11 / 62
11
しおりを挟む
騒ぎを見ていた観衆に気付いたのか、ひとまず落ち着きを取り戻したようで、促されるまま館に入って行く。
私も無言のまま館に入っていく。
応接室に案内されたアルフォンス公爵と国務大臣はソファーにどっかと腰掛けてた。
「公爵様、聖女との間に何があったのです?」
「うむ、取り乱してすまんな。大臣も我が一人息子のボクリアを知っておるだろう?あの女は、一時とは言え、我が一人息子ボクリアの婚約者となっていたのだ。我が公爵家に対して、彼奴の父親は騎士の身分だ。貴族最高位のアルフォンス家と最低の騎士の家柄では、釣り合う訳がなかろう。彼奴の家族にとっては、喉から手が出るほど公爵位との縁組が欲しかったであろうが、 私は易々と騙されたりはせぬ。あの女の不都合な事実を見抜き、婚約破棄に至ったという訳じゃ。」
「さすが公爵様ですな。となるとようやく我が国に産まれた聖女は性悪女という事ですか?」
「そうならぬ様に、よーく教育せねばならんな。よし!ではこの私が一肌脱ぐか!多忙な身であるが、聖女の教育係をかって出よう。国務大臣の権限ならば問題ないな?」
「しかし聖女は国家の宝であります。いくらアルフォンス公爵様といえど、聖女の力を独り占めする事は憚られるかと……」
アルフォンス公爵の氷の様な視線に、国務大臣はだんだんと言葉の勢いがなくなり最期の方は何を言っているか聞き取れないほど小声になっていた。
「なんと?この私の提案を断ると?大恩ある私が、引き受けてあげようと言ってるのだぞ?そもそも御主が国務大臣の地位に居られるのは、誰のおかげじゃ?もう一度尋ねるぞ?国務大臣の権限で私が聖女の教育係となるが、問題はないな?」
国務大臣はすっかり蛇に睨まれたカエルの様に大人しくなってしまっていた。
「良かろう。おい、サラと言ったな?今後は多忙な私がお前の教育係を務めてしんぜよう。よくよく感謝するように。今日のところは顔見せまでじゃ。次回私が館に来た時までに、聖女の能力をしかと磨いておけよ。良いか!」
なんと傲慢で横柄な男であろう。そもそもこんな男から聖女として学ぶべき事があるのか?しかし困った事になった。聖スベリア会に権限を持つ国務大臣は、アルフォンス公爵に何か弱味でも握られているのだろう。完全にアルフォンス公爵の言いなりとなっていた。
公爵の考えそうな事は分かっている。私の聖女としての能力を利用しようとするつもりなのだろう。
私も無言のまま館に入っていく。
応接室に案内されたアルフォンス公爵と国務大臣はソファーにどっかと腰掛けてた。
「公爵様、聖女との間に何があったのです?」
「うむ、取り乱してすまんな。大臣も我が一人息子のボクリアを知っておるだろう?あの女は、一時とは言え、我が一人息子ボクリアの婚約者となっていたのだ。我が公爵家に対して、彼奴の父親は騎士の身分だ。貴族最高位のアルフォンス家と最低の騎士の家柄では、釣り合う訳がなかろう。彼奴の家族にとっては、喉から手が出るほど公爵位との縁組が欲しかったであろうが、 私は易々と騙されたりはせぬ。あの女の不都合な事実を見抜き、婚約破棄に至ったという訳じゃ。」
「さすが公爵様ですな。となるとようやく我が国に産まれた聖女は性悪女という事ですか?」
「そうならぬ様に、よーく教育せねばならんな。よし!ではこの私が一肌脱ぐか!多忙な身であるが、聖女の教育係をかって出よう。国務大臣の権限ならば問題ないな?」
「しかし聖女は国家の宝であります。いくらアルフォンス公爵様といえど、聖女の力を独り占めする事は憚られるかと……」
アルフォンス公爵の氷の様な視線に、国務大臣はだんだんと言葉の勢いがなくなり最期の方は何を言っているか聞き取れないほど小声になっていた。
「なんと?この私の提案を断ると?大恩ある私が、引き受けてあげようと言ってるのだぞ?そもそも御主が国務大臣の地位に居られるのは、誰のおかげじゃ?もう一度尋ねるぞ?国務大臣の権限で私が聖女の教育係となるが、問題はないな?」
国務大臣はすっかり蛇に睨まれたカエルの様に大人しくなってしまっていた。
「良かろう。おい、サラと言ったな?今後は多忙な私がお前の教育係を務めてしんぜよう。よくよく感謝するように。今日のところは顔見せまでじゃ。次回私が館に来た時までに、聖女の能力をしかと磨いておけよ。良いか!」
なんと傲慢で横柄な男であろう。そもそもこんな男から聖女として学ぶべき事があるのか?しかし困った事になった。聖スベリア会に権限を持つ国務大臣は、アルフォンス公爵に何か弱味でも握られているのだろう。完全にアルフォンス公爵の言いなりとなっていた。
公爵の考えそうな事は分かっている。私の聖女としての能力を利用しようとするつもりなのだろう。
1
お気に入りに追加
2,065
あなたにおすすめの小説
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね
ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。
失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
前世の記憶を取り戻したら貴男が好きじゃなくなりました
砂礫レキ
恋愛
公爵令嬢エミア・シュタイトは婚約者である第二王子アリオス・ルーンファクトを心から愛していた。
けれど幼い頃からの恋心をアリオスは手酷く否定し続ける。その度にエミアの心は傷つき自己嫌悪が深くなっていった。
そして婚約から十年経った時「お前は俺の子を産むだけの存在にしか過ぎない」とアリオスに言われエミアの自尊心は限界を迎える。
消えてしまいたいと強く願った彼女は己の人格と引き換えに前世の記憶を取り戻した。
救国の聖女「エミヤ」の記憶を。
表紙は三日月アルペジオ様からお借りしています。
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
【完結】次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!
林 真帆
恋愛
マリアは聖女の血を受け継ぐ家系に生まれ、次期聖女として大切に育てられてきた。
マリア自身も、自分が聖女になり、全てを国と民に捧げるものと信じて疑わなかった。
そんなマリアの前に、異父妹のカタリナが突然現れる。
そして、カタリナが現れたことで、マリアの生活は一変する。
どうやら現聖女である母親のエリザベートが、マリアを追い出し、カタリナを次期聖女にしようと企んでいるようで……。
2022.6.22 第一章完結しました。
2022.7.5 第二章完結しました。
第一章は、主人公が理不尽な目に遭い、追放されるまでのお話です。
第二章は、主人公が国を追放された後の生活。まだまだ不幸は続きます。
第三章から徐々に主人公が報われる展開となる予定です。
【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
ミレニア王国にある名もなき村の貧しい少女のミリアは酒浸りの両親の代わりに家族や妹の世話を懸命にしていたが、その妹や周囲の子ども達からは蔑まれていた。
ミリアが八歳になり聖女の素質があるかどうかの儀式を受けると聖女見習いに選ばれた。娼館へ売り払おうとする母親から逃れマルクト神殿で聖女見習いとして修業することになり、更に聖女見習いから聖女候補者として王都の大神殿へと推薦された。しかし、王都の大神殿の聖女候補者は貴族令嬢ばかりで、平民のミリアは虐げられることに。
その頃、大神殿へ行商人見習いとしてやってきたテオと知り合い、見習いの新人同士励まし合い仲良くなっていく。
十五歳になるとミリアは次期聖女に選ばれヘンリー王太子と婚約することになった。しかし、ヘンリー王太子は平民のミリアを気に入らず婚約破棄をする機会を伺っていた。
そして、十八歳を迎えたミリアは王太子に婚約破棄と国外追放の命を受けて、全ての柵から解放される。
「これで私は自由だ。今度こそゆっくり眠って美味しいもの食べよう」
テオとずっと一緒にいろんな国に行ってみたいね。
21.11.7~8、ホットランキング・小説・恋愛部門で一位となりました! 皆様のおかげです。ありがとうございました。
※「小説家になろう」さまにも掲載しております。
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる