておく男はいないな……)
きゅんきゅん締め付ける内壁を先端で擦ってやりながら、アベルは沸騰寸前の頭で考えていた。
「アベルっ、そこっ、やあ……っ」
マイネが敏感に内腿を震わせるさまは、本当に娼婦のようだった。
しかし交歓に夢中でも、意外にも冷静を保っていたらしい鼓膜はおかしな音を捉えた。
ずず……。ずず……。
地鳴りかと思ったが、違う。何かを引きずるような、鈍くて重い音だ。
ぐうう……と、部屋の外からピムの唸り声まで聞こえてきて、アベルは律動を止めた。
「あっ、えっ? うそ、アベル!」
蕩けて焦点さえ上手く合っていなかったようなマイネが、ふっと正気に戻った顔をした。
「声を立てちゃだめ。あと、窓の外を見ないで。目をつぶって」
ピムも黙って! とぴしゃりと言い放ち、飼い犬も黙らせた。
ぐじゅぐじゅの結合部とはかけ離れた冷静さだ。
「どうして?」
「あん、もういいから、黙って!」
痺れを切らしたように言い、マイネはアベルの頭を引き寄せて口付けた。
ろうそくの明かりが勝手に消え、視界が真っ暗になった。
わけもわからないまま舌を絡ませられ、一体どういう状況かと問いたいのになにも喋れない。
アベルから窓の外は見えないけれど、念のためきちんと目も閉じた。得体の知れない森の中で、もう恐ろしい目には遭いたくない。
ずず……ずる……と、窓の外、おそらく家のすぐ脇を、正体不明の何かが通り過ぎて行く。
恐怖は不思議とそんなに感じなかった。きっと、温かく柔らかい身体の中に包まれていたからだ。
真っ暗なまぶたの裏を見ながら、アベルは腰の動きを再開する。
マイネが喉を鳴らしながら息を吸い込んだ。
あまり大きな音が出ないよう、可能な限り奥まで差し込んだまま、ぐりぐりと腰を回してねじ込むようにする。力を入れ過ぎて身体が震えるまで、強く強く腰を押し付けた。
背中に痛みが走る。マイネが爪を立てているのだ。それにも構わず、彼の奥へ入り込もうとする力は緩めなかった。マイネが苦しそうに口で呼吸するので、舌を逃したくなくて必死に絡めた。
引きずるような音は次第に遠くなる。そうして、徐々に聞こえなくなった。
「……ぷは……はあ……もう、どういうつもりなの、アベル」
深い挿入から逃れようと胸を押してくるマイネを、アベルはきつく抱きしめたまま訊ねた。
「さっきのは?」
「ん、気にしない、で……。あれは、目が見えない。声をださなければ……だいじょぶ……。やだ、ちょっと抜いて」
「抜かない」
どうやら何らかの危機は去ったようだ。
あの状況でよく萎れなかったものだと自身に感心しながら、アベルは律動を再開した。
「やん、あんっ、アベル、どうして……っ」
「わかんない。でも、君の中、安心感がすごかった。さっきもあんまり恐くなくて、ここが俺の居場所なのかもって、……一方的だけど、感じちゃった……」
「あっ、……あっ、あ、あう……」
困惑したような顔で喘ぐマイネに笑いかけ、アベルは何度も彼の肉を打った。
興奮に任せて彼の中に放っては体位を変え、また放っては変えてを何回か繰り返した。
膝立ちにさせたマイネを後ろから貫きながら乳首をこねていると、彼は悲鳴に似た嬌声を上げ、吹き上げてベッドを濡らした。
そして最後には、気を失ってしまったマイネを後ろから抱き締めるようにして、アベルは自分の意識も薄れていくに任せた。
男の身体の勝手なんか知らない。それでも中はぬかるんで柔らかく、けれどきつくて、彼に締め付けられていると充足感でいっぱいになる。
身体のすべてを晒しこちらを見上げている少年が、恐ろしく魅力的だからだろうか。
「ん……入ったね……」
言いながら、彼は手で腹をさすっている。
「ここ、触って」
そして、アベルの片手を下腹の上に置かせると緩く腰を動かす。ぬちゅ……と濡れた音が立つ。
「あ、……ん、ここ、入ってるの、わかる……?」
アベルの手が、皮膚の下の固いものに触れている。それが自分の性器だと気づくまで数秒かかった。なんだか顔が熱くなる。
「俺の……」
にこりとマイネが微笑んだ。王子様然とした顔で、やっていることは娼婦のようだ。
アベルは腰を引き、打った。
「ひゃあっ……!」
マイネが眉根を寄せて声を上げた。
「だ、だめ、そんないきなり」
「だめ?」
「もう少し、待って」
腕を差し出され、抱擁に応じた。小さく形の良い唇に口づける。唾液が漏れるのも構わず、舌を絡め合う。
アベルは無意識に動き出してしまいそうな腰を抑えるのに必死だ。
「動きたい」
「……だめ。もう少し」
ちゅ、ちゅ、と唇同士が吸い合って音を立てる。自分たちは愛し合っているのだと、錯覚しそうだ。
この少年が手に入るはずはないのに。
「……んっ、……あ、ああ……っ」
ゆるゆると腰が動いてしまう。
「うう、あ、あ、あん、……アベル……」
「ごめん、もう無理……」
とうとう我慢できなくなり、本格的に抽挿を始めた。ぱちゅ、ぱちゅ、と肉と肉がぶつかる音と、互いの荒い息遣いがほの明るい部屋に響く。接合する二人の一かたまりになった大きな影が、ゆらゆら白い壁に映っていた。
アベルの律動に揺られながら、マイネが泣き出しそうな目を向けてくる。それでも、もう抵抗しようとはしてこなかった。
「あん、アベルっ、アベル、……きもちい……」
ぽろりと、マイネの目尻から一粒の涙が伝った。
「俺も……」
その様子が綺麗で、苦しい締め付けの中でうっとりしながらそう返す。
「やん、やあ、あ、あん、ああ……」
マイネは清純そうな外見と中身にそぐわず、快楽に従順なようだ。
ちょっと堤防を崩してしまえば、あとは流れ出す水を止めようとはしない。溢れ出す声は可愛らしく淫猥で、晒け出された身体は淫らにくねって視線を釘付けにする。
(こんなに美人で、素直で、いやらしい。外に出したら放っておく男はいないな……)
きゅんきゅん締め付ける内壁を先端で擦ってやりながら、アベルは沸騰寸前の頭で考えていた。
「アベルっ、そこっ、やあ……っ」
マイネが敏感に内腿を震わせるさまは、本当に娼婦のようだった。
しかし交歓に夢中でも、意外にも冷静を保っていたらしい鼓膜はおかしな音を捉えた。
ずず……。ずず……。
地鳴りかと思ったが、違う。何かを引きずるような、鈍くて重い音だ。
ぐうう……と、部屋の外からピムの唸り声まで聞こえてきて、アベルは律動を止めた。
「あっ、えっ? うそ、アベル!」
蕩けて焦点さえ上手く合っていなかったようなマイネが、ふっと正気に戻った顔をした。
「声を立てちゃだめ。あと、窓の外を見ないで。目をつぶって」
ピムも黙って! とぴしゃりと言い放ち、飼い犬も黙らせた。
ぐじゅぐじゅの結合部とはかけ離れた冷静さだ。
「どうして?」
「あん、もういいから、黙って!」
痺れを切らしたように言い、マイネはアベルの頭を引き寄せて口付けた。
ろうそくの明かりが勝手に消え、視界が真っ暗になった。
わけもわからないまま舌を絡ませられ、一体どういう状況かと問いたいのになにも喋れない。
アベルから窓の外は見えないけれど、念のためきちんと目も閉じた。得体の知れない森の中で、もう恐ろしい目には遭いたくない。
ずず……ずる……と、窓の外、おそらく家のすぐ脇を、正体不明の何かが通り過ぎて行く。
恐怖は不思議とそんなに感じなかった。きっと、温かく柔らかい身体の中に包まれていたからだ。
真っ暗なまぶたの裏を見ながら、アベルは腰の動きを再開する。
マイネが喉を鳴らしながら息を吸い込んだ。
あまり大きな音が出ないよう、可能な限り奥まで差し込んだまま、ぐりぐりと腰を回してねじ込むようにする。力を入れ過ぎて身体が震えるまで、強く強く腰を押し付けた。
背中に痛みが走る。マイネが爪を立てているのだ。それにも構わず、彼の奥へ入り込もうとする力は緩めなかった。マイネが苦しそうに口で呼吸するので、舌を逃したくなくて必死に絡めた。
引きずるような音は次第に遠くなる。そうして、徐々に聞こえなくなった。
「……ぷは……はあ……もう、どういうつもりなの、アベル」
深い挿入から逃れようと胸を押してくるマイネを、アベルはきつく抱きしめたまま訊ねた。
「さっきのは?」
「ん、気にしない、で……。あれは、目が見えない。声をださなければ……だいじょぶ……。やだ、ちょっと抜いて」
「抜かない」
どうやら何らかの危機は去ったようだ。
あの状況でよく萎れなかったものだと自身に感心しながら、アベルは律動を再開した。
「やん、あんっ、アベル、どうして……っ」
「わかんない。でも、君の中、安心感がすごかった。さっきもあんまり恐くなくて、ここが俺の居場所なのかもって、……一方的だけど、感じちゃった……」
「あっ、……あっ、あ、あう……」
困惑したような顔で喘ぐマイネに笑いかけ、アベルは何度も彼の肉を打った。
興奮に任せて彼の中に放っては体位を変え、また放っては変えてを何回か繰り返した。
膝立ちにさせたマイネを後ろから貫きながら乳首をこねていると、彼は悲鳴に似た嬌声を上げ、吹き上げてベッドを濡らした。
そして最後には、気を失ってしまったマイネを後ろから抱き締めるようにして、アベルは自分の意識も薄れていくに任せた。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
ハルとアキ
花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』
双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。
しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!?
「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。
だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。
〝俺〟を愛してーー
どうか気づいて。お願い、気づかないで」
----------------------------------------
【目次】
・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉
・各キャラクターの今後について
・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉
・リクエスト編
・番外編
・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉
・番外編
----------------------------------------
*表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) *
※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。
※心理描写を大切に書いてます。
※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました
及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。
※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19

[完結]堕とされた亡国の皇子は剣を抱く
小葉石
BL
今は亡きガザインバーグの名を継ぐ最後の亡国の皇子スロウルは実の父に幼き頃より冷遇されて育つ。
10歳を過ぎた辺りからは荒くれた男達が集まる討伐部隊に強引に入れられてしまう。
妖精姫との名高い母親の美貌を受け継ぎ、幼い頃は美少女と言われても遜色ないスロウルに容赦ない手が伸びて行く…
アクサードと出会い、思いが通じるまでを書いていきます。
※亡国の皇子は華と剣を愛でる、
のサイドストーリーになりますが、この話だけでも楽しめるようにしますので良かったらお読みください。
際どいシーンは*をつけてます。

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください
東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。
突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。
貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。
お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。
やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる