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 「いえ、すぐにはフェリカ王国に参る事は出来ません。フェリカ国民を救いたい気持ちもあります。私のグレートホープ聖国に移転してくる者は、審査の上、問題なければ入国を許可します。現在のフェリカ王国に私が神輿の様に参る事は致しません。」

 私の毅然とした返答に宰相は了承するしかなかった。

 宰相は、私が国王陛下の代わりに鎮座すれば元通りになると思っていたらしい。力なくフェリカ王国に戻って行った。

 グレートホープ聖国には、移転希望者が長蛇の列を成している。聖国の国民が増えるにつれ領土を拡大していく必要があった。いずれはフェリカ王国やリビルド王国の領土に近付いていく事は容易に想像出来ていた。

 夜になり本日の入国審査は終了した。ひと息つくと私は、忠烈なるおとこトニーと警備を3人伴い、地下牢を訪れた。

 暗いひっそりとした空間である。かび臭く下水の臭いもする。

 警備が持った松明が唯一の明かりであった。

 私は、牢の前に立ち止まった。心通わずであったが、一時とはいえ婚約者だった男である。その男に非情なお知らせをしないといけない……

 「ボクリアさん……」

 「サラか!サラ来てくれたのか!さぁ早くここから出してくれ!」

 「サラ様私の処遇はどうなりましたか?まさか朽ちるまでこのままに?」

 ボクリア以外にも声がした。声の方を向くとデニス先生であった。内通の罪で拘束されている事は知っていたが、同じ地下牢に入っているとは思っていなかった。

 「デニス先生!?」

 私は明らかに動揺していた。

 「サラ出してくれ!」

 「サラ様出して下さい!」

 2人の男に牢から出す様に懇願され、

 「2人とも後ろ手に括られるのを、了承するならば、牢からお出し致します。決して暴れない事を約束出来ますか?」

 「「もちろん!」」

 2人は同時に返答した。

 警備の者に2人を縛らせ、地下牢から出て行く。近くの建物で2人を座らせた。

 「実はお知らせしなくてはいけない事があります……先ほどフェリカ王国にて、民衆一揆が起こりました。アルフォンス公爵は馬に引き摺られ、さらに身体に多数の打撲痕があり、亡くなっていたと聞いています。」

 「なっ!」

 ボクリアは声にならない声をあげた。

 「さらに亡骸を吊るされ、横には[売国奴]と立て札が建てられていたそうです。」

 ボクリアは声が出ない。デニスはまるで知っていた様な表情をしている。

 「さらに王城は、火をつけられ全焼したとの事。国王陛下の安否は未だ分かっていないとか……フェリカ王国の崩壊です。」

 
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