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 「いよいよ辿り着いたぞ……いいか!この階層ボスを倒せば転移石で帰る事が出来る。あと一戦だ。死力を尽くして帰還するぞ!絶対誰も死ぬなよ!大石動けるか?」

 顔を下げて肩で息をしている男が声を振り絞って答える。
 「ああ……あと一戦だろ?頼むぜみんな……」

 残り体力も少ないのか大石と呼ばれた男はヘロヘロだ。対して笹川は、汚れているが元気そうだ。

 重い身体を引き摺りながら、岸本グループは重そうな扉を開けた。

 ギッギッギィィィーーー

 甲高い金属音が、静寂のダンジョン内に響き渡る。

 岸本グループが扉を潜り、ボス部屋に侵入した。頑張れよ!他人事ながら、僕は声に出さず応援した。


 アレ??扉が締まらない??


 通常ボス部屋に挑めるのは、一度にひとグループのはずだ。グループがボス部屋に入ると自動的に扉が締まり、他の人が入れなくなるはずだ……

 扉が再び開くのは、ボスが退治され、新たに産まれた時。またはボス部屋に挑んだ者達が全滅した時。と攻略サイトダンジョンMAPには記載してあったと思うが……

 扉の空いた隙間から中を覗く。

 …………ちょっと……待ってくれ……今までの素人でも、どうにかなる魔物ではない……

 入った岸本グループの数人が地面に転がっている。

 「た……助けてくれーーー!!!」

 笹川は他の人を置いてきぼりにして、扉の方に駆けてくる。扉が空いているのに気付いたようだ。

 笹川は隙間から覗いている僕に気付いた!

 「何してる!退いてくれ!」

 笹川は僕を掴むと引っ張り僕を倒した。引っ張られた勢いで、僕はボス部屋に入って転んでしまった。

 ギッギッギィィィーーー!バタン!!

 僕がボス部屋に入った瞬間、重い扉が閉じてしまった……ボス部屋が覗いていた僕をグループの一員と認定していた?僕がボス部屋に入ったために、扉が閉じてしまったのか?

 「くそ!開かない!!どうなってんだ!?おい!本田さん!何やってんだよ!扉を開けれよ!」

 笹川は扉を押したり引いたり、蹴ったり叩いたりして、どうにか扉を開けようとしている。しかし扉は開かない……当然だ。ボス部屋から出るには、ボスを倒すか、侵入者が全滅するかの二択なのだから……

 僕は錯乱している笹川を無視して、ボスに対峙する。

 黒い大きな犬?にまたがった弓矢を構えたスケルトンだ。

 犬は狂犬病の様に涎を垂れ流している。ハァハァと息をしながら、黒い弾を吐き出している。黒い弾が壁に当たる度に、黙々と煙が立ち上がり視界が遮られる。
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