上 下
2 / 62

しおりを挟む
 「私は誰かれ見境もなく色目を使ってなんていません!」

 「ほれ見ろ!父親同士が話しているのに、女がてらに出しゃばって来おって。そなたの家では礼儀作法も教えていないのか?少し一緒に居るだけで簡単に馬脚を現しおって!本性が見えたわ!」

 全くの言い掛かりに反論しただけで、こんなに罵倒するなんて、この人はなんなんだ?

 父親が、目で私に「黙っていろ」と言っているようだ。

 「アルフォンス公爵様の言い分は分かりました。つまり婚約を撤回したいと仰られているのですね?」

 「ようやく理解したか?そういう事だ。」

 「アルフォンス公爵様からの一方的な婚約解消だと致しますと、私どもは法にのっとり慰謝料を請求させて頂きますよ。よろしいでしょうか?」

 その言葉が不味かった……傲慢なアルフォンス公爵の導火線に火を付けてしまったようだ。

 「ほう……この私から慰謝料を取ると?大きく出たもんだな。皇帝陛下の親族であり、貴族階級の頂点たる公爵である私に?貴族階級最下層の騎士のそなたが?よろしい。それならば、我がアルフォンス家は、そなたの娘サラの不躾ぶしつけな作法、本性のみにくさ、アバズレの様な下品さを指摘させて頂こう!」

 なに?私が何か悪い事をしたの?

 アルフォンス公爵は私を指差して

 「サラよ!そなたの失態の数々をかんがみ、そなたとの婚約破棄をする!良いか?ボクリアとサラの婚約は破棄だ。原因は全てこの女にある。公爵アルフォンスの名において、この女を断固糾弾する。もし反論しようものなら、私の権力でこの家を取り潰すぞ!」

 タイミング悪く、我が家のメイドが料理と酒を運んで来た。

 アルフォンス公爵は、ワイン瓶をむんずと握ると、私にワイン瓶を投げつけて来た。

 私はサッと避けたため、直撃を避けたが、壁に当たり瓶の破片が私の頰を切った。

 「ああ……サラ……大丈夫か……」

 父親は完全に毒気に当てられている。

 「なんだその目は!忌々しい女め!お前みたいな女が、我がアルフォンス家の嫁に入らずひと安心じゃ!ボクリア用は済んだ!こんな臭い豚小屋から帰るぞ!」

 なんなんだこの男は?こんな品性の欠片もない男が公爵なのか?気が狂ってる……

 ドアを荒々しくバタンと閉め、アルフォンス親子は、部屋を後にした。

 あまりの出来事に私も父親もしばらくその場から動けなかった……

 私は婚約破棄された、不躾なアバズレ女として街中で知られる様になってしまった……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者が、他の女性と内緒で出掛けているのを見つけました。でも、それには理由があったようです

柚木ゆず
恋愛
 侍女兼護衛のジュリアと共に隣街を歩いていた私は、他の令嬢と一緒に歩いている婚約者のユリウスを見かけた。  ジュリアは、内緒でデートをしている、浮気だ、と言うけれど――。私は、そうは思わないのよね。  この予感が当たっているのか間違っているのか、2人のあとをつけて確認してみましょう。

義妹に婚約者を奪われて国外追放された聖女は、国を守護する神獣様に溺愛されて幸せになる

アトハ
恋愛
◆ 国外追放された聖女が、国を守護する神獣に溺愛されて幸せになるお話 ※ 他の小説投稿サイトにも投稿しています

聖女の能力で見た予知夢を盗まれましたが、それには大事な続きがあります~幽閉聖女と黒猫~

猫子
恋愛
「王家を欺き、聖女を騙る不届き者め! 貴様との婚約を破棄する!」  聖女リアはアズル王子より、偽者の聖女として婚約破棄を言い渡され、監獄塔へと幽閉されることになってしまう。リアは国難を退けるための予言を出していたのだが、その内容は王子に盗まれ、彼の新しい婚約者である偽聖女が出したものであるとされてしまったのだ。だが、その予言には続きがあり、まだ未完成の状態であった。梯子を外されて大慌てする王子一派を他所に、リアは王国を救うためにできることはないかと監獄塔の中で思案する。 ※本作は他サイト様でも掲載しております。

聖女ですが、大地の力を授かったので、先手を打って王族たちを国外追放したら、国がとってもスッキリしました。

冬吹せいら
恋愛
聖女のローナは、大地の怒りを鎮めるための祈りに、毎回大金がかかることについて、王族や兵士たちから、文句ばかり言われてきた。 ある日、いつものように祈りを捧げたところ、ローナの丁寧な祈りの成果により、大地の怒りが完全に静まった。そのお礼として、大地を司る者から、力を授かる。 その力を使って、ローナは、王族や兵士などのムカつく連中を国から追い出し……。スッキリ綺麗にすることを誓った。

聖女に巻き込まれた、愛されなかった彼女の話

下菊みこと
恋愛
転生聖女に嵌められた現地主人公が幸せになるだけ。 主人公は誰にも愛されなかった。そんな彼女が幸せになるためには過去彼女を愛さなかった人々への制裁が必要なのである。 小説家になろう様でも投稿しています。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

聖女と言われた姉が堕ちていくまで

あんころもちです
恋愛
ダリア聖教王国の公爵長女のエリーは人々から聖女として慕われていた。 でも妹の私はローズはエリーはとんでもない悪女だと知っていた。

【完結】次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!

林 真帆
恋愛
マリアは聖女の血を受け継ぐ家系に生まれ、次期聖女として大切に育てられてきた。  マリア自身も、自分が聖女になり、全てを国と民に捧げるものと信じて疑わなかった。  そんなマリアの前に、異父妹のカタリナが突然現れる。  そして、カタリナが現れたことで、マリアの生活は一変する。  どうやら現聖女である母親のエリザベートが、マリアを追い出し、カタリナを次期聖女にしようと企んでいるようで……。 2022.6.22 第一章完結しました。 2022.7.5 第二章完結しました。 第一章は、主人公が理不尽な目に遭い、追放されるまでのお話です。 第二章は、主人公が国を追放された後の生活。まだまだ不幸は続きます。 第三章から徐々に主人公が報われる展開となる予定です。

処理中です...