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新天地

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一番先に弟が泣き言を言うかなと思っていたが、一言も言わない。1年近く会わない間に逞しくなったなと感慨深く思っていた。

日が高くなってくると、私達を、喉の渇きと空腹が襲ってきた。

何か飲むものが欲しい!と思っていると手の中に瓶が現れた。

瓶の中身を確認してみると、水であった。

少し飲んで渇きを潤すと、弟に渡し、母親、父親と順番に水分補給を行った。

欲しい物を念じると、現れる!?私は授かったスキルの法則に気付き始めていた。

「水よ出ろ!」

空になっていたはずの瓶が、溢れるほどの水で満たされている。

再びみんなで回し飲みながら、今更スキルに気付くなんて……皮肉なもんだと感じていた。

「パンよ出ろ!」

フカフカのパンが現れ、私達は空腹を満たすことが出来た。食べながらも私達は街道沿いを歩いている。私はピンと閃き、

「馬よ出ろ!」

………出ない………

生物は出ないのか?

「牛よ出ろ!」

………やはり何も起こらなかった………

欲しい物を念じると品物が現れる。生きている物はダメなようだ。

「金貨よ出ろ!」

………ダメか………

「剣よ出ろ!」

鉄製のズシリとした剣が現れた。護身用に父親に持ってもらう事にした。

金貨はダメだったが、鉄製の剣は出現した。試す事で法則が分かってくる。

『ユリナお前すごいな!そんなに凄い力があっても、聖女としてはダメだったのか?』

「聖女の時には、この力は出現しなかったのよ……この力が出現していたら、こんな目にあってなかったと思うわ。」

『どうだかな?こんな酷い目に合わせる奴等だ。いずれ何か起こっていたよ。ユリナお前が悪いんじゃないんだ。気にするなよ。』

 父親はいつも優しかったことを改めて思い出した。

 隣国に辿り着いたら、この力で両親と弟に楽をさせてあげたい。

 日が暮れそうな頃、街の灯りが見えてきた。

 今日は野宿しなくても良さそうだ。

 持っていた路銀で、なんとか宿代を払う事ができ、ぐっすりと眠りについた。

 翌朝、宿屋で朝食を用意してもらい、私達は久し振りに食事らしい食事をとる事が出来た。

 夜眠りにつく前に、思い付いていた事があり、私はそれを試しに道具屋に向かった。

 早朝であったが、ちょうど店の前を店主が掃き掃除をしているところであった。

 「おはようございます。買い取って貰いたい品物があるのですが、見て頂けませんか?」

 『おはようございます。よろしいですよ。では店内にどうぞ。』店主は掃き掃除の手を止めて、店内に招いてくれた。

 「これなんですが……飲むと怪我が治り、体力も回復する水薬です。」

 私と家族が怪我を癒した瓶入りの水薬を店主に手渡した。

 
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