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それぞれを縛るもの4※

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 絶対に嫌だ。なぜ愛のない相手に奉仕を強制されねばならないのか。

「タリアス様、それはご勘弁ください」

「そうですタリアス様、私は別にユノン様からご奉仕を受けたいわけではないのです。私は、あなた様とユノン様に仲睦まじく愛し合っていただきたいのです」

 ミロが身体を起こし、ずり下がっていた下帯を脱ぎ去る。そしてユノンの身体に絡みつき、先ほどタリアスが舐め上げた頬の傷に唇をつける。

「……うっ……」

 触れられているすべての部分が溶けてしまいそうだ。ユノンはミロから顔を背ける。

「タリアス様、私もがユノン様の身体をとろとろにお仕度いたします。その上で、どうかお二人で深く愛し合ってください」
「なっ、ミロ……」

 頭から血の気が引く。ミロの声音は冷たいほどに落ち着き払い、彼は本気なのだと伝わる。
 ミロは、今回の騒動でユノンが不貞を働いたも同じと受け取っているのだ。
 タリアス少年が、父と男妾の閨を見た時のように。

「ほう。なかなかに面白そうじゃないか」

 タリアスは口元だけで笑うと、寝台を降りた。そして安楽椅子を出してきて寝台のそばに置き、それにどかりと腰を下ろす。

「どうぞ許可をください。私が、私の意思で王妃様のお身体の隅々まで触れる許可を。ユノン様のお身体を好きにできるお許しをいただきたいのです」

 ミロもユノンのそばを離れ、側卓で酩楽酒を杯に注ぐと跪いてタリアスに差し出す。
 タリアスはそれを受け取り、酒を口に含むとミロの顎を上向かせ口づけた。
 ミロの口の端からは桃色の液体が細く伝う。

「……ん……うん……」

 ミロの細い喉が上下に動き、ひとしきり舌を絡め合うと唇同士が離れた。
 ユノンは硬直しながらその様子を凝視していた。

「よろしい。ユノンに挿入することは許せないが、まずはお前がユノンの身体を開きなさい。今日はすでに我が弟に抱かれているはずだが、快楽を上塗りしてやるくらいの気概でやりなさい」

 目の前がぐらりと揺らいだ気がした。
 ミロに触れられた経験は幾度もある。しかし今までのそのすべては、タリアスの指示の元においてのことだった。

「ありがとうございます……!」

 ミロはタリアスを見上げ、にっこりと微笑んだ。愛らしく首を傾げれば、髪飾りがちかりと光る。
 自ら注いだ杯をタリアスから差し出され、ミロはそのすべてを飲み干した。そしてユノンの方を向き、紅を乗せた赤い唇をにっと横に引いた。

「……ミロ、やめて……。僕は、逃げたりしないから……」

 懇願する声を無視し、ミロはユノンの開脚を維持するための縄を寝台の脚に結び直し、顔を上げて微笑んだ。
 ユノンの吊るされていた腕は下ろされたものの、今度は仰向けの姿勢のまま頭上でひとまとめにされ寝台の枠に結ばれてしまった。そして膝は開いた形のまま、閉じられないように縛り直されたのだ。
 全開にした股の正面では、安楽椅子に座ったタリアスが肘をついてユノンに熱のこもった視線を絡ませている。

「だってユノン様は、こうでもしないときっと抵抗なさる。とても気高いお方ですから、私などにこうして触れられるのは、たとえ陛下のご命令でもお嫌でしょう……?」

 ミロが迫ってきて、寝台が軋む。蕩けた瞳の奥は、濁っている。

「やだ、いやだ、ミロ。わかっているなら、お前からもタリアス様に」
「嫌です。せっかくの機会ですから。大好きなユノン様に、気が変になるくらいにたくさん気持ち良くなっていただきたいのです。さあ、タリアス様がお待ちですから……」

 言いながら、ミロは下がっていく。
 戒められたユノンの内腿を両手で撫でながら、股間に顔を埋めた。
 触れられるたびにびくびくと腿が振れる。

「ミロ、お前がそんなことをする必要はない」

 夫でもない人物にそこを凝視されている。ミロからはもう何度も淫部への口での奉仕を受けたことがあるが、快楽の中にもどうしても不快感が拭えない。

「いいえ、ユノン様……。ここは、子作りのたびに陛下をお迎えになる大切な箇所。まずは口で、私から陛下とあなた様への忠誠の誓いをさせていただきたいのです」

「は……?」

 ユノンが一瞬考えた時だ。
 縄の瘤で塞がれた後孔の周辺を、生温かいものがぬるりと這った。

「ひっ、ん!……あ、あん、やっ、だめ、……」

 ミロの舌が執拗にそこの周りを愛撫する。みるみるうちに縄は湿り、穴の周囲は唾液で濡れる。

「ミロ、なんで……」

 逃れようにも脚が動かない上、閉じることもできない。
 ミロはあわいを割る縄を尻たぶに食い込ませるように除けて、ユノンを一瞬見上げて笑った。

「ミロ……」

 頼むからやめてくれという無言の懇願は、ミロに届くことはなかった。
 女装の少年は、躊躇いなど微塵もなくそこに吸い付く。

「やっ……あっ、ああっ! やめっ、……ミロ……」

 じんわりと熱い舌に、瞬時に蕩けていく。
 襞の一本一本を慈しむように舌で撫でられ、唾液を中に送り込まれてはちゅっと音を立てて吸われた。
 尻肉に食い込む湿った縄は、焼けそうに熱く感じる。
 こんなのはおかしいとユノンはさらわれそうな意識の中思う。
 酒のせいだ。昨日の神酒などよりも、催淫効果は遥かに高いに違いない。

「ひゃっ……あん……あ、あ、やあ……」

 陰嚢をやわやわと揉まれながら、ミロの舌を後孔で従順に受け入れ続ける。絶え間ない嬌声のせいで、ユノンの喉は枯れていた。

「ミロ、だめ……溶けてしまう……。やめて、僕はタリアス様に……」

 涙も涎も垂れ流し、威厳などかけらもない。
 それでも夫以外の者に触れられたくないという意思は、確固として持ち続けている。体裁など構わず、ユノンはミロに哀願した。

「ユノン様、……泣き顔もなんと愛らしい。それに、こちらも。辛うございますか?」
「ひっ!」

 ミロは顔を上げ、陶然とした顔でユノンを見た。そしてその手に、根元を細い縄で縛られたユノンの雄を握る。
 口の周りをべったりと自らの唾液で濡らし、口淫による淫らな匂いを薄暗い部屋に振りまいている。

「上からも、下からも涙をお流しになって。見ていて、私の胸までもが切なくなってしまいます」

 透明な粘性の液体を滲ませ続けるユノンの先端を、ぬるぬると指でなぞった。
 直接的な刺激に、ユノンは背をしならせる。

「ひゃあ、あ……だめ、触るな……」

 そんなことをされれば、たちまちに出したい欲求が加速する。ユノンは頭を左右に振って見悶えた。

「あん、ユノン様、お辛いのですね……。では、お好きな場所をもっと探って差し上げないと」

 ミロはちらりと背後を振り向いた。すると、立ち上がったタリアスがこちらに向かってくる。
 タリアスはユノンの枕元に腰掛けた。

「あ、あ、タリアス様……」

 救われたと思った。召使いなどではなく、夫に抱かれていれば王妃の威厳は保たれる。
 見下ろしてくる欲望の瞳に、ユノンはぐしゃぐしゃの顔で笑顔を見せた。

「タリアス様……助けてください……」

 涙ながらの訴えに、タリアスは首を横に振った。
 みぞおちの辺りに、一瞬氷を落とされたような気がした。

「ここで見ていてやるから、もっと快楽に身を任せなさい」

(うそ、でしょう……?)

 くすくすとミロが笑う。ユノンは呆然としたまま、夫の顔を見上げ続ける。

「ユノン様、お次は私の指で。きっとすぐに物足りなくなるでしょうから、太い張り型もご用意しております。あんなに素敵なタリアス様を、夜毎咥えていらっしゃいますものね」

 言うなり、固く細いものが身体の中に埋め込まれた。

「あん……や、だ……」

 ユノンの洞内はぎゅうぎゅう収縮してしまう。まるで与えられたものはなんでも美味く食べてしまう飢えた獣だ。
 指はくにくにと内壁を探り、すぐに本数を増やされたのか太さを増す。
 ユノンは抵抗できず、股を開くばかりだ。

「あん、すっごく熱くて、狭いです……」

 ミロがタリアスに向かい悩ましげに訴える。タリアスは淫靡に笑った。

「指が、食べられてしまいそうです。お顔はとても清純そうなのに、なんて淫らな王妃様……」
「やだ、タリアス様……」

 見下ろす夫の目には自分の訴えなど届かないことを悟った。見下ろしてくる瞳に浮かぶのは、残酷なまでの嗜虐性。獲物を生きたまま子に与え、弄ぶ獰猛な肉食獣。

「……や、あ、ああ……」

 ユノンの絶望を嘲笑うかのように、ミロの手が快楽の園を暴く。
 手つきは丁寧であるのに、何度も何度も乱暴なまでにその一点を責められた。
 耐えられない。それでも、ユノンは奥を晒してそこにい続けるしかできない。たとえ玩具のように扱われても、これがタリアスの意向によるものならば従うしかないのだ。
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