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私の目の前に座ってもらった。

私は両手をかざして、クロフォード様の武運を強く祈った。

治療の時よりも、大きな光の輪がしばらくクロフォード様の頭上に漂っていた。

祈りが終わると、頭上に漂っていた光の輪がクロフォード様の身体を包み込んでいった。

まばゆい光が、クロフォード様の身体に取り込まれ光の輪は見えなくなった。

「どうでしょうか?何か変わった感じはありますか?」

クロフォードは自分の身体のあちこちを見ながら、

『身体が暖かくなり宙を浮くような感じがしたけど、今は特に変わった感じはしないな。これで幸運になったかな?』

「まだ効果のほどは分かりません。ダンジョンに行かれて今までと変わった様子があれば、お知らせください」

『分かったよ!スズリーナありがとう!君に応援してもらった感じがしてやる気が出たよ!良い報告を楽しみに待っていてくれ!』

「クロフォード様ひとつお願いがあります。もしこれで幸運が降り注ぐようになっても他言無用にお願いしたいのです。クロフォード様だから祈れたのです……」

『………スズリーナ……!ありがとう。分かったよ。君と僕の秘密だね』






数日後、街の様子がおかしかった。

教会の中からでも、街の歓声や、歌い騒ぐ声が聞こえてきた。

教会から外に出る事もない私は、治療に訪れる人たちから情報を得ていた。

『ダンジョンを踏破した者が現れたぞ!』

『最終階から、莫大な戦利品を得たみたいだ』

1度最終階のボス魔物を攻略すると、以降そのダンジョンは素材集めの絶好の狩場となる。魔物を倒した時に得るドロップアイテムや、壁や通路に自生する植物、鉱石などまさにお宝の山となるようだ。

そのためボス魔物を攻略した者には、以降のダンジョン利権とダンジョンの命名権が与えられる慣習がある。

今回攻略したダンジョンは、《ダンジョン・クロフォード》と命名されたらしい。

まさか!?

クロフォード様はソロ冒険者だ。

1人でダンジョンを攻略するなど、歴史上でも数人しか居ない。

クロフォード様は、とてつもない功績を得たようだ。

いつ治療に来るだろうか?と私は待っていた。

しかし数日経っても、数十日経っても、クロフォード様は報告に来ない。

いつもダンジョン下層で怪我していたクロフォード様が治療に来ず、祈りの効果があったどうかの報告もない。

私は、また利用されたんだな……と諦めに近い気持ちになっていた。

トントントン!

人など来た事がない私の部屋に誰かが来た。

『スズリーナ様!すぐに来てください』
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