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 「トーリ食べ過ぎだぞ。マーブル姉ちゃんや園長先生の分も残しておかないと。」

 ユートの言葉に、がっついていた子供達の手が止まった。

 「ごめん……兄ちゃん……そうだね。先生達は僕達のために、食べ物を貰いに行ってるんだもんね。」

 「ユート、君は優しいね。君達もだ。だけど心配しなくていいよ。先生達の分もあるから、君達は遠慮せず腹一杯お食べ!」

 「本当に?食べてもいいの?」

 「ああ!腹一杯お食べ。」

 小さな子供達は年長のユートを見ている。

 「お兄ちゃん、本当に食べてしまってもいいの?」

 「いいよ。さぁみんなせっかくの料理が冷めてしまうよ。」

 再び子供達が食べてる所に若い女性が建物の中に入ってきた。

 「みんな、ただいま……あれ?みんなどうしたの?」

 若い女性が食事をしている子供達を見咎めた。

 「お兄ちゃん、あれがマーブル姉ちゃ……先生だよ。」

 先生も満足に栄養が取れていないのか、若く綺麗な顔立ちのわりに、ほっそりとしており化粧気もない。

 子供の一人がマーブル先生に事情を説明していた。

 「どなたかご存知ありませんが、心優しい方。子供達に温かい料理を頂き感謝致します。私はこの孤児院で働いておりますマーブルと申します。」

 「僕はナカムラケイタと言います。サカイでは店を運営しておりまして、従業員の中にこのスラム街出身の者がおりまして……その者は我が商店で大変しっかり働いてくれています。この子がその子なんですが……」

 僕はジルの頭をクシャと撫でた。

 「まぁ……そうなんですか。良い出逢いがあったのですね。」

 「で、スラム街の現状を聞き、他にも何か助けになれないかと思い、今日はスラム街を視察していたのです。そこへ彼が何か食べる物をくれないかと話しかけて来たものですから……」

 「なんと!全くもってお恥ずかしい……私どもが至らないばかりにナカムラ様にご迷惑をお掛けして申し訳ございません。」

 マーブル先生は、小さく身体をすくめ頭を下げている。

 「頭を上げて下さい。咎めようと言った訳ではありません。言い方が拙かったですね……このジルの様に、働く気がある子供を我が商店で雇いたいと考えておりまして。もちろん住居も提供して勉学も教えるつもりです。報酬も大人と同じ程度は用意する予定です。」

 「そんな良い条件で!?ちょっと信じられません……」

 「本当です!!ここの手前のスラムに住んでいた僕の一家全員が今ケイタ様の商店で働かせて貰っています。大きな住居にみんなで住ませてくれて、小さな弟にもしっかり報酬を頂いております。」
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